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2008年6月の記事

2008年6月30日 (月)

神戸大学・カルタヘナ法違反は厳重注意

この記事は2008年のカルタヘナ法違反に関するエントリーです。2012年の事案についてはこちらから

神戸大学のカルタヘナ法違反の厳重注意については、6/20 に文科省からプレスリリースがありました。

経緯と再発防止策はこちら。 3/17の通報以来、これで、この件についての一連の対応は行政的には一応の区切りが付いたことになります。(生命倫理・ 安全対策室の皆様、おつかれ様でした。)

一方、大学の信頼回復はこれからの取組にかかっています。神戸大学のスタッフの皆様におかれては、道程は長いですが、 今後ともたゆまぬ努力が求められます。文科省から拡散防止措置についての定期報告が求められている様ですので、 今後も定期的な点検は欠かせないでしょう(報告義務が無くても普通はやっているはずですが)。

同じプレスリリースに、東北大学の件も出ていますが、こちらは報道されたのかどうか?記憶にありません。 相当前の事例を含めてまとめて申告している様な感じですので、神戸大の一件の後で内部調査をおこなったのかも知れません。なお、 東北大学からのプレスリリースは無い模様。ウイルスの種類を見ると、こちらも医学部関連のようです。

 

 

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2008年6月27日 (金)

[業務用覚書] 大腸菌 Invitrogen DB3.1株に関するEUの規制

以下の情報は日本の人口の99.99%の方には、まず役立ちません。

大腸菌 Invitrogen DB3.1株はGateway systemで利用されている致死遺伝子、 ccdBに耐性になるgyrA462遺伝子を持っていて、ccdB遺伝子を保有するプラスミドの増幅に使用される。 このgyrA462はもともと大腸菌のプラスミド由来であるが、 Invitrogenではプロモーターと構造遺伝子を繋いだ発現カセットを作製していて、DB3.1株では、 それを遺伝子工学的に大腸菌ゲノムに導入しているらしい。

作成過程は公開されていないので供与核酸が大腸菌のみなのかどうか確認のしようがない。

※ ccdBを誘導型プロモーターの下流に繋いでおけば、 gyrA462でないホストでも問題ないように思うのですが。ccdBはリーキーな発現でも致死的なんでしょうかね。

Invitrogen DB3.1株の製品添付文書には次のようにある。

Information for European Customers:
These cells are genetically modified and contain plasmid-derived DNA
sequences. As a condition of sale, this product must only be used in
accordance with all applicable local legislation and guidelines including EC
Directive 90/219/EEC on the contained use of genetically modified
organisms.

「DB3.1株の作成過程では遺伝子工学を用いており、プラスミド由来のDNAを保有する。販売の条件として、 この製品は遺伝子組換え生物の封じ込め使用に関するEC指令 90/219/EECを含む法令とガイドラインの下においてのみ使用されなければならない。」とのこと。

そこで、この"EC Directive 90/219/EEC(summary)"について調べてみた(本文はこちら)。

要は、EUではDB3.1株は原則としてLMOとして扱いなさいということ。EC指令 90/219/EECにSelf cloningの除外規定がなければ、そういうことになる(*)。調べてみた結論から言えば、 EUではLMOになっている可能性が高い。

なお、日本の国内法(カルタヘナ法)では、セルフクローニングの判断は、作成過程は関係なくて、 作製された生物の特性のみで考える。この場合、大腸菌の核酸(プラスミドを含む)のみを大腸菌に入れる操作で作られた組換え大腸菌は、 カルタヘナ法上はLMO扱いする必要はない。

Invitrogen社日本法人の判断もそうなのだろうが、「本当に大腸菌の核酸のみ」なのかどうか、 顧客の側で確認する方法がないのは著しく気持ちが悪い。さてどうしたものか。

 


 

表題は”Council Directive 90/219/EEC of 23 April 1990 on the contained use of genetically modified micro-organisms”とあり 「遺伝子組換え微生物の封じ込め利用」に関する指令。目的は、人の健康と環境に対するリスクの最小化。

Article (条文)本体は23条、このほかAnnexがI. -V.まである。Article 1に目的、 Article 2に用語の定義、となっており日本の法律と似た構成。

組換え生物の利用形態と組換え生物の種類によるカテゴリー分けがある。教育・研究関連については、Type A (Type B は産業利用)、ホスト・組換え生物の病原性等リスク分類についてはAnnex II でGroup I, II (I は日本で言う認定宿主ベクター系+病原性がないもの)というカテゴリーに分けられている。

上記の除外規定について調べてみると、Annex Iに次のようにあった。

B Techniques of genetic modification to be excluded from the Directive, on condition that they do not involve the use of genetically modified micro-organisms as recipient or parental organisms:

(1) mutagenesis;

(2) the construction and use of somatic animal hybridoma cells (e.g. for the production of monoclonal antibodies);

(3) cell fusion (including protoplast fusion) of cells from plants which can be produced by traditional breeding methods;

(4) self-cloning of non-pathogenic naturally occurring micro-organisms which fulfil the criteria of Group I for recipient micro-organisms.

(1) OJ No 213, 21. 7. 1982, p. 15.

例外規則の適用範囲をa. ”宿主として利用される生物”に限定、b. 非病原性(Groupe I) に限定して、”self-cloning of non-pathogenic naturally occurring micro-organisms ”は除外するとある。 セルフクローニングの除外についても人の健康へのリスクベースの判断が入っている所はEU流。 科学的にセルフクローニングといえるならば何でも除外、という日本のスタンスとは明らかに違うので、 日本ではセルフクローニングと判断された生物でもEUでは組換え生物と扱う可能性が大 (WHOの新型インフルエンザウイルスのモックアップについては、日本ではセルフクローニングと判断されたのですが、 EU各国の規制当局では別の解決をしている可能性が高いことにります)。

よく見ると、”naturally occurring” という条件が満たせなければ、除外できないと言うことになるので、 人為的に遺伝子を組換えたことが明らかなDB3.1株についてはEUでは遺伝子組換え生物扱いになっている可能性があります。 除外規定で情報提供が免責されるかどうかは微妙です。・・・というか多分無理。

そうなると、EU加盟国内のLMOの流通の際に必要とされるであろう情報提供については、 EU加盟国の国内法で判断する必要があります。

ちょっと横道ですが、EUは隣国と地続きなので以下のような配慮が前提となっている。

”Whereas micro-organisms, if released in the environment in one Member State in the course of their contained use, may reproduce and spread, crossing national frontiers and thereby affecting other Member States;”

ヨーロッパは一蓮托生という感じがします。

 


 

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2008年6月26日 (木)

β-メルカプトエタノールが毒物になります。

表題の通り。7月1日から、β-メルカプトエタノールが法律上の毒物になります。

平成20年6月20日 政令第199号 毒物及び劇物指定令の一部を改正する政令

第一条第二十六号の九の次に次の一号を加える。
二十六の十 二― メルカプトエタノール及びこれを含有する製剤

http://www.kantei.go.jp/jp/kanpo/jun.3/ee0620t0003.html

β-メルカプトエタノールは粗タンパクの抽出や、タンパク質の電気泳動(SDS-PAGE) には欠かせない試薬なのですが、管理が厳しくなります(私の居る研究所では、施錠できる保管庫に置くことになる)。

毒物及び劇物指定令 ( 昭和四十年政令第二号)、第一条では、「毒物及び劇物取締法別表第一第二十八号の規定に基づき、次に掲げる物を毒物に指定する。 」 とあります。ここにリストアップされると毒劇法で言う「毒物」(特定毒物ではないただの毒物) にあたります。

毒物は「毒物及び劇物取締法」 (通称、毒劇法)に準拠した管理が求められますので、管理・使用にあたっては事業所の定める毒劇物危害防止規定に従う必要があります。

近頃、あらたに毒物に追加されたということは、判定基準の基準値以上の毒性があることが確認されたということでしょう。 厚労省の審議会情報などで経緯を確認してみましょう。

・・・ありました。平成20年2月29日、 薬事・食品衛生審議会 毒物劇物部会。議事録はこちら。 これによると、毒物劇物調査会の報告では「経口については劇物相当、経皮についてはウサギで毒物、モルモットで劇物、 吸入についてはラットにおいて毒物の下限、皮膚と眼の刺激性は共に刺激性ありとなっています。」とのこと。

議論の経緯は以下の通り。

○大野部会長 いかがでしょうか、ウサギの経皮毒性から毒物に相当するということです。 今の御説明にありましたように、生化学実験によく使っているものですが、特にございませんか。 では案のとおり毒物に指定するということでよろしいでしょうか。特によろしければ承認可、として報告とさせていただきます。

○大野部会長 次の「亜硝酸イソブチル」についてお願いします。

おいおい・・・(議論はなかったの?)。

物足りないので、パブコメについての情報をあたってみた。この手の規制の改定にはパブコメがつきものなので。

該当するパブコメはこちら (2008年5月23日募集開始、2008年6月13日終了、案件番号

)。規制影響分析書にはアバウトな経緯が書かれているが、 毒性の具体はちっとも分からない。β-メルカプトエタノールを使う身としては、どんな新しい事実があったのか知りたいところだが。ちなみに、 パブコメの結果のとりまとめは、まだ公表されていない(6/26現在)。

意見募集の際に規制ルール変更の根拠となった科学的な事実をはっきり示していないし、会議の資料も出てこない。 「ウサギの経皮毒性から毒物に相当するということ」だけではよく分からない。PubMedでもあたらないとだめか(とりあえず、 rabbit 2-mercaptoethanol toxicityでは27報あるが、それらしい最近の論文はない)。 情報源が科学論文かどうかも分からないと、これ以上さがす気にはなれない。

β-メルカプトエタノールにかわる還元剤で、毒性が低くて使い勝手が良く、 しかも安く入手できるものがあれば問題ないのだが、DTTは高いし、TBPは分極しないけど溶解度が低いし、どちらも普通、 SDS-PAGEには使わない。試薬を変えて実験の再現性が無くなると困るので、今後もβ-メルカプトエタノールを使うことになるのだろう。 経皮毒性ならこれまで通り手袋をしておけば十分だろうし。

(原液のボトルを開けるときは、横着しないで、できるだけドラフトを使ってね。臭いから。)

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2008年6月25日 (水)

ウイロイドはカルタヘナ法では生物です。

本日頂いたご相談関連。情報共有のために公開いたします(守秘義務違反にならない範囲で)。

Q1. プラスミドに逆転写した植物ウイロイドをクローニング、点突然変異を入れてin vitroで転写させる。 これを植物に接種して機能解析をしたいが、カルタヘナ法上の扱いはどうなる?

A1. カルタヘナ法第2条の定義で、ウイロイドは生物にあたります。しかも、”ウイルス及びウイロイドをいう”として、 ウイルスとウイロイドを区別しています。研究二種省令では、 別表第1第一号へで自立増殖性のウイルス又はウイロイドの使用を原則として大臣確認に指定しています。ただし、除外規定があって、 二種告示別表第3では”4 Plant viruses”と組換え植物ウイルスについては大臣確認は不要としています。

カルタヘナ法第二条でも二種省令別表第1第一号へでもウイルスとウイロイドを区別していますので、二種告示の除外リスト、別表第3の” Plant viruses”にウイロイドが含まれると言う解釈は、常識的にはできません。従って、 自立増殖性の見込まれる組換え植物ウイロイドを使用する実験はあらかじめ大臣確認が必要だと考えられます。

なお、単一の点変異はナチュラルオカレンスなので遺伝子組換え生物ではないと言う解釈もあり得ますが、解釈権は文科省にありますので、 文書で照会するか大臣確認申請をして確認不要の回答をとるか、をしてから実験をすることになるでしょう。 いずれにしても機関の判断ですぐに実験するのは危険です。

Q2. pVS1系のバイナリーベクターはプラスミドの伝達性が高いので、「哺乳動物等に対する病原性及び伝達性に関係しない」 という二種省令第5条第1号ハの適用はできないのではありませんか?その場合、 pVS1プラスミドは実験分類クラス2の緑膿菌由来なので拡散防止措置は二種省令第5条第1号イの適用でP2レベルになるのでは?

A2. 二種省令第5条第1号ハの「伝達性」の解釈については文部科学省からポジションペーパーが示されております。 それによりますと、二種省令第5条第1号ハの「伝達性」とは、”微生物から動植物等への感染により、微生物ごと伝達する性質又はその程度” であって、”微生物から微生物への接合や遺伝子の水平伝達等により、核酸の状態で(染色体若しくはプラスミドとして) 伝達する性質又はその程度”ではないとのことですので、プラスミドとしての伝達性があっても、 二種省令第5条第1号ハにより宿主の実験分類に従った拡散防止措置で実験できます。

ただし、これは供与核酸が全て同定済み核酸の場合に限ります。

毎日こんな案配と言うわけではありませんが、今日は特にカルタヘナ日和でした。

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2008年6月24日 (火)

ブログは木のうろではない

「王様の耳はロバの耳」という床屋の叫びを彷彿させます。朝日新聞より。

司法修習生、取り調べや刑務所の様子ブログに 長崎

2008年6月19日11時40分

 長崎市で実務修習をしている20代男性の司法修習生が、自身の日記をつづったブログに取り調べや刑務所見学、 司法解剖の立ち会いの様子や感想など、修習の内容を書き込んでいたことがわかった。修習生を受け入れている長崎地裁は「書き込みが、 司法修習生に関する規則が定める守秘義務違反にあたる可能性があり、調査したい」としている。

 地裁などによると、この修習生は07年から長崎市の裁判所や法律事務所、検察庁で実務修習を受けている。 実習の感想や出会った法律家の人柄、周辺雑記などをブログに書き込んでいた。

 書き込みの中には、取り調べの実習の様子を記したものがあった。「はじめて取調べやりました。相手はばあちゃん。 途中から説教しまくり。おばあちゃん泣きまくり」「なんで若造がばあちゃんを説教してるのか。なんとなく、権力というか、 自分の力じゃない力を背後に感じた」などと被疑者の性別や年齢が明かされていた。

 また、刑務所を見学した際には「工場で作業をしている受刑者たちは、なんだかロボットのよう。何を考え生きているんだろうか」 「いま自分が取り調べ中の被疑者は、刑務所出所後5日目に、また犯罪行為に出た人で、 この人は刑務所でしかうまく生きていけないんじゃないかと感じた」などと、受刑者や被疑者について触れている。

 裁判所法に基づく司法修習生に関する規則は「修習にあたって知った秘密を漏らしてはならない」と定めており、 地裁では修習生の行為が規則に抵触している可能性があるとして調べる。

ブログは木のうろではありません。多くの人が目にする機会もあります。 ブログに書いた内容がフィクションなら守秘義務違反にはならないんですが、 被疑者個人や容疑を特定できる書きぶりであれば守秘義務違反に問われるおそれれはあります。メーリングリストも然り。

「なんで若造がばあちゃんを説教してるのか。なんとなく、権力というか、 自分の力じゃない力を背後に感じた」

というのは、微妙な線。老女の調書をとった、と言うだけのとのことであれば容疑者には当然、 老若男女が居るわけで守秘義務違反とまでは言えないはずです。むしろ、上記のような感想をもらすことが、 法曹の信頼を損ねるような書きぶりであれば信用失墜行為にあたる可能性がありますが、筆者個人の身分を特定できないブログ (たとえばペンネームで書いていて、筆者を特定できない)であればそれも難しいでしょう。文書で注意くらいで済ますほかないのでは?

私のブログは実名で書いていますので、 喩えフィクションでも内容によっては信用失墜行為に当たる可能性は常にあります。あまり馬鹿なことを書くと、「ふーん、 某独法の主任研究員は、あんな阿呆でも務まるのだ」と組織の信用を穢した信用失墜行為および守秘義務違反に問われる恐れがあるので、 このへんでよしておきましょう。

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2008年6月23日 (月)

アジサイには毒があります

2010/6/16 情報が古くなってきたので、こちらで更新しました。

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つくば発、天然毒による集団食中毒。朝日新聞より。

アジサイの葉を食べ食中毒

2008年06月23日

 県保健福祉部は22日、つくば市の男性1人、女性7人が、同市の飲食店でアジサイの葉を食べ、食中毒になったと発表した。 県は料理を出した「遊食伊太利庵藤右エ門栄(ゆうしょくいたりあんとうえもんさかえ)」を同日、営業禁止処分にした。
     同部によると、アジサイの葉やつぼみ、根には青酸配糖体と呼ばれる有毒成分が含まれる。かんだり胃の消化酵素と反応すると、吐き気やめまい、けいれんなどを起こし、死に至ることもあるという。
     13日夜、客の1グループ19人の料理の添え物にアジサイの葉を出したところ、10人が食べ8人が吐き気やめまいなどを訴えた。2人が医療機関を受診したが、いずれも軽症という。
     同部は「季節料理の彩りのために出したようだが、決して出さないでほしいし、客も食べないでほしい」と呼びかけている。

