ヨーネ病についてのメモ
毎日新聞、小島さんの以下の記事に関心。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/kiji.jsp?frd=kiji&kiji=2127
参考
http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/fact/12.html
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsp3/index.html
以下、断片的メモ。
ヨーネ病の病原菌は、Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis
属名から言って抗酸菌。学名を見ると、結核菌と同じグループなので、 マクロファージに食べられても消化されないで細胞内の小胞体に住み着いてじわじわ増殖するのではないかと思ったら、やっぱりそうでした。
細胞内寄生するバクテリアには抗生物質はあまり効かないので、治療法もないとのこと。
検査法は、
- 直接鏡検:糞便の直接塗抹標本を抗酸菌染色し、集塊状の抗酸菌を検出する。
- 分離培養:糞便あるいは剖検時の腸管(回盲移行部等)、腸間膜リンパ節などをマイコバクチン添加ハロルド培地で培養する。 灰白色から象牙色のコロニー形成までに2~5ヵ月を必要とする。
- PCR法:糞便中等に存在するヨーネ菌に特異的なDNAを検出する。迅速診断法。
- 血清学的検査としてELISA法、補体結合反応が応用されている。
- ツベルクリン検査と同様な遅延型過敏反応を検出するヨーニン皮内反応が行われる。
- インターフェロン・ガンマ検査も試みられている。
技術的にはこのくらいある。法定の検査法はこちら。 これによると、確定診断には「細菌検査(分離培養)又は牛にあつては初回検査の三十日後(ヨーニン検査を実施していない場合は十四日後) にエライザ法による検査」とある。前者ではコロニー形成まで約2ヶ月必要。後者では早くても14日かかる。しかし、 一次検査でELISA陽性であればヨーニン反応を行うことで四十八時間から七十二時間までの間に確定診断できるとある。
一方、PCRは迅速だが、リアルタイムPCRでないと、反応後に電気泳動が要るので、現場で使うにはちょっと敷居が高い。・・・ とおもったら、栄研化学でLAMP法の検査キットを開発、島津で販売とか。こっちのほうが簡便である。 阻害物質の影響を受けにくいので再現性が高くなることが期待される。
http://www.shimadzu.co.jp/news/press/030226.html
で、その後、売ってるのだろうか。島津のホームページ内の検索では出てこない。どうなってしまったんだろう?
サンプル調製から結果が得られるまで数時間で判定できるので、スクリーニング検査には有効だろう。 キットの特性として擬陽性が出やすいと現場では使いにくいのだが、 スクリーニングで本当に陽性だった場合のみ出荷停止できれば牛乳を大量に無駄にする愚は冒さずに済むかも知れない。
日経バイオテクの記事では、
ヨーネ病の検査は主に2つある。1つは抗体検査で1日から3日で分かる。もう1つは牛のふんを採取して、 そのふんにいるヨーネ菌を培養する検査だ。菌の培養には時間がかかる。この菌培養検査の結果が分かるのは、なんと3カ月から4カ月後だ。 厚生労働省の見解に従うと、検査を始めた3カ月から4カ月後にさかのぼって、すべての牛乳が回収されることになる。
とあるが、もっと早くスクリーニングできれば問題は少ない。バクテリアの性質から言って、 非常に生育が遅いのは仕方ないので平板培養は現実的ではない。一方、法定の検査法によれば、ELISA+ヨーニン反応で確定診断を行う場合、 ELISAでのスクリーニングに2日、ヨーニン反応に3日としても5日のタイムラグで済む。この場合、 小島さんの見解は極端なケースの想定と言うことになる(これはわざとか?)。
ヨーネ病の場合も診断基準に従って診断した結果、初めて患畜と言うことができるはずだ。しかし、国会答弁では、 疑似患畜は食品衛生法で言う「疾病にかかった獣畜」だと取れる回答があった。
ヨーネ病等の疾病にかかった、又はその疑いのある牛の乳については、食品衛生法 (昭和二十二年法律第二百三十三号)第九条第一項において、これを食品として販売し、 又は食品として販売の用に供するために加工等をしてはならないこととされている。
そこで、念のために食品衛生法第9条を調べてみると、 「若しくはその疑いがあり」とあるので、家畜伝染病予防法で言う「患畜」+「疑似患畜」=食品衛生法でいう「疾病にかかった獣畜」 ということなのだろう。法律によって定義が違うのだ。
参議院で面白い議論があったのでリンクしておく。ELISAの擬陽性をどう考えるか、と言う問題だ。
http://www.kami-tomoko.jp/sitsumon/168/071012.htm
http://www.kami-tomoko.jp/sitsumon/168/071015.htm
http://www.kami-tomoko.jp/sitsumon/168/071220-2.htm
議員は確信的にELISAの診断キットに問題あり(擬陽性が非常に出やすい)という見解のようだ。 2chでも話題に上がっている。
http://www.heiwaboke.net/2ch/unkar02.php/science6.2ch.net/nougaku/1192441888
さて真偽や如何。
※ 現行キットはオリジナルの二段階法を簡便化して一段階にしている。 そのために特異性が落ちなければよいのですが・・・。
動衛研のホームページに依ればヨーネ病の感染は、
感染経路は経口感染が主であり、感染母牛から子牛への感染が伝播経路として重要である。 同居牛への水平感染や母牛が重度のヨーネ病に罹患している場合は、胎児への胎盤感染も起こる。
とある。子牛の時期に感染するのであれば搾乳前に複数回ELISAでチェックしておけば、 垂直感染は防げる可能性は高いし、擬陽性の場合のチェックもできるだろう。ただし、同じロットのキットで繰り返し判定するのでは、 キットと動物の両方が疑わしい場合はクロスチェックにならない。要は道具の使い方だ。
スクリーニングで陽性だったから即処分というのは疑問。
Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis とクローン病の関係について示唆する論文が出ているとのこと。要チェックだ。
パン酵母由来のマンナンで試験してるのですが、 マンナン添加量が増えると白血球に取り込まれた大腸菌の生存率が上がるとの論文。ホントかな。こんにゃくってマンナンだったな。 もう少し核心を突いた輪文でないと、まだ信頼できない。
人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント