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2008年5月の記事

2008年5月31日 (土)

見解の相違ってやつ

新聞各社の見出しより。

毎日新聞、5年で所得隠し4億円 東京国税局指摘
日本経済新聞

毎日新聞社4億円所得隠し
MSN産経ニュース

毎日新聞に4億円の所得隠し指摘
朝日新聞

2008/05/30-22:46 毎日新聞社、 4億円所得隠し=東京国税局が指摘
時事通信

毎日新聞、5年間で所得隠し4億円…国税指摘
読売新聞

申告漏れ:毎日新聞社が5年間で約4億5800万円
毎日新聞

見出しの書きぶりが各社違っている。記事内容については、 まず読売新聞を引用しておこう。

毎日新聞、5年間で所得隠し4億円…国税指摘

 毎日新聞社が、取材費などを巡り、 東京国税局から2007年3月期までの5年間で約4億円の所得隠しを指摘されたことがわかった。

 他に単純な経理ミスもあり、申告漏れは総額で約4億5800万円に上り、 重加算税を含めて約1億8100万円を追徴課税(更正処分)された。

 同社によると、経費として処理していた事業推進費や取材費の一部について、課税対象となる「交際費」 と認定された。指摘に従い、全額納付するという。

 毎日新聞社社長室広報担当の話「国税局と見解の相違もあるが、 申告漏れを指摘されたことを真摯(しんし)に受け止めている」
(2008年5月30日22時23分  読売新聞

これが朝日新聞になると、

毎日新聞に4億円の所得隠し指摘

2008年05月30日23時35分

 毎日新聞社が東京国税局の税務調査を受け、 07年3月期までの5年間で約4億5800万円の申告漏れを指摘された、と同社が30日公表した。うち約4億円は仮装隠蔽(いんぺい) があったとして、所得隠しと指摘された模様だ。追徴税額は重加算税などを含め約1億8100万円。

 同社によると、国税局は事業推進費や取材費などとして経費計上された約4億円について、 経費とは認められない交際費に当たると指摘したという。また、 同社の新会計システムの構築に伴って計上したコンサルティング費用の一部について、 経費ではなく資産として計上すべきだと指摘したという。

 毎日新聞社社長室広報担当は「見解の相違もあるが、申告漏れを指摘されたことを真摯(しんし)に受け止め、 今後も適正な経理、税務処理に努める」とコメントしている。

面白いですね。読売新聞の見出しは”所得隠し4億円”と刺激的。 見出しだけ見ると事実として所得隠しがあったように見える。しかし、記事本文を見ると書きぶりは中立的。

一方、朝日新聞は見出しでは「所得隠し指摘」と”指摘の事実”を挙げているが、記事本文では「4億円は仮装隠蔽 (いんぺい)があったとして、所得隠しと指摘された模様だ」と、推定が入っている。同業者に厳しいっていうか、何だか悪意を感じますね。

最後は当事者の毎日新聞の記事で締めましょう。

申告漏れ:毎日新聞社が5年間で約4億5800万円

 毎日新聞社は30日、東京国税局から07年3月期までの5年間で約4億5800万円の申告漏れを指摘され、 重加算税(約4200万円)などを含め約1億8100万円の更正通知(追徴課税)を受けた。毎日新聞社は指摘に従い、全額納付する。

 国税局は、経費処理していた事業推進費や取材費の一部を、課税対象となる交際費と認定した。また、 本社の新会計システム構築に伴うコンサルティング費用の一部を、経費でなく資産に計上すべきだと指摘した。

 ▽毎日新聞社社長室広報担当の話 国税当局と見解の相違もありますが、申告漏れを指摘されたことを真摯 (しんし)に受け止めています。今後も適正な経理、税務処理に努めます。

毎日新聞 2008年5月30日 20時10分

「更正通知(追徴課税)」というあたりが何だか痛々しいですね。”追徴課税” というのはマスコミの用語で行政上はそうは言わない。しかし、新聞社としては、「国税当局と見解の相違もありますが」と言っており、 単なる申告漏れであって意図的な所得隠しではないという姿勢をとっているので、本来懲罰的な追徴をされるいわれは無いのだけど・・・ ということで、正式な行政用語で「更正通知」と書いては見たものの、いつも他人の脱税発覚のときに書いてる「追徴課税」 と書かないと何のことやら伝わらないし、で、仕方が無いので括弧書きにしたというところでしょうか。

潔く「追徴課税」と書けば、余計な詮索をされずに済んだだろうに。

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2008年5月29日 (木)

スナックで予防接種?

なんとコメントしたものか困ってしまいます。

ワクチンを常連客に無断接種、准看護師のスナックママ逮捕

 千葉県警環境犯罪課などは29日、准看護師でスナック経営の千葉市中央区、国吉みち子容疑者(56) を保健師助産師看護師法違反の疑いで逮捕した。

 捜査関係者によると、国吉容疑者は昨年11~12月、 勤務する千葉県佐倉市の病院から注射器とインフルエンザのワクチンを持ち出し、自身が経営する千葉市中央区のスナック店内で、 医師の管理下にないまま常連の男性客3人に接種した疑い。

 県警によると、国吉容疑者は「サービスのつもりで自分から持ちかけた」と供述しており、 一般より安くインフルエンザの予防接種をしていた。客に健康被害は出ていないという。

(2008年5月29日14時54分  読売新聞)
保健師助産師看護師法違反の疑いと言いますが、スナックでの注射は准看護師の資格の下で行った行為ではないのですから、 医師法第17条違反ではないのでしょうか。代金も取っていたので医業であろうし、 病院で医師の監督下にない医療行為を行ったのとは違うのですから。あと、「病院から注射器とインフルエンザのワクチンを持ち出し」 っていうのは、窃盗ですね。ひょっとしたら医療廃棄物である注射器を産業廃棄物処理法違反に当たる方法で廃棄していたかもしれません。
スナックのお品書きに「インフルエンザHAワクチン『北研』(一人前)・・・時価」 なんて書かれていたんでしょうか。注射したときはナースの衣装だったんでしょうか。コスプレかどうか微妙な感じですが。 ちょっと気になります。
それから、スナックで注射される客っていうのも意味不明です。
このニュースに関わる、とある会話。
D「スナック経営の准看護師がお店で注射していたっていうニュース知ってる?」
K「うん、インシュリン注射でしょ?」
D「・・・イン、ってところと、注射っていうところだけ当たってる。でも、 インフルエンザの予防接種だから。 別に糖尿病のお客さんにインシュリンを注射しながらお酒を飲ませていたって話じゃないから。 それ、かなり危ないし。」
ええ・・・とんでもないニュースですが、またとんでもない勘違いをする人が居たもんです。
# こんなニュースに反応してしまうとは。Media Doctorへの道は遠い。
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2008年5月28日 (水)

メディア・ドクター

今日知った言葉”media doctor”。毎日新聞の小島さんの日経Food Scienceの記事によれば、「健康・医療(?) 報道をドクターのごとく診断・評価する活動である。」だ、そうである。

http://www.mediadoctor.org.au/

(オーストラリア)

”media doctor”の診断、評価の基準を知りたいものだ。何がしかの統一的な評価基準があるのであれば。逆に、 新聞社がどんな基準で記事を書くのかも。また、健康に関する報道でなくても、 例えば科学技術に関する報道でもどんな基準で書くのかを知りたい。

で、両者の基準に沿って、それぞれの記事を評価してみたいものだ。

私がリスク報道、科学報道に接したときの評価基準は概ね次の通り。

  1. 新規性は伝わっているか?
  2. 事実を伝えているいるか。事実と違う情報を伝えていないか。
  3. 分かりやすく要約しているか。分かりやすく要約するために肝心な事実を切り捨てていないか?
  4. リスク報道では、リスクベネフィットのバランスが取れているか?
  5. 科学報道では、一次情報を的確な切り口で伝えているか?

マスコミの報道は大抵、無責任だ。責任を負う立場には無いし、誤った報道をしてもそもそも責任を取る能力が根本的に欠けているのだ。 誤報に対しても社告を出す訳でなし、名誉毀損で訴えられてもたいしたニュースにはならないし、 訴訟の結果を受けても一遍広く知れ渡ってしまった誤報を根本から白紙に戻すことはできないのだ。

こんなブログでも毎日100人近くの方々が読んでいる。おかしな切り口や、極端なバイアスのかかった報道に対しては、 今後ともささやかな抵抗を試みて行きたい。

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2008年5月27日 (火)

[業務用覚書] Sz.pombe用発現ベクター

実験に関する覚え書きなので、素人さんにはきわめて不親切な書きぶりです。読み手のことはちっとも考えてませんので、 分裂酵母にも出芽酵母にも興味のない方はスルーしてください。

 


 

Saccharomyces cerevisiaeSchizosaccharomyces pombe では材料にしている研究者があまり重ならないのだろうか。ベクターも結構種類が違っていて、S. cereviseae 用のバイナリー・ベクターがとS. pombe でも使えるかどうか分からなかった。

そこで、NBRP酵母のデータベースでS. pombe用発現ベクターを調べてみると、 pYES2をバックボーンにしたものがあった(たとえばこんなの) 。で、論文を調べてみるとS. cereviseaeSEC14Spo20で相補するという実験で、 ホストはS. cereviseae だった。がっかり。

結局、Gal1pや2μm oriはS. pombe では働くかないのかな。Siam et al. (2004)によれば、2μm oriはS. pombe では不安定とのこと。

# このレビューは、 分裂酵母で使えるベクターの複製開始点、選抜マーカー、プロモーターについて一覧的にまとめてあるので便利。

ならば、手持ちのS. cereviseae 用のバイナリー・ベクターではなく、最初からS. pombe専用の発現ベクターを使った方が早い。NBRPのプロモーターのバリエーションは、

  • nmt41(73) : nmt1*, nmt1+の変異型、中庸の発現程度。
  • nmt1 (33): nmt1+, "No message in thiamine"の略。強発現、 チアミン15 μMで抑制(誘導型)。発現誘導にはチアミンの除去後16-20時間かかる。最少培地が必要。
  • nmt81 (26) : nmt1**, nmt1+の変異型、弱い。
  • ADH1 (23)
  • CMV ( 1) :  human cytomegalovirusのプロモーター。 核酸供与体の実験分類はクラス2。
  • GAP1 ( 1), GAL1(3) : これは出芽酵母用だろう。