 梅雨時らしい季節の話題ですね。季語のアジサイと食中毒。すばらし・・・くもないか。保健福祉部の 「客も食べないでほしい」という呼びかけも何だか笑えます。 アジサイの葉の形はエゴマにちょっと似ているので、黙って出されたら私でも食べてしまうかも知れません。

 アジサイに毒性があるとは知りませんでした。調べてみると種としては同一のHydrangea macrophylla var. thunbergii の方は、甘茶の原料で、甘味物質を生成するらしい。ただし、 若い葉青酸配糖体が含まれており、葉の成長とともに減少し痕跡程度になるするとある。 レストランでは、様子の良い若い葉を出したのでしょう。親切のつもりが仇になった模様。

 青酸配当体は胃酸と反応するのかと思ったら、 Wikipediaによると腸内細菌のβ-グルコシダーゼで糖鎖が分解されてシアン化水素が生成するとある。・・・だとすると、 上の記事とは作用機序が違います。また食後30分くらいは無症状ですね。

 使いようでは口に甘い甘味料ですが、そのまま食べると有毒植物。ですが、 青酸配糖体はウメやジャガイモの芽など植物毒素としてはポピュラーですのでアジサイが特に危険というわけではありません。 眺めるだけにしておけばいいんですから。

 それはさておき、アジサイの学名はHydrangea macrophyllaです。 Hydrangea otakusa Siebold et Zuccariniというシーボルトの命名は二番目だったため無効らしいとのこと。

 ついでに、関連する面白いお話。伊豆半島、 天城の地名の由来は甘茶にあるとか

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2008年6月21日 (土)

GP幹部、鯨肉窃盗への組織的関与を否定

毎日新聞より。

グリーンピース:鯨肉持ち去りは現場判断、逮捕不当…会見

 国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(GP)のメンバー2人が調査捕鯨船「日新丸」 の鯨肉を持ち去ったとして窃盗容疑で逮捕された事件で、GPの星川淳事務局長らは21日、東京都新宿区のGP本部事務所で会見し、 「現場の判断だった。事後承諾はした」と説明した。

 星川事務局長は「(持ち去りが)正しい唯一の方法とは思わないが、組織的な闇を際だたせるにはこの方法がよかった」と主張。 そのうえで「逃亡や証拠隠滅の恐れはなく、逮捕は不当。強く抗議し釈放を求める」と改めて訴えた。

 鯨肉を私物化したとしてGPが東京地検に業務上横領容疑で告発した「日進丸」の乗組員12人は、 全員が不起訴処分になっている。【酒井祥宏】

組織的犯行に対する嫌疑を否定。実際にそうだったのか、トカゲの尻尾切りか。今後の捜査の進展が待たれます。

任意の逮捕から取調べに切り換えて、弁護士の入れ知恵があると警察もいやでしょうから、 容疑者の一味関係者が不当逮捕だと騒いだところで釈放することはないでしょう(それなら最初から逮捕しません)。なので、 GP側の記者会見の狙いは、組織的犯行の否定と、警察のイメージダウンでしょう。・・・あまり成功しているとは思えませんが。

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2008年6月20日 (金)

環境保護団体グリーンピースの構成員2名を窃盗および建造物侵入容疑で逮捕

毎日新聞より。

グリーンピース:鯨肉持ち去りでメンバー2人逮捕

 国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(GP)=東京都新宿区西新宿8=のメンバーが4月、調査捕鯨船「日新丸」 乗組員の鯨肉横領を裏付けようと、宅配途中の鯨肉入り段ボールを無断で持ち去った事件で、青森県警と警視庁は20日朝、 GP海洋生態系問題担当部長、佐藤潤一容疑者(31) =東京都八王子市みなみ野3=ら2人を窃盗と建造物侵入の疑いで東京都内で逮捕した。

 他に逮捕されたのは、GPメンバー、鈴木徹容疑者(41)=横浜市金沢区野島町。

 調べなどでは、2人は4月16日午前8時40分ごろから午後2時半ごろにかけて、日新丸に乗船していた「共同船舶」 (東京都中央区)所属の乗組員1人が北海道の自宅に宅配便で送った鯨肉23.5キロ入りの段ボール1箱を、 経由地の西濃運輸青森支店の配送所に侵入して盗み出した疑い。西濃運輸(岐阜県大垣市)が5月16日、青森署に被害届を出し、 県警警備部と警視庁公安部が合同で捜査していた。

 県警は20日午前、新宿区のGP事務所など5カ所の家宅捜索に入った。2人の身柄は同日中に青森署に移して本格的に事情を聴き、 GPが組織的に関与していなかったかなどについても調べる。

 GPは5月15日、乗組員ら12人が鯨肉を着服したとして業務上横領容疑で東京地検に告発。佐藤容疑者は記者会見で、 無断持ち出しを認めたうえで「横領行為の証拠を入手するためで問題ない」などと説明していた。

 県警は「持ち出し行為は悪質で、グリーンピースの主張は関係ない」としている。西濃運輸は「同様事件の再発防止を再徹底する。 グリーンピースへの損害賠償請求については、弁護士に相談する」とのコメントを発表した。【矢澤秀範、野宮珠里】
 

◇「逮捕は当然だ」 国家公安委員長

 GPメンバー2人が逮捕されたことについて、泉信也国家公安委員長は20日の閣議後会見で 「人の所有物を勝手にとるのはあってはならないことで許されない。(逮捕は)警察として当然の責務を果たしたものと理解している」 と述べた。

 この窃盗容疑についてGPの側の法律解釈も公表されていまする。なお、 GPが意図した検察への鯨肉横領の告発は”不発”に終わった模様。

グリーンピース:横領告発は不起訴処分に 東京地検方針

 調査捕鯨船「日新丸」の乗組員らが鯨肉を土産として自宅に持ち帰っていた問題で、東京地検は、 国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(GP) 側から業務上横領容疑で告発されていた乗組員らを不起訴処分にする方針を決めた模様だ。

 水産庁などによると、乗組員には鯨肉数キロを土産に持ち帰る慣習があった。 GP側は乗組員が鯨肉を横領していると主張し、「証拠品」として、今回容疑となった鯨肉を地検に提出していた。 地検は無断持ち出しではなく、横領には当たらないと判断したとみられる。

毎日新聞 2008年6月20日 15時00分(最終更新 6月20日 15時00分)

 しかし、今回の逮捕はこれで終わるものではないでしょう。 窃盗容疑に対する法律解釈をあらかじめ用意していたことと言い、GP全体としての組織的関与が疑われること、 また家宅捜索が5カ所に及んだことから、まず2名を逮捕して窃盗容疑を固め、 その上で組織的関与についても余罪がないかを追及することになるでしょう。

 GPは常時弁護士を抱えている事からも、法律ぎりぎり、あるいは非合法の活動を前提としている意志が伺えます。 今回の一件も、周到に準備した活動かも知れませんが、国家権力を甘く見ると痛い目に遭います。また、GP側は「不必要な逮捕」 と批判しているようですが、さっさと逮捕したことをありがたく思うべきでしょう。というのも、任意の事情聴取をだらだら続けて、 その上で逮捕して拘留期限ぎりぎりまでのばすという手段だってとり得たし、不法侵入で逮捕拘留、その間に窃盗についても取り調べておいて、 拘留期限近くなってから窃盗で再逮捕という方法もあり得たでしょうから。

 今回逮捕された容疑者は、おそらく事実関係は認めるにしても、 鯨肉を私有する意図はなかったと容疑を否認するでしょうから、容疑否認のまま送検、窃盗に当たるかどうかは裁判で争う・・・ という段取りでしょうか。それともサミットが終わる7月9日までの人質?拘留期限の22日が過ぎるとサミットも終わっていますし。 だとしたら、絶妙のタイミングです。

 容疑者になったGPの人は、鯨肉を食っちゃったという噂ですが、 たとえ一口でも食ってるからには私有する意志がなかったと突っ張るのは無理でしょう。また、警察がGPの組織的関与を疑っているそうですが、 であるとすれば窃盗と言う犯罪を構成する意志の面、すなわち「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、 利用し処分する意思」の範囲についてはGPの環境保護団体としての活動との整合性の面からも考える事になります。 つまり組織としてのGPには、”記者会見を通じて反捕鯨活動の広告を行い、もってNPOの活動資金となる寄付を増やそうとする意志” がなかったのかと。団体への寄付金で構成員が生計を立てている実態であれば、窃盗が成立してもおかしくありません。

 警察は、逮捕された容疑者は単なる実行犯で、本命は別にいると見ているのではないでしょうか。

 

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2008年6月19日 (木)

ナメクジウオ・ゲノムは平等主義の夢を見るか?

