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2008年6月11日 (水)

植物用 binary vectorについての覚え書き-1

アグロバクテリウム法による植物の形質転換用バイナリーベクターについてのレビューがある。

Lee, L.Y and Gelvin, S.B. (2008) T-DNA Binary Vectors and Systems,  Pant Physiology 146:325-332

http://www.plantphysiol.org/cgi/content/full/146/2/325

Table 1.に多数のベクターが一覧されており、Ori、 ベクターの特徴、Gateway systemへの対応、 Bacteria用選抜マーカー、植物用選抜マーカー、論文の出典が記載されている。所内の実験計画の申請者には是非見ておいてほしい。 どこかで紹介しておこう。

レビューは別として、一般的なT-DNAベクターの主要な構成要素は以下の通り。

     
  • 複製開始点
  •  
  • 抗生物質耐性等選抜マーカー
  •  
  • T-DNA

複製開始点

バイナリーベクターと言うからには二種類以上のバクテリアが宿主になる。 それぞれの宿主でプラスミドが複製される際に使われる複製開始点は、いくつかのオリジナルなプラスミドに由来しており、 それによってベクターを分類することができる。

     
  • 全ての宿主で同じ複製開始点を使用できるベクター(代表例はRK2由来のoriVの様なタイプ)
  •  
  • 宿主ごとに異なる複製開始点が使用できるように設計されたベクター   (代表例はpVS1由来のoriVとpMB1由来のColE1やその変異型をもつタイプ)がある。

前者のRK2由来のタイプのベクターは、宿主としてRhizobium rediobacter (別名、 Agrobacterium tumefaciens)を組み合わせると認定宿主ベクター系に該当するが、 後者のpVS1系のベクターは、RK2系とは由来が異なるので(緑膿菌、Pseudomonas aeruginosa 由来)、認定宿主ベクター系に該当しない。

このほかにplasmidの不和合性(incompatibility)に着目した分類法もある。

どの複製開始点を使うかは、ベクターのコピー数や安定性に関わる問題なので用途によって使いやすいものを選べばよい。例えば、 BAC由来の巨大DNAで形質転換したい場合は低コピーで安定なものが良いだろうし、 そうでなければ高コピー数のpVS1+ColE1の方が良いだろう。

変わり種は、酵母の2 micrometer originを持つタイプ。佐賀大学の永野先生の開発したシリーズで、 高コピー型のpSU7(ntpII, ColE1)、低コピー型のpSU23(ntpII, pBR322)がある。 これらは酵母の相同組換え系が利用できるので、Gateway systemのようにLR反応、 BP反応のような特定のサイトを介さずにベクターのコンストラクションができる。

このベクターは、宿主がRhizobium、大腸菌、酵母と3種類にまたがっているので、もはやbinary vectorという呼び方は正しくないかも知れない(shuttle vectorという言い方でも正確ではないかも)。

Clonaseが要らないのでランニングコストが安い、制限サイトを無視して”切れない”   コンストラクトが作れる、大腸菌のコンピテントセルの形質転換効率はそこそこで良い、エントリーベクター、デスティネーションベクターの抗生物質耐性の組合せに配慮が要らない、相同組換えでシームレスなコンストラクトが作れるので余計なDNA断片を含まないため製品向けを意識した組換え作物の場合は説明しやすい、などメリットは多い。

反面、multi site Gatewayでのベクターコンストラクションと比べると、形質転換酵母の増殖に2日程度かかり、酵母から抽出したplasmidで再度大腸菌を形質転換するので、大腸菌で最終的なコンストラクトの確認ができるようになるまでに1-2日余計にかかる。・・・なので、プロモーターを数種類入れ替えたコンストラクトのシリーズが短時間にほしいと言うような場合には向かない。

pSU7もpSU23もバクテリア用の抗生物質耐性遺伝子がKmRなので、pCAMBIA1105やpPZP200系のようにSp/Smのベクターには使えないので要注意。

抗生物質耐性等選抜マーカー

Bacteria用

組換え大腸菌と組換えRhizobium を選抜するためのマーカー遺伝子。KmR(KanR)が圧倒的に多いが、 Sp/Sr、Gentもある。sh_bleは見たことがないがおそらくアグロバクテリウムでも使えるだろう。 最終的に形質転換植物には導入されないか、導入されても発現はしない(ベクターバックボーンの宿主植物への組込については別の機会に書く)。