となっている。

理研のpDUALのシリーズもが便利そうだ。 これはnmt1, 41, 81をシリーズで揃えていて、5'側あるいは3'側のGFPと、ゲートウエイのattR1,R2を持っている。 しかもエピゾーム型でも染色体組込型でも使える。選抜マーカーはura4。 +NBRPで配布しているベクターよりもかなり洗練されている。(市販のベクターより安いですが、分譲の際のお値段もそれなりです。 )

とりあえず、ura4-S. pombeの菌株が必要なので、 お試し用の発現ベクターと一緒に、課金される前にNBRPから入手しておこう。

ここまで書いて日本語のサイトを探したら、もっときちんとまとめた先達がいらっしゃいましたのでとりあえずリンク。 こういう情報を先に見ておけば良かった。

さて、S. pombe では相同組換えの効率、 相同組換えに必要な領域の長さなどについての論文があるのだろうか。調べてみよう。kanMXカセットによるS. pombe の形質転換は普通に使われるようなので、それほど長い領域は必要なさそうですが。

これS. pombe のPCR mediated gene disruptionの論文。Sh bleも使っています。サイズが小さくて(375 bp)良いのですが、 いかんせん耐性が現れるまでに時間がかかるのと高塩濃度の培地、低pHの培地(pHが7を切る)ようだと、 pheleomycinの効きが悪くなるので、大腸菌でAmpを使う場合よりもちょっとだけ面倒です。ちなみに、 pTEFでドライブしてます。

蘊蓄を一つ。 pheleomycinは細胞のDNAを二重鎖切断して殺すタイプの抗生物質。Sh ble の産生するタンパク質は、抗生物質と1対1結合して失活させることで耐性を発現させるタイプ。従って、 十分量のタンパク質が細胞内に蓄積していないと、組換え体が死んでしまいます。

これに対して、アンピシリン、 G418などβラクタム系の抗生物質は細胞壁の合成阻害なので、直接的に菌を殺す作用はありません。 βラクタマーゼは酵素ですから、 分裂阻害がかかって細胞が分裂しない間に、じんわり発現して酵素活性を発揮します。 酵素なので1分子のタンパク質が相当数の基質のアンピシリンやG418を分解できます。なので、 大腸菌のヒートショック直後にAmpプレートに撒いてもコロニーは生えてきます。

ちなみに、Sh bleを使ったベクターでS. cereviseae の形質転換をする場合、形質転換操作の後、最低でも30度で2時間、横着する場合は4-15度で一晩放置(S. cereviseae はこの状態であまり分裂はしませんが、タンパク質はそこそこ作ります) してから選抜した方が効率は良いですね。

さて肝心の相同組換えに必要なDNA断片の長さですが、この論文では肝心の所はgene spesific primerとしか書いていないので、Bahler et al (1998)を見ないと分かりません。これによると、"The PCR primers included 60 to 80 bp of flanking sequences homologous to target sequences in the genome."だそうで、S. cereviseae の40 bpよりかなり長い。 プライマーの合成も時間がかかるし高い。多少の手間を惜しまなければ、fusion PCRかS. cereviseae の相同組換えの方がましですね。

もっと最近の論文を見てみると、2006年の論文でこういうのもある。 便利そう。だが、デフォルトのtarget sequenceは80 bpもある!となると、 相同組換えでベクターのコンストラクションをするにはS. cereviseae の方が向いていることになる。

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2008年5月26日 (月)

新型インフルエンザ対策に一石

バキュロウイルスとSf9細胞の組み合わせでしょう。 リコンビナントのコンポーネントワクチンの登場です。朝日新聞より。

インフルエンザワクチン、製造期間短縮へ 大流行に備え

2008年05月26日19時41分

 新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)に備えて、ワクチンの製造期間を短縮する臨床試験を、 創薬ベンチャー企業の「UMNファーマ」(本社、 秋田市)が近く始める。米企業の技術を使い、期間を3分の1にするための技術開発で、同社は26日、 工場用地を市内に取得したと発表した。

 従来の製造は、ワクチン株を弱毒化して鶏の有精卵で培養して増やす。ただ、1人分のワクチンを作るのに卵2個以上が必要で、 時間もかかることから、「パンデミックのような非常時に確保できるのか」と疑問視されている。

 ファーマ社が取り組むのは、ワクチンづくりに必要なウイルスの遺伝子を、昆虫(ヨトウガ)の細胞に組み込んで培養する技術。 従来の実験で使う哺乳(ほにゅう)類の細胞よりも増やしやすいのが利点。有精卵の準備やウイルス株を弱毒化する工程が省け、 流行しているウイルスを使ってすぐにワクチンを作ることができる。製造期間は従来の半年から2カ月に短くできるという。

 独立行政法人医薬品医療機器総合機構の調査期間が終了したため、 6月中旬から20~40歳の男性125人を対象に世界で流行している鳥インフルエンザウイルス(H5N1) に対するワクチンを使った臨床試験を始める。

対象が男性だけ、しかも老人や子供は含まないので、通常のphase1の色彩も強いですが、phase 1+2という感じで、ドーズを変えてワクチンを接種し、抗体価も一応は見ると言うところかな。

しかし、コンポーネントワクチンであるからには泣き所はあります。 流行の中心がワクチン製造に使った抗原とよく似たウイルスでないと効かない。また、製造期間がたとえ1ヶ月になっても、 パンデミックが起こってからではまず間に合わない。というか、 どんなインフルエンザワクチンでも効果が発揮されるには2週間ほどかかるのだから当面の対応としては、 タミフルやリレンザに頼るほか無いでしょう。