ホッテントリーメーカーで生成したタイトルですが、いいですね。トンチンカンで。

さて、国際協力プロジェクトがナメクジウオの全ゲノムを解読。新聞各社の見出しは以下の通り。

祖先はナメクジウオ ヒトと遺伝子6割共通--国際チーム、ゲノム解読  (毎日新聞)

脊椎動物祖先のゲノム解読 日米欧がナメクジウオで (47NEWS)

脊椎動物の祖先はナメクジウオ=ホヤは傍流と判明-日米英などゲノム解読  (時事通信)

脊椎動物の祖先はナメクジウオ 「ホヤ」との論争に決着 (朝日新聞)

ヒトなど脊椎動物、祖先はナメクジウオの仲間…ゲノム解読で (読売新聞)

脊椎動物の祖先、ナメクジウオ 京大など国際チーム遺伝子解析 (京都新聞)

京大・理化学研究所など、 国際チームとの共同研究でナメクジウオゲノムの解読に成功 (日経プレスリリース)

ですが、 生命現象を見るのにこうまで人間中心の見方しかできないって言うのはどうなんでしょうね。ヒトとのつながりで、脊椎動物中心、 そこからのつながりで脊索動物・・・。ナメクジウオをそんな不純な目で見ないでやってください。

各紙の見出しでまっとうなのは47NEWSと日経プレスリリースくらいですね。

私はむしろ、ナメクジウオのゲノムプロジェクトが動いていたことに感心してしまっています。本当にたいしたものです。 それが何かの役に立つか、なんて卑しい目で見てはいけません。

さて、脊索動物から脊椎動物に進化する経路にを考えた場合、ホヤは傍系の袋小路、ナメクジウオ(の祖先型) が脊椎動物の直系の祖先型と言うことなのでしょう。しかし、見方を変えると現生のナメクジウオもまたホヤ同様の袋小路なので、 「脊椎動物の祖先はナメクジウオ」と言う言い回しは正しくありません。

 

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最後は、自動生成のタイトルにつっこんで締めます。

 

 

 

 

2008年6月16日 (月)

国際宅急便の運送約款見直し

[Rice-Net]経由で知りました。DHLからのおしらせ。

 

2008年5月15日(木)
  動物・植物検疫を必要とする日本向け貨物の取扱中止について

 

5月15日より、これまで一部例外的に対応してまいりました動物および植物検疫を必要とする日本向けの貨物について、   運送約款に基づき世界レベルで取扱をすべて中止することをDHL Expressとして決定しましたので、ここにお知らせ申し上げます。  
  今後は、東京、大阪、名古屋のゲートウェイに到着した対象貨物は荷主様に返送されることとなります。

 

動物および植物検疫が必要なため今回取扱が中止となる代表的な品目は以下のとおりです。

 

    * 生花、切花、ドライフラワー
      * ポプリ
      * 野菜・果物
      * 冷凍果物
      * 未焙煎のコーヒー豆
      * 大豆などすべての豆類
      * モルト
      * 麦わら
      * 種子
      * 生肉、冷凍肉、ビーフジャーキー、ハム、ソーセージ
      * 骨や角
      * 抗体
      * 血清
      * すべての動物の血液
      * 加工されていない動物の毛皮や羽
      * バクテリア、ウィルス

 

なお、これにともない、インボイス上の貨物明細が間違いなく伝わり、通関時の誤解を生じさせないことが、   これまで以上に重要となります。
  「個人の所持品」、「ギフト」などの表現では、貨物の内容が理解されず、   明細が不明瞭なことを理由に荷主様に貨物が返送されることとなりますのでご注意下さいますようお願いいたします。
  ご不明の点に関しては、当社の営業担当までご連絡ください。 ご理解の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

*尚、本日より5月31日(土)までに到着した該当貨物については、移行期間として従来通りの対応をさせていただきます。  

少量の植物種子の国際間の移動は、国際植物防疫条約によって旅行者が持ち歩く場合を除いて” 郵便小包”で送ることになっている。詳しくはこちら (植防のページ)。

通関の際に、「郵便事業株式会社の事業所内で郵便事業株式会社の職員の立会いの下に郵便物を開封し検査を実施」 となっているのですが、信書用の封書だと検査が受けられません(通信の秘密が優先されます)。・・・なので、国際宅急便の場合は、 本来種子を送ってはいけないはずなのですが、なんでこれまでできたのか不思議です。国際的に同じ枠組みが担保されているはずなのですが。

なお、外国郵便で種子が送られてくる場合でも、なぜか通関をスルーして送付されてくる場合が結構あります。 その場合、原則は受け取った人が横浜税関成田支所まで種子を持参して、検査を受けることになります。

ちなみにFedexの対応はこちら

 

輸出検疫対象貨物の取り扱いについて

 

輸出貨物の検疫は、仕向国での輸入規制に左右されますが、   全ての検疫対象貨物について仕向国の規制を正確に調べることは不可能であり、   検疫所においても仕向国の輸入条件に関する情報を完全に把握していないのが実情です。   このような状況の中で法令を遵守し迅速で確実な通関業務を遂行する為、弊社輸出通関部では、   検疫の申請及び検査の必要な輸出貨物について受託不可とさせていただく事と致しました。該当貨物が輸出通関の際に発見された場合は、   発送元へ返却させていただきます。ただし例外として、貨物集荷時にお客様が検疫証明書 (動物検疫証明書(pdf)   ・植物検疫証明書(pdf)) を用意されている貨物は、弊社輸出通関部で検疫手続きの必要がありませんので、   一般貨物と同様に通関手続きをさせていただきます。

 

輸出貨物の検疫については、農林水産省 植物防疫所および   動物検疫所からも輸出者が検疫の必要の有無を確認するよう指導されております。従いまして、仕向国の輸入通関に関する照会・   手続きにつきましては、輸出者様が現地輸入者等の関係者を通じて輸入国の農業担当当局又は検疫当局に確認いただくか、   あるいは仕向国の在日大使館に問い合わせ、必要書類を用意していただくようお願い申し上げます。
  *植物検疫対象貨物の例
  種子、米(精米の有無にかかわらず)、大豆・小豆等の豆類、お茶の葉(小売用になっていない生の葉)
  *動物検疫対象貨物の例
  動物(牛・豚・羊・やぎ・鹿・馬・ろば・にわとり・犬・うさぎ・サル等)由来の血、血清、抗体、細胞等(サルに関しては、   ワシントン条約に該当する物がありますので注意が必要です。)

 

  本件に関するご質問はカスタマーサービス(0120-003200)までお問い合わせ下さいますようお願い申し上げます。

とのことですが、例えば日本の植防体制を例にとると、デフォルトで検疫証明書は必要。その上で、 検疫手続きが別途必要(ものによっては輸入禁止品もあります)。なので、 海外のFedex支社でも同様の対応をとっていると、もともと日本向けの種子は受託不可ということになりそうです。

ま、種子でなくても国際間の輸送にあたって規制のかかる微生物も結構あるんですけどね。たとえばこちら (郵便公社のホームページ) 。

 

国際郵便として送れない危険物

 

(5) この分類に含まれる例

 

9) その他の危険物

 

伝染性の物質とみなされない、遺伝子が組み替えられた生物又は微生物

えーと、組換え大腸菌のスタブは送っちゃいけないように見えます。結構送られてきているらしいんですが。

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2008年6月14日 (土)

iPS細胞・人工万能細胞の遺伝子組換え実験の法規制

カルタヘナ法の規制とiPS細胞を使った実験の兼ね合いを論考したblogがあった。

http://plaza.rakuten.co.jp/sphigomonas/diary/200801260001/

トラックバック先のURLが見つからないのでとりあえずリンクしておく。

規制対象かそうでないかは具体的なケースを並べてみないと分からないので。以下に列挙する。

 

規制対象

 
       
  • レンチウイルスベクターの構築から培養細胞へのトランスフェクションまで。
  •    
  • キメラマウスの作成。
  •    
  • マウス成体へのiPS細胞、iPS細胞から分化させた細胞の移植。
  •    
  • ヒトへのiPS細胞、iPS細胞から分化させた細胞の移植。(治療プロセス)
  •  
 

規制対象外

 
       
  • 樹立させたiPS細胞の培養などin vitroでの実験。
  •    
  • iPS細胞、iPS細胞から分化させた細胞の移植されたヒトの日常生活。 (治療後)
  •  