植物用

抗生物質耐性遺伝子ではnptII(KmR), HPT(hyg, HPH) が圧倒的。イネでは主にHPT。 このほか抗生物質耐性遺伝子ではないが、EPSPSやBarが使われることもある。

最近は、OECDの推奨もあって、ALSやPMIなど、抗生物質耐性ではない選抜マーカーも普及し始めている。

(ALS= アセト乳酸合成酵素、PMI= phosphomannose isomerase)

補足

PMIについては近く耐熱性アミラーゼを持った実用品種の第一種使用が始まる見込(OECD IU: SYN-E3272-5)。

ベクターに組み込まれた抗生物質耐性遺伝子をゲノム中から切り出して除去するシステムも実用化されている。 Monsantoの高リシントウモロコシ(OECD UI: REN-OOO38-3)では、 ファージのcre-loxシステムでnptIIを除去している。

T-DNA

植物ゲノムに組み込まれる領域。末端の境界部分にLB (Left Border)、RB(Right Border)と呼ばれる、 不完全な25 bpsの反復配列がある。たとえばこちら(pGWB1)。 このアクセションではT-DNAのfeaturesは詳細に書かれています(逆にバックボーンの情報はありません)。

※ 最低なのはこちら (pPZP200)のアクセション。おいっ!と言いたいくらいfeaturesに何にも書いてない。

その他

植物用のバイナリーベクターはバックボーンだけで10 kbを超えるものも普通。 シーケンスのコストが高かった時代に作られた古い世代のベクターでは、最近までバックボーンの塩基配列情報が無かったものも少なくない。 例えばpBI121のシーケンスが登録されたのが2003年。 長く使われてきた割に、中身は余りよく知られていなかったのだ。まあ、 比較的最近までT-DNA以外の領域は偶発的にしか植物ゲノムに組み込まれないと考えられてきたので、それで問題なかったのだが、 ケーススタディーが積み重なると実はそうでもないことが分かってきた。

また、アグロバクテリウムの形質転換もelectroporationが普通になってきているので、 bomなどtriparental mating (接合)に必要な構成要素がベクターになくても良くなってきている。

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コメント

上記で紹介されている佐賀大学の永野幸生と申します。植物用 binary vectorのことを調べていたら、たまたま、このページを見つけました。
さて、酵母の相同組換え系についてコメントさせていただきます。この系では、複数のDNA断片を同時にプラスミドに高効率でクローニングできるので、「プロモーターを数種類入れ替えたコンストラクトのシリーズ」を作ることは、さほど苦手ではないと思っています。ただ、多断片クローニングに最適な実験条件を決めたのですが、これをまだ発表していないのが問題です。申し訳ありません。
プラスミドサイズが大きい場合、「酵母から抽出したplasmidで再度大腸菌を形質転換する」のが、効率が悪くなります。大きくなりがちな植物用ベクターではここが問題です。まあ、この問題は、エレクトロポーレーションで大腸菌を形質転換すると解決できる場合が多いようです。
「KmR遺伝子にいろんな種類があるので、KmRベクターの一部にしか使えない」ことに気がつかない人がいるようです。

永野様、コメントありがとうございます。
私も、「プロモーターを数種類入れ替えたコンストラクトのシリーズ」作成も、酵母の相同組換えの系では特に難しいとは思いません。ただ、gatewayよりは、今のところちょっと日数がかかるかな、という印象です。実験条件の最適化の論文が出るのを楽しみにしております。

コメントいただいたように、ベクターの抗生物質耐性遺伝子には由来の異なるものや、微妙に欠失変異の入ったものがありますね。ベクターのバックボーンをいじる事は少ないので、あまり関心を持つ方がいないのでしょう。そう言う領域で相同組換えをさせる際には気をつけないといけませんね。

# 先日、故あってInvitrogenのpYES2ベクターのAmpR近傍のシーケンスをしたのですが、公表されている変異型AmpRと違っていたので、市販のベクターでもこういうことがあるのかと驚いた次第。

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