むしろ、昆虫細胞培養系のメリットは、人に対する病原体を含む潜在的なリスクが低いところと、 培養のスペース効率が良いところでしょう。精製の際の手間がどうなのかは判断できません。また、リコンビナントなりに、 GMPで生産する際の難しい点もあるでしょう。ベクターの調製もGMP、 ウイルスベクター構築後に抗原のシーケンスを確認するのはGLPと言う案配になると、生産に取りかかるまでのハードルも相当高いので、 WHOの差配で配布されたモックアップ用の組換え弱毒ウイルスでワクチンを製造するよりも、最初は手間がかかるかもしれません。

しかし、ワクチンの効果は抗原だけで決まるものではありません。効率よく効かせるにはアジュバントも大切です。 グラクソ・ スミスクラインのように、アジュバントを工夫すると接種する抗原の量を相当量減らせるので、 今般のケースのように抗原の量の確保が難しい場合には非常に有効です。

# なんとかならないのかな? → このblogをご覧になっているであろうデンカ生研さんとか。

 

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2008年5月24日 (土)

医薬品や医療機器の開発を国が主導?

読売新聞より。

医薬品・機器の研究強化で自民党素案、司令塔機関の新設盛る

2008年5月21日(水)19:55

 医薬品や医療機器の開発など、国民の健康にかかわる分野の研究体制や行政の在り方を検討する自民党の 「健康研究推進プロジェクトチーム」(座長=塩谷立衆院議員)は21日、海外に比べて弱いとされる、 この分野の研究体制を強化するための素案をまとめた。

 各省ごとに分かれている国の健康関連分野の研究費を一元的に管理する司令塔的な機関を新設し、 5年後の関連予算を5倍に増額することなどが柱。新機関で来年度予算案の編成を担えるよう、政府・ 与党は今夏までに設置する方向で調整している。

 素案によると、新設機関の名称は「健康研究推進会議」(仮称)。国際競争力を高めるため、 健康関連分野のどこに力点を置くかを検討し、各省バラバラの研究費を一元管理し、重点配分する。関連予算を100億円(今年度) から500億円に増額することも盛り込んだ。

 新組織については内閣府の下に設置する案が浮上しているが、同府と厚生労働、文部科学、 経済産業の4府省が中心となって運営体制を検討している。

研究と開発は違います。区別が付いていないのは議員の先生か新聞記者か。規制行政(ブレーキ)は厚労省、 振興行政(アクセル)は内閣府という図式か。

これまで医薬品・医療機器の開発(製品化)は民間主導で行われてきている。製造販売も申請主義だ。 そこに国の関与が大きくなると、薬害発生の際にも国の負うべき責任が大きくなる。

私の所属する独法では、医薬品原材料を目指したコメやカイコ、臓器移植医療用のブタなど、医薬品・ 医療機器としての実用化を指向した研究と開発が行われている。その研究予算の少なからぬ部分は農水省から来ている。 「各省バラバラの研究費を一元管理し、重点配分する」と言うことであれば今後の研究予算にも影響する可能性が大きい。

さあ、どうなる?

 

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2008年5月22日 (木)

クロロピクリン(あるいはクロルピクリン)

熊本の赤十字病院にて。朝日新聞より。

嘔吐物ガス 防毒マスクなしで治療、薬物特定は2時間後

2008年05月22日15時02分

 熊本市の熊本赤十字病院で、救急患者が吐いた農薬の成分で54人が異状を訴えた。原因とみられるクロロピクリンは、 畑で使う際にも土で覆うなどの注意が必要な農薬という。断片的な情報で病院側も薬物が特定できず、防毒マスクなどを着けずに治療に臨み、 被害が広がった。

 「農薬を飲んだ患者を収容してほしい。自殺目的のようです」。21日午後10時30分ごろ、菊池広域連合西消防署から、 熊本赤十字病院へ連絡が入った。

 現場の合志市内から同病院まで約20分。救急車内では男性の服を脱がせて体を水で洗い、 水を飲ませて薬物の一部を吐かせるなどの処置をしたという。だが当初、薬物が特定できず、医師・ 看護師は防毒マスクなどは着けていなかったという。

 午後10時50分ごろ、救急車が病院に到着。救命救急センターに横付けされ、男性は担架ごと同センター内の処置室に運ばれた。 意識はあったが言葉は話せない状態だった。

 体内から薬物を取り除くため、鼻からチューブを挿入し、胃の内容物を一部吸引した後、男性は突然吐き、意識を失った。 強い塩素系の刺激臭が周囲に広がり、医師らも「目が痛い」「息が苦しい」と訴えた。当時、センターには外来患者や付き添い十数人、医師、 看護師ら約30人がいたが、異臭は一気に広がり、待合室にいた患者らも次々と不調を訴えた。

 ■毒性高いクロロピクリン

 クロロピクリンは常温で気化するため、国内で確認されている中毒事故の大半はガス吸入が原因だ。 空気よりも重いために拡散せずに滞留しやすく、今回のように集団発症する事例も多いという。

 業界団体クロルピクリン工業会(東京)によると、強い刺激臭のため顔を近づけただけで咳(せ) き込んだり目の痛みを感じたりする物質。吸い込んだだけで死に至る可能性もあるほど毒性が強い。