トランスフェクションできるように外被を被せた組換えウイルスや、そのベクター構築のための大腸菌の組換え実験は当然、 カルタヘナ法の規制対象。

一方、遺伝子導入用のウイルスベクターの多くは(全てではない!)は、 ウイルスとして自立的に粒子を増幅する能力が無い様に欠損変異の導入などがしてあるので、 培養細胞に感染させた状態では、法律上は”遺伝子組換えウイルス”ではない。また、培養細胞も法律上の” 生物”ではないので規制対象にはならない(ただし、 HEK293細胞+アデノウイルスベクターのように明らかに遺伝子組換えウイルス粒子を放出する組合せの場合は規制対象になる)。

ただし、厄介なのは、ウイルスベクターの構造によっては複製可能なレトロウイルス(RCR)が生成する場合があるので、 これが残存する場合には規制対象となってしまう(増殖性のウイルスが生成する場合は他の種類のウイルスベクターでも同様)。

iPS細胞の場合、将来は細胞バンクのような形で医療用の細胞株を樹立しておいて、その時点でRCRの発生が無いことが確認できれば、 いずれは、それを使った移植に関してはカルタヘナ法の規制対象から除外できる可能性はある。・・・厚労省の対応如何ですが。

キメラマウス作成や、マウス成体へのiPS細胞・iPS細胞から分化させた細胞の移植は、 レンチウイルスベクターがマウスゲノムから見て異種生物の核酸であるため、 遺伝子組換え生物の作成に当たるので規制対象

・・・と言う具合に、規制対象になるケース、ならないケースがモザイク状になる。原則は規制対象だが、 培養細胞とヒトを規制対象から除外するルールだと理解すると分かりやすいかもしれない。

なお、遺伝子治療として先行事例のあるウイルスベクターについては、ここに11件の第一種使用の事例が登録されている。 個別の事例の「遺伝子組換え生物等の使用等の方法」の欄を見ていただくと分かるのだが、 いずれもウイルスベクターを導入した細胞を患者さんに投与して数日目以降は第一種使用等には含まれない。

そう。ヒトは”カルタヘナ法の規制対象となる生物”ではないので。

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宮城県南部でM6.7の地震

防災科学研究所の公表では以下の通り。

震源マップ

■ 震源情報
震源地 岩手県南部
震源時 2008/06/14 08:43:45.38
震源緯度 39.03N
震源経度 140.88E
震源深さ 8km
マグニチュード 6.7

2005年の「宮城県南部地震」(M7.2, 死者なし)よりも規模は小さい。 今回は震源が内陸だが山間部の人口密度の至って低い場所なので、直下型地震として被災した方は極少ないと考えられる。

今回は緊急地震速報は間に合った。

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2008年6月13日 (金)

細胞分化誘導へのアプローチ

6月12日、読売新聞より。

遺伝子3種類で「インスリン」細胞を作り出す

マウスで米大教授ら成功

  【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)=矢沢寛茂】膵臓(すいぞう)に3種類の遺伝子を入れるだけで、血糖値を下げるインスリンを分泌するベータ細胞を作り出すことに、米ハーバード大のダグラス・ メルトン教授らのグループがマウスの実験で成功した。  

 11日、当地で始まった国際幹細胞研究学会で発表した。様々な組織の細胞に変化する胚(はい)性幹細胞(ES細胞)   や新型万能細胞(iPS細胞)を使わずに簡単につくることができ、ベータ細胞が破壊され、インスリンを作れない1型糖尿病の治療への応用が期待される。

 メルトン教授らは、遺伝子操作でベータ細胞を作れないようにしたマウスの膵臓に、ウイルスを運び役にして膵臓に関連した遺伝子を注入。1100種類を試し、受精卵から膵臓ができる過程で働いている3遺伝子がベータ細胞を効率よく作るのに欠かせないことを突き止めた。

 この3遺伝子を入れた2割のマウスで、膵臓の95%を占める外分泌細胞の一部が、ベータ細胞と極めて似た細胞に変わった。インスリンが分泌され、血糖値が下がるのも確認された。直接、ベータ細胞の状態に変わったとみられる。

 1型糖尿病患者は、インスリンを注射するしか血糖値を調節できないため、ベータ細胞をES細胞やiPS細胞などから作製する研究が世界中で行われている。メルトン教授は、「狙った細胞を体内の狙った場所に作れることが分かった。とてもミラクル。神経や肝臓細胞などにも応用できるのでは」と話している。  
  (2008年6月12日  読売新聞)

 論文が出るまで詳細は分かりませんが、「ウイルスを運び役にして膵臓に関連した遺伝子を注入。 1100種類を試し、受精卵から膵臓ができる過程で働いている3遺伝子がベータ細胞を効率よく作るのに欠かせないことを突き止めた。」 という記述からは、iPS細胞の誘導の際に行ったように、遺伝子導入の試行錯誤で辿り着いた成果のようだ。

 この種の切り口がもう少しスマートにやれるようになると色々応用範囲も広がるのだが、 絨毯爆撃方式はお金がかかるしマンパワーもいるしで、社会的なインパクトが大きな成果が見込める場合以外は、 普通はなかなかやれるものではない。

 ちょっと考えてみても、 レトロウイルスに1100種類のcDNAを組み込んでCMVプロモータなどで過剰発現させるとして、コンストラクトを1100種類用意して、 いつでも使える状態にしておくのは結構大変だ。技術的には、Gateway systemのおかげで、 完全長cDNAのライブラリーがEntry vectorに載った物がフルセットあれば過剰発現用のレトロウイルスベクターもシリーズで作るのが比較的簡単なってきてはいる。

 これまでは、例えばiPS細胞の誘導のように、 未分化状態の誘導のためにウイルスベクターでcDNAを過剰発現させるアプローチがとられてきた。今回のニュースでは、 分化誘導のために同様の手法が使われている。考えてみると、未分化状態の細胞というのは遺伝子発現の様相から言えば、おそらく一種類 (あるいは数種類)の状態しかない。逆に、分化した状態の細胞はもの凄く多様だ。上のニュースで上手くいったのは、 ランゲルハンス島β細胞様の細胞だが、これは神経や肝臓細胞どころか、 あらゆる細胞の分化誘導が同じような手法でできる可能性があることを示している。

 となると・・・ レンチウイルスベクターにヒトやマウスの完全長cDNAをのせた過剰発現用ライブラリーをリソースとして網羅的に整備すれば世界的に引く手あまたではないか? ゲノムネットワークもH20で終わるようだし、 FL-cDNAのリソース整備の次はトランスフェクション可能なFL-cDNAライブラリの整備に向かっては。 iPS細胞からの分化制御のキーテクノロジーになりそうです。

 shRNAでは各種遺伝子のノックダウン用のセットが販売されているが過剰発現用のレンチウイルスベクターのセットはまだ見たことがない。 個別の研究者が、ちまちまと完全長cDNAをレンチウイルスに載せ換えている時代でもないだろう。

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2008年6月12日 (木)

Attack of the killer tomatoes

6月11日、朝日新聞の記事より。

殺人トマト? 米で食中毒騒動、マックなど使用自粛

2008年6月11日19時28分

 【ニューヨーク=真鍋弘樹】米国各地で4月中旬以降、サルモネラ菌に汚染されたトマトによる食中毒が167件確認され、 ハンバーガー店などの外食産業が生のトマトの使用を控える動きが広がっている。

 米食品医薬品局(FDA)によると、被害が出ているのは大型の品種で、小型のチェリートマトなどは安全が確認されている。 FDAがサルモネラ菌による食中毒の恐れを警告したのがきっかけで、 マクドナルドなどの大手外食チェーンが次々と該当するトマトの使用を自粛。 最大手のウォルマートなど小売りチェーンも販売を控え始めている。

 サンドイッチなどに欠かせない食材だけに消費者の間では動揺が広がり、タブロイド紙のニューヨーク・ポストは1面で 「殺人トマトの攻撃」という見出しで報じた。

その昔、突然変異で凶暴化したトマトが人類を襲う、というB級映画がありました。タイトルはまさに”Attack of the killer tomatoes”。Wikipediaによれば1978年の作品だとか。 今から、30年前のことです。ニューヨーク・ポストの見出しを付けた方は、 1978年当時かそれ以降にこの作品を見たことがあるのかも知れません。

食中毒情報からは思いっきり横道にそれますが、1978年の時代背景から言えば、 突然変異育種法の研究が華やかな時代でした。ムギの突然変異育種の研究に関する牧野さんのまとめがこちらにありますが、 文献リストを見ると1960年代中頃から1970年代後半にかけての時期に集中しています。イネでは一足早く、 日本では1966年にガンマー線による突然変異育種(一種の放射線育種)でレイメイという半矮性の品種が育成されています。

”Attack of the killer tomatoes”というB級映画の背景には、こうした放射線の利用、 放射線異育種という技術革新で生まれた新しい作物の登場あったのかもしれません。丁度、今日のメディアに対する遺伝子組換え技術のように。 たとえば、ジュラシック・ パーク(1993)バイオハザード(2002)の着想には遺伝子組換え技術の影響が見られますが、 これらに前後する現実の技術革新には、日持ち性の良い遺伝子組換えトマト"FLAVR SAVR"(1994年市販化)があります。

ちなみに、ゴジラ(1954)は突然変異+巨大化という組み合わせで作り上げられたイメージですが米国が1954年にビキニ環礁で行った水爆実験によって日本の漁船員が死の灰等で被爆した、 いわゆる第5福竜丸事件の影響で、放射能の影響を発想したのだと言われています。時期的には放射線育種の隆盛よりも早いので、 放射線育種の影響では無かったと考えられます(逆に、研究者がゴジラから放射線育種を発想することは・・・まぁ、無いでしょう)。一方、 巨大化については、放射線育種に先行して行われていた倍数性育種の影響はあるのかも知れません。

なお、原子力の平和利用のためにIAEAが設置されたのが1957年、 その後FAOの協賛で各国で放射線育種が推奨されてきたことから、時系列で見ると”第5福竜丸事件→(ゴジラ)→ 放射線育種 → (殺人トマト)”という弱い因果関係が見て取れます。

放射線育種の隆盛期からは30年。今日では「放射線育種で育成した品種は体に悪い」という社会運動はありません。 遺伝子組換え作物の市販かからは10年ほどなので、 遺伝子組換え作物もあと20年以内には特段騒がれるような物ではなくなっていることでしょう。

# まあ、今時、F1品種を悪者にして顧客を囲い込もうという悪辣な商売もあるようで。 何かを貶めることでしか自らの優位性を示すことができないというのは実に気の毒です。

 


 

さて、真面目なお話。CDCの公表した最近発生したサルモネラ菌による食中毒の情報の調査結果はこちら。

http://www.cdc.gov/salmonella/saintpaul/

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2008年6月11日 (水)

植物用 binary vectorについての覚え書き-1

アグロバクテリウム法による植物の形質転換用バイナリーベクターについてのレビューがある。

Lee, L.Y and Gelvin, S.B. (2008) T-DNA Binary Vectors and Systems,  Pant Physiology 146:325-332

http://www.plantphysiol.org/cgi/content/full/146/2/325

Table 1.に多数のベクターが一覧されており、Ori、 ベクターの特徴、Gateway systemへの対応、 Bacteria用選抜マーカー、植物用選抜マーカー、論文の出典が記載されている。所内の実験計画の申請者には是非見ておいてほしい。 どこかで紹介しておこう。

レビューは別として、一般的なT-DNAベクターの主要な構成要素は以下の通り。

     
  • 複製開始点
  •  
  • 抗生物質耐性等選抜マーカー
  •  
  • T-DNA

複製開始点

バイナリーベクターと言うからには二種類以上のバクテリアが宿主になる。 それぞれの宿主でプラスミドが複製される際に使われる複製開始点は、いくつかのオリジナルなプラスミドに由来しており、 それによってベクターを分類することができる。

     
  • 全ての宿主で同じ複製開始点を使用できるベクター(代表例はRK2由来のoriVの様なタイプ)
  •  
  • 宿主ごとに異なる複製開始点が使用できるように設計されたベクター   (代表例はpVS1由来のoriVとpMB1由来のColE1やその変異型をもつタイプ)がある。

前者のRK2由来のタイプのベクターは、宿主としてRhizobium rediobacter (別名、 Agrobacterium tumefaciens)を組み合わせると認定宿主ベクター系に該当するが、 後者のpVS1系のベクターは、RK2系とは由来が異なるので(緑膿菌、Pseudomonas aeruginosa 由来)、認定宿主ベクター系に該当しない。

このほかにplasmidの不和合性(incompatibility)に着目した分類法もある。

どの複製開始点を使うかは、ベクターのコピー数や安定性に関わる問題なので用途によって使いやすいものを選べばよい。例えば、 BAC由来の巨大DNAで形質転換したい場合は低コピーで安定なものが良いだろうし、 そうでなければ高コピー数のpVS1+ColE1の方が良いだろう。

変わり種は、酵母の2 micrometer originを持つタイプ。佐賀大学の永野先生の開発したシリーズで、 高コピー型のpSU7(ntpII, ColE1)、低コピー型のpSU23(ntpII, pBR322)がある。 これらは酵母の相同組換え系が利用できるので、Gateway systemのようにLR反応、 BP反応のような特定のサイトを介さずにベクターのコンストラクションができる。

このベクターは、宿主がRhizobium、大腸菌、酵母と3種類にまたがっているので、もはやbinary vectorという呼び方は正しくないかも知れない(shuttle vectorという言い方でも正確ではないかも)。

Clonaseが要らないのでランニングコストが安い、制限サイトを無視して”切れない”   コンストラクトが作れる、大腸菌のコンピテントセルの形質転換効率はそこそこで良い、エントリーベクター、デスティネーションベクターの抗生物質耐性の組合せに配慮が要らない、相同組換えでシームレスなコンストラクトが作れるので余計なDNA断片を含まないため製品向けを意識した組換え作物の場合は説明しやすい、などメリットは多い。

反面、multi site Gatewayでのベクターコンストラクションと比べると、形質転換酵母の増殖に2日程度かかり、酵母から抽出したplasmidで再度大腸菌を形質転換するので、大腸菌で最終的なコンストラクトの確認ができるようになるまでに1-2日余計にかかる。・・・なので、プロモーターを数種類入れ替えたコンストラクトのシリーズが短時間にほしいと言うような場合には向かない。

pSU7もpSU23もバクテリア用の抗生物質耐性遺伝子がKmRなので、pCAMBIA1105やpPZP200系のようにSp/Smのベクターには使えないので要注意。

抗生物質耐性等選抜マーカー

Bacteria用

組換え大腸菌と組換えRhizobium を選抜するためのマーカー遺伝子。KmR(KanR)が圧倒的に多いが、 Sp/Sr、Gentもある。sh_bleは見たことがないがおそらくアグロバクテリウムでも使えるだろう。 最終的に形質転換植物には導入されないか、導入されても発現はしない(ベクターバックボーンの宿主植物への組込については別の機会に書く)。

植物用

抗生物質耐性遺伝子ではnptII(KmR), HPT(hyg, HPH) が圧倒的。イネでは主にHPT。 このほか抗生物質耐性遺伝子ではないが、EPSPSやBarが使われることもある。

最近は、OECDの推奨もあって、ALSやPMIなど、抗生物質耐性ではない選抜マーカーも普及し始めている。

(ALS= アセト乳酸合成酵素、PMI= phosphomannose isomerase)

補足

PMIについては近く耐熱性アミラーゼを持った実用品種の第一種使用が始まる見込(OECD IU: SYN-E3272-5)。

ベクターに組み込まれた抗生物質耐性遺伝子をゲノム中から切り出して除去するシステムも実用化されている。 Monsantoの高リシントウモロコシ(OECD UI: REN-OOO38-3)では、 ファージのcre-loxシステムでnptIIを除去している。

T-DNA

植物ゲノムに組み込まれる領域。末端の境界部分にLB (Left Border)、RB(Right Border)と呼ばれる、 不完全な25 bpsの反復配列がある。たとえばこちら(pGWB1)。 このアクセションではT-DNAのfeaturesは詳細に書かれています(逆にバックボーンの情報はありません)。

※ 最低なのはこちら (pPZP200)のアクセション。おいっ!と言いたいくらいfeaturesに何にも書いてない。

その他

植物用のバイナリーベクターはバックボーンだけで10 kbを超えるものも普通。 シーケンスのコストが高かった時代に作られた古い世代のベクターでは、最近までバックボーンの塩基配列情報が無かったものも少なくない。 例えばpBI121のシーケンスが登録されたのが2003年。 長く使われてきた割に、中身は余りよく知られていなかったのだ。まあ、 比較的最近までT-DNA以外の領域は偶発的にしか植物ゲノムに組み込まれないと考えられてきたので、それで問題なかったのだが、 ケーススタディーが積み重なると実はそうでもないことが分かってきた。

また、アグロバクテリウムの形質転換もelectroporationが普通になってきているので、 bomなどtriparental mating (接合)に必要な構成要素がベクターになくても良くなってきている。

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2008年6月10日 (火)