 一方で農作業で比較的よく使われる殺虫剤のため、誤吸入する例は後を絶たない。工業会は全国の医療施設に「ガスが漏れた場合は、 すぐに換気を」と呼びかけている。

 しかし、「病院の救命救急センターの多くは窓がなく、換気はできない」と、 熊本赤十字病院での勤務歴を持つ横須賀市立うわまち病院の本多英喜・救急総合診療部長は指摘する。レントゲン機を使うことがあるため、 すべての壁をコンクリートにする必要があるからという。

 「救急の現場では、搬送前に十分な情報を得ることは難しく、今回のようなケースが再発することは十分に考えられる。それ以前に、 強い毒性がありながら農村部では土壌や倉庫の燻蒸(くんじょう)に広く使われる農薬なのだから、 使用者に危険性を周知することが必要ではないか」と話している。

かつて私が住んでいたあたりで起きた痛ましい事故です。

さて、この記事のおかしな点。

  1. 「畑で使う際にも土で覆うなどの注意が必要」とあるが、クロロピクリンで土壌消毒をする際に土壌表面をマルチ資材等で覆うのは、 安全のためだけではない。消毒剤の大気中への放出を押さえて、少ない薬剤で効果を発揮させる事にある。
  2. 見出し「薬物特定は2時間後」とあるが、胃洗浄開始直後の吐瀉物による被害を避ける為には、 換気の良い場所で処置を行うほか無い。となると、処置の前に薬物を特定できていなければならない。これは非常に難しい。 処置前に分からないのであれば、2時間後だろうが2週間後だろうが関係ない。事の本質とは関係ない見出しだ。
  3. 意図的な服用と、偶発的な吸入の区別が付いていない。自殺が疑われるケースと一般の吸引事故を同列に扱うと対策に失敗する。 (新聞社は対策には関係ないけどね)
  4. とんちんかんなコメント。「使用者に危険性を周知することが必要ではないか」とあるが、 危険性を承知していたので服毒自殺を図ったのでしょ?何を言ってるんだか。

他の記事にもすごいのがある。FNNのコメント。

「通常は毒物を飲んだら吐かせるというのが原則だが、クロルピクリンの安全使用上の注意には、 『誤って飲み込んだ場合には吐かせないようにしましょう』となっている。個室、独立した部屋で本当はやりたいんだけど、 医者さんはガスマスクが必要になる」

安全上の注意には確かにそうある。 応急処置で吐かせると今回のような事態になる。でも吐かせないと患者は死にます。病院での処置は換気や無毒化(できれば) しながら胃洗浄するほかないでしょう。引用の仕方が場違い。ちなみに、クロロピクリンのMSDSシートはこちら

液状のクロロピクリンの毒性よりも、 気体の方が毒性は強いらしい。毒性の作用部位が呼吸器と言うことでしょう。毒性の評価はこちら

馬鹿な模倣犯が出なければよいが。

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2008年5月21日 (水)

クローン家畜由来製品のラベル

5/19 「体細胞クローン家畜由来食品に関する説明会」が開催された。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/080417-1.html

日経FoodScienceによれば、「体細胞クローン家畜由来食品の安全性が認められた場合、 表示義務化を要望するとの声が複数の消費者団体から上がった。」とある。

本質的に違いがないために技術的に区別できないものを、人為的に区別することは、科学的ではない。しかし、 生産履歴などで追跡してクローン技術を使用していないことを確認できるものについては、表示は可能だろう。

遺伝子組換え作物の「使用していません」表示と同じようなルールで、たとえば、「クローン技術を利用した家畜、 あるいはその後代に由来する製品ではありません」という表示だ。家畜の家系管理ができている場合には技術的には可能だ。 これに違反した場合は罰則を設けるというやりかたなら表示を義務づけても混乱は少ないだろう。

逆に、クローン技術を積極的に利用する場面はどのような状況かを考えてみると、 畜群(herd)として優良な遺伝子型の個体頻度を上げたい場合が、それにあたるだろう。 和牛など家系の管理がしっかりした家畜の場合がそれで、この場合は「たまたま」 クローン家畜の後代が紛れ込むということはまず起きないはずだ。この場合は、堂々と「クローン技術を利用した家畜の後代に由来する製品です」 と書くべきで、もし表示しておきながらクローン家畜の後代でなかった場合には「優良誤認」を招くことになるだろう。

しかし、なんでそんなに区別したいのかな。イスラム教の肉のハラールと似たようなもの?

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2008年5月19日 (月)

鯨のその後

今日のエントリーは予想のみ。5/19 毎日新聞より。

 

鯨肉持ち出し:調査船会社が「無断」否定 乗組員の土産用

 調査捕鯨船の乗組員が鯨肉を持ち出したと環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(GP)が指摘していることを巡り、     水産庁から調査捕鯨を委託された「共同船舶」(東京都中央区)は、社内調査の中間報告をまとめた。GPに「証拠品」     と訴えられた23.5キロの鯨肉について無断で持ち出したものではないとして、近く水産庁に報告する。    

 同社によると、北海道函館市の乗組員(51)が、共同船舶から土産として渡された鯨肉に、     同僚3人から譲ってもらった肉を加え2箱に分けて自宅に配送。このうち1箱がGP側に渡ったことを確認した。配送会社は、     この1箱について「盗まれた」として被害届を出している。