ジャガイモの起源地論争

ジャガイモの起源地を巡ってペルーvsチリの論争が勃発。 そこにボリビアが参戦して混迷を深めている模様。

ジャガイモの伝搬についての地図はこちら

「イモの起源」はどっち?一歩もゆずらぬペルーとチリ

【6月5日 AFP】アイルランドではイモ飢饉(ききん)が起こり、ダン・クエール(Dan Quayle) はイモのつづりを間違え、ロシアの料理人はイモに誓いをたて、中国はイモの最大の生産国――そして現在、イモはその「出自」 をめぐりアンデス山脈で繰り広げられる舌戦の最前線に位置している。

 イモの起源が南米であり、 16世紀スペインの植民地開拓者によって欧州に伝えられたことについては専門家の意見が一致しているが、 ペルーとチリは長年その起源が自分の国にあると論争を繰り広げてきた。

 国連(UN)が2008年を「国際ポテト年(International Year of the Potato)」 と定めたことにより、「パタタ(patata)」(アンデス山脈のケチュア語では「パパ(papa)」) の起源を持つ国としての名誉をかけ論争がヒートアップしている。

 国連サイトにも掲載された「イモは7000年前にペルー南部のチチカカ湖(Lake Titicaca) 周辺で最初に栽培された」という科学的証拠にチリが反論し論争に火がついた。同国のマリヘン・ホンコール(Marigen Hornkohl)農相はオランダの7000種のイモのほとんどがチリ産のジャガイモと遺伝子的なつながりを持っている、 とDNAテストを引き合いに出し、チリ起源説を主張した。

 ペルーの反応はもちろん激しいものになった。日刊紙La PrimeraのCesar Hildebrandt論説委員は 「農作物に関する7000年の著作権」を自分のものにしたいのだ、とチリを非難。他の日刊紙も、「ペルーのイモを盗もうとしている」 とチリを非難し、ブドウから作られるアルコール飲料「ピスコ(Pisco)」やカスタードを使ったデザートなど、 チリとの食べ物の起源をめぐる論争をとりあげ、イモ論争に加わった。

 ペルー農業省傘下の研究所長は、チリのイモがペルーに起源を持つものであることは疑う余地がないと話し、チリ原産の種は、 チチカカ湖北の地域で栽培が始まったペルーのイモの「子孫にすぎない」という。

 ペルーとチリとの論争が煮詰まる中、ボリビアが両国のものよりも起源の古いイモを確認したと主張、第3の「シェフ」が現れ、 煮えたぎる論争の鍋をかきまわす可能性もでてきている。(c)AFP/Gilles Bertin

作物の栽培化の起源地については、大抵の場合、決定的なことは言えない。 考古学的な資料が見つかるたびにどこかに移る。上の記事のように、 「オランダの7000種のイモのほとんどがチリ産のジャガイモと遺伝子的なつながりを持っている」としても、調べてみれば 「オランダの7000種のイモのほとんどはペルー産のジャガイモと遺伝子的なつながりを持っている」ということも分かるだろう。

イネやオオムギの栽培化の過程を見れば分かるように、野生のジャガイモの祖先から栽培化されてきた過程も、 もしかすると一元的ではないことも考えておかなければならない。考古学的な資料から最古の栽培化起源地であることが分かっても、 それが今日のジャガイモへと直結するとは限らない。せっかく栽培化されても、一度は滅びてしまうということさえありうるのだから。

これは研究者に任せておくべきテーマであって、 政治家やマスコミ関係者の発言で真相が変わるというものではないのだ。ま、 皆さん激しくジャガイモを偏愛しているということは良く伝わってくるが。

さて、7,000年前ですか・・・ペルーという国も、チリという国もなかったように思うのですが、 なぜそんなに起源地にこだわるんでしょうかね。起源地がどこかということよりも、今日の両国の国民へと繋がる先人達が、 作物をよりよいものに改良してきた歴史的な事実を共にたたえ合う事の方が大切だろうに。 栽培化当初のジャガイモなんてどうせろくなものではなっかたと思うのだが。

ご先祖様は子孫達のつまらない対立を草葉の陰から見て、きっとあきれているに違いない。

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2008年6月 9日 (月)

第二石炭紀の到来?

えー、今月は環境月間でございます。

環境月間、つまり今月は環境保全のことを考えようということで、 週末ともなると民放では環境保全をおもしろおかしくアピールするおばか番組で喧しいありさま。

そんなテレビ番組を見るのにテレビをつけておくくらいなら、1秒でも早くOFFにした方がよほど環境に優しいであろうにとおもいます。 だいたいなんだって発電床の上でよさこいソーランを踊らなきゃいけないのか、意味不明です。発電する電力と、 それを視聴者に届ける電力を比べれば、なーんにもしない方がましでしょう。

NHKも馬鹿な世論調査をやっていて「環境税の導入に賛成か反対か」だって。税率や用途という大前提の設定なしに聞くものだから、 「わからない」と言う回答がたしか38%。そりゃそうでしょう。判断の材料もなくぶしつけな質問をされたら誰だって「わからない」 と言いたくなります(でも6割の方は、前提の説明なしで賛否を表明している。これはこれで、短絡的で恐ろしい)。

さて、現状で地球上の植物たちが固定できるCO2の量は年間何トンくらいなんでしょう。それに対して、 人類が排出するCO2とCO2の自然増を加えた量はどのくらいあるんでしょう。つまり、CO2の収支を(とりあえず)ゼロにするには、 どのくらい排出量を削減しなければならないのでしょうかね。そのあたりの事情はマスコミ報道を聞いてもさっぱり分からない。 だいたいマスコミは定量的な議論をする能力が低いので、期待してはいけないのですが。

で、CO2の収支がゼロになったところで、産業革命以降のこれまでの温暖化の流れから言えば、地球温暖化は止まらない訳です。もし、 気温を下げる方向に持って行きたいのであれば、CO2の収支をマイナスにするか、 火山の大噴火並のエアロゾルを成層圏にばらまいて地表や大気に吸収されて熱に変換される太陽光を遮断するくらいしかできません。でもなきゃ、 温暖化は止まらない。

政府の言ってる施策を実施すると、あるいは国際的な温暖化防止のフレームワークが機能すると、温暖化は止まるんでしょうか。それとも、 どのみち止まりはしないのだが、温暖化の進行が少しゆっくりになるのでしょうか。数値目標を掲げて、 産業界や家庭でのCO2排出量を減らせというのなら、その結果どの程度の効果が見込めるのかも政府には説明していただきたい。

実は、CO2排出量を減らしても、もう手遅れです・・・という事態もあり得るし、効果のほどは分からないけど、 産業革命以降増えた分はとりあえず減らしましょう・・・というあまり科学的根拠のない精神論かもしれない。

とりあえずIPCCのホームページでも見ておきましょうかね。 気象庁による第4次評価報告書の抄訳はこちら

結局、「人類の活動が気候変動に影響を及ぼしている可能性がかなり高い」という結論。ま、気候変動に関する政府間パネルなので、 専門は気候変動。CO2の収支ではないのだよね。

ともあれ、最悪のシナリオの最悪のケースでは2099年には平均気温が6.4℃上昇、最善のシナリオでも、最もありがちな予測値では、 0.6℃の上昇とある。努力次第では温暖化がゆっくりになるんですね。

・・・でも結局、最善のケースでも地球温暖化は止まらない。・・・なんだ。

このまま行くと、再び石炭紀が訪れるのではなかろうかね。

 

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2008年6月 5日 (木)

「第1種使用規程承認組換え作物栽培実験指針の改正案」のパブコメ開始

表題の栽培実験指針のパブコメが始まった。 締切は7月4日。

栽培実験指針見直しの背景は「交雑に関する新たな科学的な知見が得られた等」。

この、新たな科学的な知見の内容については、こちらの参考資料にある (そのうちリンク切れするだろうから今の内にダウンロードしておきましょう)。

一方、従来の科学的な知見についてはこちら

新たな科学的な知見のポイントを以下に要約する。

 
       
  1. イネの花粉は隔離距離600mでも受粉する事がある。
  2.    
  3. 1.の受粉の頻度は0.028%程度。
  4.    
  5. 1.の事象が起こった状況は次の通り。
  6.    
  7.       
             
    • 花粉源の面積は2.3 ha
    •        
    • 開花期の卓越風はほぼ西南西-南-南南東。平均風速は3.2-9.9 m。        
    •        
    • 開花2週間程度前に 12.7-14.3 度の低温にさらされている。
    •        
    • 不稔率37.3-47.5%。
    •       
       
  8.    
  9. 冷害による雄性不稔で自家受粉率が下がったことで、遠方から飛来した花粉が受粉したと考えられた。裏付けのために、     人為的に低温処理で雄性不稔にしたイネを用いて交雑率を調査した。
  10.    
  11.       
             