 共同船舶は乗組員に1人約10キロの鯨肉を土産とするほか、3.2キロまでの購入を認めている。【奥山智己】  

この共同船舶の調査報告を受けて、水産庁が調査結果を信ずるに足ると判断した場合でも、 業務上横領は親告罪ではないので、検察は告発を受けて捜査することになるのだろうか。一方で、GPの”証拠物件” の方は入手手段が違法であるため、おそらく証拠能力は無いだろう。しかし、 証拠能力が無いかどうかは入手経緯等を調査の上で判断するべきことだ。となると、とりあえず捜査を開始して、 捜査上で証拠物件と見なされたもののみ、証拠物件として採用するのだろうか。

同じく毎日新聞より。

 

調査捕鯨:横領告発問題 「鯨肉入り箱盗まれた」 西濃運輸が被害届

 日本の調査捕鯨船「日新丸」の乗組員が鯨肉を持ち出したとして、環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」     が乗組員ら12人を業務上横領の疑いで東京地検に告発した問題で、西濃運輸(岐阜県大垣市)が16日、     鯨肉の入った段ボール箱1箱を宅配中に盗まれたとして、青森県警青森署に被害届を出した。同署は窃盗容疑で捜査している。

 ◇グリーンピース「証拠確保目的」

  グリーンピース・ジャパンによると、段ボール箱は4月16日に西濃運輸青森支店(青森市)     の荷降ろし所に入り込み入手したという。星川淳・事務局長は「証拠品確保のためにはこの方法しかなかった。     ご迷惑がかかったらおわびしたい」と話した。    

 西濃運輸は「捜査の行方を見守りたい」とコメントした。【矢澤秀範】

毎日新聞 2008年5月17日 東京朝刊

 

被害届が出ているので、警察はまずは”紛失”の事実関係を調査することになる。同時に、GPが地検に提出した” 証拠物件”を調査し、それが被害届の一件と同一物であれば、GPに対し事情聴取、場合によっては容疑者を逮捕となる。その後、 GPの組織的犯行か、一部の過激分子の犯行かが明らかにされるだろう。

 


 

しかし、GPの弁、「ご迷惑がかかったらおわびしたい」は無いな。 GPは捕鯨とは何の関係もない事業者から顧客の預かりものを盗ったのだから、その結果、運送会社は管理責任を問われることになるのだ。 西濃運輸は間違いなく迷惑している。せめて、 「西濃運輸に対してはご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします」という態度をとるのが妥当だろう。

今回の一件は反社会的な行動として厳しく指弾されることになる。組織が不祥事をおこした際には、 謝って然るべきところで、まずはきちんと謝るべき相手に対して謝っておかないと、ますます社会的信用が無くなる。

これを機に、そろそろ反捕鯨は止めてはどうでしょう。日本では反捕鯨活動はたいしてお金になりません。

# ひょっとして、GP組織内の反捕鯨分子一掃のための自作自演か!?

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2008年5月17日 (土)

ビタミンCの安全性!?

食品安全委員会では、

「食品衛生法(昭和22年法律第233号)第11条第3項の規定に基づき、 人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質」

として、アスコルビン酸(化学に疎い方のために。ビタミンCのことです)の評価を行い、第237 回食品安全委員会でその評価結果を報告した。現在パブコメ中。

この、「食品衛生法(昭和22年法律第233号)第11条第3項の規定に基づき、 人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質」というものが、 日本で定められていると言うことを私は知らなかった。食品安全の専門家ではないので公言してしまいます。

「第11条第3項の規定」の経緯について調べてみると、

  • 食品衛生法第11条第3項の改正: 平成15年
  • 同、施行:平成18年5月29日
  • 食品衛生法第11条第3項の規定により人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質を定める件 (平成17年厚生労働省告示第498号。以下「対象外物質告示」という。)

残留農薬のポジティブリスト規制への移行と同じタイミング。で、この「対象外物質告示」では、

対象外物質は、一般に使用されている農薬等及びその物質が化学的に変化して生成した物質のうち、その残留の状態や程度などからみて、 農畜水産物にある程度残留したとしても、人の健康を損なうおそれがないことが明らかであるものを定めることとする。
厚生労働省が平成17年11月29日付けで告示した対象外物質は、65物質となっている。

となっている。要するに、 安全性に鑑みて残留農薬の安全性評価対象から外して差し支えないもののポジティブリストなのですね。しかし、だとすると何で今更” アスコルビン酸”なのか?ビタミンCって自然な状態で食品に含まれていない物質なのか?(・・・そんなことはないんですが。)

審議のお座敷を見ると”動物用医薬品及び肥料・飼料等専門調査会における審議状況について”とあります。つまり、 家畜のビタミンC欠乏症の予防薬・治療薬として施用されたビタミンCの残留問題に対応したものということ。やれやれ。

ちなみに、ビタミンCは水溶性ビタミンなので、 過剰摂取しても脂肪層に蓄積して障害を起こすことはないと言われています(ちなみに脂溶性ビタミン例えば、 ビタミンAは過剰摂取で健康を損なうことがある)。しかし、有機酸なので非常識な量を摂取 (サプリメントのタブレットを大量にボリボリ食べるとか)すると何らかの障害は起きる可も知れない。また、市販のビタミンC製剤は、 カリウム塩、ナトリウム塩あるいはカルシウム塩などの塩なので、特にナトリウム塩の場合は、 高血圧や腎臓障害のある方には悪影響があるおそれはあります。常識的な量を超えて摂取しても良いことはありません。お金の無駄です。

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2008年5月16日 (金)

「あへん法」規制対象のケシを下妻市が違法に栽培

ビスフェノールAのせいで書き損なっていたエントリー。

うっかりとはいえ、やってしまいましたね。意地の悪いタイトルを付けてしまいましたが、時々新聞はわざわざこんな見出しを付けます。 以下、朝日新聞より。

ポピーの花畑… ケシでした あわてて焼却 茨城の河川敷

2008年05月14日02時02分

 ポピーの花畑をつくろうと種をまき育ててみたら、ケシだった――。茨城県下妻市などが主催して24日から始まる 「小貝川フラワーフェスティバル」会場に、法律で栽培が禁じられているアツミゲシがあることが13日分かり、 市職員とボランティアら約100人があわてて手で抜き、焼却処分にした。  市によると、 ケシは河川敷の約1ヘクタールにわたり咲いていた。ポピーの花の色は赤で、アツミゲシは薄紫。形状はよく似ているため、 花が咲かないと区別ができないという。

 ケシの種は、市が昨年10月に購入した3種類のポピーの種に紛れ込み、ボランティアら400人がまいた。 ケシだと気付いたのは下妻警察署。「麻薬と知らずに育ててしまった」ため、犯罪性なしと判断された。

 フェスティバルは21年目で、昨年は15万人が来場。ポピー500万本が咲き乱れる花畑を売り物にしている。

法律の規制対象になっているケシには数種類ある。含まれているアヘンアルカロイドの種類によって規制法が異なる (モルヒネ:あへん法、テバイン:麻薬及び向精神薬取締法)。

(参考) http://www.tokyo-eiken.go.jp/plant/keshi-miwakekata.html

今回、イベントのために誤って植えられてしまった”アツミゲシ” (Papavar setigerum)はモルヒネを含むため、あへん法で栽培が規制されているとのこと。 あへん法のリンクはこちら。

(参考) http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO071.html

見ようによっては面白い法律です。

第一条  この法律は、医療及び学術研究の用に供するあへんの供給の適正を図るため、国があへんの輸入、輸出、収納及び売渡を行い、 あわせて、けしの栽培並びにあへん及びけしがらの譲渡、譲受、所持等について必要な取締を行うことを目的とする。

(国の独占権)

第二条  あへんの輸入、輸出、 けし耕作者及び甲種研究栽培者からの一手買取並びに麻薬製造業者及び麻薬研究施設の設置者への売渡の権能は、国に専属する。

アヘンアルカロイド自体は医療に欠かせない物質なので、危険性を理由に単に規制するだけでなく、 国の厳格な統制下に置くこととしています。・・・なので、その辺にアヘンアルカロイドを含む植物が自由に栽培されては困るわけですね。
それから、あへん法には特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律のような 「防除」の規定がありません。それは、大抵の規制法同様、人間の行為を規制する法律だから。
 
となると、保健所による防除などの行為の法的根拠はどうなってるんだろう。
 
ちょっと気になるのは、憶測ですが、国立大学が国の機関であった間は、法人格は国なので、 薬学部などでケシを栽培する際にも栽培者としての登録は要らなかったのではないでしょうか。どうなんでしょう。 手抜かりは、 無いでしょうね。
 
独立行政法人は、栽培者として国のコントロールの元に置かれることになるはずなので。
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2008年5月15日 (木)

で、その証拠物件は合法的に入手したんだよね

朝日新聞より。目的のためでも手段は選びましょう。

 

鯨肉持ち出し疑惑、「証拠品」   示す グリーンピース

2008年05月15日12時08分

 日本の調査捕鯨で捕られた鯨肉を乗組員が無断で持ち出している疑惑について、環境NGO「グリーンピース(GP)・     ジャパン」が15日、東京都内で記者会見した。船から配送されたという段ボール箱に入った塩漬けの肉を「証拠品」として示し、     疑惑解明や調査捕鯨の見直しを訴えた。同日午後、乗組員ら12人を業務上横領の疑いで東京地検に告発する。

 GPによると、箱に入っていた鯨肉はベーコンの原料になるウネスと呼ばれる部分で23.5キロ。     市価で11万~35万円相当という。星川淳事務局長は会見で、「調査捕鯨には税金も使われている。日本の信頼にかかわる問題で、     政府は徹底して真相解明する必要がある」と話した。また、水産庁に対し、     調査捕鯨を実施している財団法人日本鯨類研究所などの調査捕鯨許可を停止するよう求める文書を送ったという。

 GPが確認した箱は、4月15日に東京に帰港した船から降ろされた荷物の一部。GPは調査捕鯨船・日新丸の元乗組員から     「乗組員が鯨肉を私的に持ち帰っている」との情報提供を受けて調査しており、同日、     船から出された荷物を積んだ運送会社のトラックを追跡。配送所などで「塩物」などと書かれた伝票と乗組員の名簿を照合し、     12人の名前を47箱で確認。うち1箱を無断で持ち帰ったという。

 一方、日本鯨類研究所は、乗組員に赤身とウネスを数キロずつ土産として配ることは認めているが、     「乗組員が何十キロものウネスを持ち出すことはまず無理だ」としている。