    • 12℃、4日間の低温処理で交雑率は大幅に高まった(0.02% →         5.55%)。
    •       
       
  12.    
  13. 以上から、交雑の主要因は低温による雄性不稔、     副要因は大規模な花粉源と強い卓越風、と要約。
  14.  
 

これらから言えることは、5.の3条件が揃うと遠距離での交雑が起こるし、どれか一つが欠けても、   交雑は起こりにくくなるといえるだろう。

 

このほか、農環研が実施した試験結果を示している。   こちらは通常の交雑モニタリングが10,000粒を目処に行っているのに対して、   100,000粒以上を観測して0.0020%(!)の感度で検出しており、   試験規模が大きい場合は交雑が起こりやすくなると結論している(花粉源の栽培面積は20 a、   距離は最大40 m)。

 

また、シミュレーションによる交雑予測モデルを示し、交雑率0%を実現するには距離は無限遠になることを示した。また、   距離17m以上では交雑率0%の漸近線に相当近づいており、隔離距離による交雑率低減の効果は小さいことが予測された。

 

イネ以外については省略。

以上の新たな科学的な知見をふまえた改正案は以下の通り。

 

(1)隔離距離による交雑防止措置

 

イ 過去のデータに基づき、開花期の平均風速が毎秒3mを超えない場所を選定して行うものとする。   その場合においても、台風等の特段の強風が想定される場合には、防風ネットによる抑風又は除雄を行うものとする。  

 

ウ イネ及びダイズについて、開花前の低温により交雑の可能性が想定される場合には、(2)   に定める交雑防止措置を講ずるか、又は開花前に栽培実験を中止するものとする。

ちょっとわかりにくいので、「新たな科学的な知見」と、それに対する「対策」を対照させてみよう。

 
       
  • 冷害が起こると交雑しやすくなる
  •    
  •       
             
    • (2)に定める交雑防止措置を講ずるか、又は開花前に栽培実験を中止する。
    •       
       
  •    
  • 卓越風が強いと交雑しやすくなる
  •    
  •       
             
    • 開花期の平均風速が毎秒3mを超えない場所を選定して行う。特段の強風が想定される場合には、         防風ネットによる抑風又は除雄を行う。
    •       
       
  •    
  • 試験規模が大きいと交雑しやすくなる
  •    
  •       
             
    • 対策なし。
    •       
       
  •  

ん?試験規模に対する考慮はなし?

一般に、花粉源は試験規模に比例するので、試験規模が1/10になれば等距離での交雑確率も1/10になる。 シミュレーションでは隔離距離17m以上であれば、交雑率はほぼ0%。実測値でも、花粉源20 aの場合は距離10 m以上で交雑を検出するには120,000粒以上観察する必要がある(これで、交雑率は0.001%)。

となると、現行規制の30 m以上隔離すると、受粉確率は0%近傍で、ほぼランダムに変化するため、 等比級数的にしか変化しない栽培面積の効果は無視できるということだろうか。交雑が確認された要因に試験規模を挙げているのだから、 何故対応する規制の必要がないのかも説明して頂きたいところ。

この点を指摘しておこうかな。

また、冷害で周辺のイネが不稔になるのであれば、一般に組換え体の方も不稔になりがち。耐冷性の組換え体か、 本州方面で北海道の品種をベースに開発した組換え体でもない限り、 東北以南の本州方面では冷害による雄性不稔の効果は考慮しなくても良いだろう。

なので、栽培実験指針も地域別の対応があって良いのではないだろうか。(まぁ、そう読める規制ではあるものの。)

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2008年6月 2日 (月)

お米を沢山食べれば食料自給率は上がるか?

なんだか胡散臭いお話です。

 

お米たくさん食べる→減反不必要→自給率上昇 首相語る

2008年06月02日00時15分

 福田首相は1日、首相公邸前で記者団に米の減反政策について問われ、「たくさんお米を食べて、減反をしないで済むようになれば自給率は自動的に上がる。まずはそれをやりましょう。できることからやりたい」と述べた。町村官房長官は5月31日に「減反政策を見直していく必要がある」と語ったが、首相は政策見直しには言及しなかった。    

 一方、5月30日に発足した自民党食料戦略本部の本部長を務める加藤紘一元幹事長は1日のフジテレビの番組で「お米は余っている。それよりも大豆や小麦を作らないといけない。『農業は米だ』というこびりついた発想だ」と町村氏の見直し発言を批判し、自給率の低い大豆や小麦などの安定確保のため、国内生産のあり方や輸入ルート確保策の検討が必要だと指摘した。

まず現在、自給率向上の足かせになってるのは何か?農林水産省のホームページで公表されているデータを見てみよう。 ここでリンクしておいたのは結果の概要版なので、データの導出過程はあえて問題にしない。

これによると、昭和35年から平成18年の間に、食事からとるカロリーは上位4項目(1,667 kcal/2,548 kcal)では次のように変化している。

     
  • 米        :1,106 kcal → 585 kcal (-52l kcal)      
  • 畜産物     :    85 kcal → 394 kcal (+309 kcal)    
  • 油脂類     :  105 kcal → 368 kcal (+263 kcal)
  • 小麦       :  251 kcal → 320 kcal ( +69 kcal)    
     

なるほど米の消費が半減して、それを上回る熱量が主に畜産物、油脂類、小麦でまかなわれていることが分かる。

この変化は、一言で言えば「欧米化」と言えるだろう。・・・つまり、首相は、おかずを減らせと言ってるのですね(個人的には、 大きなお世話、だと思う)。たしかに、脂肪の摂りすぎは体に良くない。だが、 お米中心の食事でおかずの量を減らすと塩辛いものが食べたくなるのではないか?高血圧患者が増えなければよいが。

このあたりの関係は、厚労省の持っている死亡原因のデータと、 農水省の持っている食生活の変化のデータをつきあわせると相関が出るかもしれない。

しかし、落ち着いて考えてみると、現状では米以外の農産物はほとんど輸入依存なので、 米だけ消費を増やしても他の国産農産物の消費が減って輸入の比率はそのまま、 と言うことではパイが小さくなるだけで生産者にはメリットがない。何のための自給率向上なのか、 と言う議論の前提を整えないと何をやっているのか分からなくなる。とりあえず、 コメだけ食べていれば食料自給率が上がることは間違いないのだが。

最後に、かつて日本人がどのくらいコメを食べていたか、宮沢賢治に証言してもらおう。

  雨ニモマケズ
  風ニモマケズ
  雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
  丈夫ナカラダヲモチ
  慾ハナク
  決シテ瞋ラズ
  イツモシヅカニワラツテイル
  一日ニ玄米四合ト
  味噌ト少シノ野菜ヲタベ
  アラユルコトヲ
  ジブンヲカンジョウニ入レズニ
  ヨクミキキシワカリ
  ソシテワスレズ・・・・

1日に玄米4合というのは、当時、つましい食事の部類だったのでしょうかね。

ちなみに炊飯玄米の含水率は60%、乾物率は40%。炊飯前の玄米の含水率はだいたい13%、乾物率は87%。 玄米1合の重量は150 gなので4合の乾物重は、600 g x 0.87=522g、 飯としては炊飯すると2.5倍の重量になるので、1,350 g。カロリーで言えば、2,228 kcal。 昭和35年の総摂取カロリーが2,291 kcalなのでほぼ匹敵する。

ちなみに白米の場合、1,350 gで2,268 kcal。糠の繊維質が無い分若干、高カロリー。


賢治さんも、「欲ハナク」といいつつも、3食450 gずつご飯を食べるというのは、実は相当な食欲ではないですか? 茶碗1杯が160 g程度なので、毎食3杯。

朝から茶碗飯を3杯食えと言われても、私にはきついものがあります。ちなみに、450 gのごはんというと、 このくらいの分量になります。ちなみに我が家は麦13%位の麦飯です。試しに食べてみます。頂きます・・・

CIMG1042

・・・ごちそうさまでした。かなり満腹です。ほとんどおかずが食べられませんでした。告白しますが、これを毎日というか、 毎食続けるだけの根性が私にはありません。稲作農家の皆様、ごめんなさい。私はおかずも食べたいのです。 日本中がこんな食生活になると、畜産物や水産物の消費量全体が激減するので、 畜産業や水産業に従事している方々が間違いなく干上がってしまいます。結局、長期的には肉や魚の輸入比率が上がるのではないでしょうか。

おかずをほとんど食べないと言う前提だと、こんな風になるんですね。減反を緩和するために皆さんご飯を食べましょう・・・なんて、 総理や官房長官がどう言おうと、私にはとても言えません。

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