 私の読み方が間違っていなければ「うち1箱を無断で持ち帰ったという。 」というのは、 荷物を発送した方の許可を得ずに持ち帰ったと言う風に読めるのですが、他人の所有物を本人に断り無く収去する行為は、 法的な裏付けがない場合、窃盗に当たるのでは無いかと思います。思い過ごしでしょうか。また、鯨肉の入手が仮に合法的でないのであれば、 違法な手段で入手した物品に証拠能力はないはず(しかも、鯨肉を手袋をせずに素手で持っているし。証拠物件の扱い方とは思えません)。

 横領を摘発するのは、基本的には警察の仕事。国から捜査権限が認められているので、 裁判所の発行する捜査令状に基づいて私有地への立ち入りや、証拠物件の収去など私権の制限に当たる行為ができるのだと思っていました。 今回の一件には、違法性阻却事由に当たるほどの事情はないと思われます。 グリーンピースはシーシェパードと違って違法行為には手を染めないと思っていましたが、全く残念なことです。法治国家である我が国で、 こんなやり方で国民の支持を得られると思っているのだとしたら、日本国民に対す侮辱です。

 私と同様の感想をお持ちの方もいらっしゃます。

http://blogs.yahoo.co.jp/mozomozo27/20206970.html

http://blogs.yahoo.co.jp/bietaro/54242693.html

http://kaito5ex.blogspot.com/2008/05/blog-post_9522.html

http://ameblo.jp/tikyuusaisei48dengeki/entry-10097026242.html

 「目的のためなら手段は選ばない」という言い回しがありますが、 今回の一件はGPの傍若無人さを明らかにしたものと言えるでしょう。検察の今後の対応に注目しましょう。

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2008年5月14日 (水)

ビスフェノールAの安全性に懸念?

5/14 朝のNHKニュースより

プラスチックなどの原料として使われる「ビスフェノールA」という化学物質が、   乳幼児に対しては現在の安全基準より少ない量でも生殖機能を乱す可能性があることを、厚生労働省の研究班が実験で確認し、基準の見直しが必要だと指摘しています。

ビスフェノールAは、体に入ると女性ホルモンに似た働きをする、いわゆる環境ホルモンとして知られていますが、微量の場合、人体にはほとんど影響がないとされていました。国立医薬品食品衛生研究所などの研究グループは、妊娠したねずみに、1日にとっても安全とされる基準の10分の1の量のビスフェノールAを与え、生まれてきた子どもの成長を観察しました。その結果、ねずみの子どもは当初、正常に成長しましたが、生後7か月目になって、発情期の間隔が乱れるなどの異常が見られたということです。厚生労働省によりますと、ビスフェノールAはプラスチック製のほ乳瓶の材料で、環境ホルモンが問題になった10年ほど前から国産のものにはあまり使われなくなりましたが、現在でも輸入品を中心に含まれているものがあるということです。実験を行った国立医薬品食品衛生研究所毒性部の菅野純部長は「乳幼児に対しては、かなり少ない量で影響が出る可能性のあることが確認できたので、現在の安全基準を見直す必要があるのでは」 と話しています。

なんだか混乱した報道です。

「微量の場合、人体にはほとんど影響がないとされていました。」

「ねずみの子どもは当初、正常に成長しましたが、生後7か月目になって、   発情期の間隔が乱れるなどの異常が見られたということです。」

↓ 

「乳幼児に対しては、かなり少ない量で影響が出る可能性のあることが確認できたので、現在の安全基準を見直す必要があるのでは」

リスク・ベネフィットを秤にかけた予防的措置は行政的にはあって然るべきですが、科学者としては、まず、 通説と違う現象が観察されたら実験の再現性のトレースが先でしょう。科学的に確認できれば論文になります。 論文が批判に耐えられるものであれば、科学的事実になるでしょう。今のところ、「環境ホルモンの低用量効果」 については疑問視されているところですので、 毒性の専門家である国立医薬品食品衛生研究所毒性部の論文が出ればインパクトは小さくはないでしょう。展開に期待します。

しかし、実験結果では「生後7か月目になって、発情期の間隔が乱れるなどの異常」とのことですが、これをして、 「乳幼児に対しては、かなり少ない量で影響が出る可能性のあることが確認できた」と言う判断に結びつくのが私にはよく分かりません。

判断できない理由は次の通り。私は植物科学が専門分野ですので動物の種間の相対成長についてはほとんど知識がありません。ヒトの性的成熟がラットとはタイムコースが大きく異なります。7ヶ月齢のラットには発情期がある訳で、ヒトの生後7ヶ月の乳児とは相当に違います。つまり、ヒトの場合、乳から主たる栄養をとっていた期間から、 生殖線が機能し始めて繁殖可能になるまでの期間が非常に長いので、乳幼児期に摂取した物質の影響が長い成長期間を通じて残るかどうかはわかりません。

また、「発情期の間隔が乱れる」という現象が、即ち何らかのリスクを意味する、ということかどうかも。

一方、今日の日経Food Scienceの畝山さんの記事”「環境ホルモン」 問題はどうなった?ビスフェノールAの評価を巡る世界の動向「その1」”が同じタイミングで出てきた。どうなってるのかな。

ともあれ、何らかの影響があるということと、その影響が持つリスクの多少、行政的な規制については、 それぞれのステップできちんと考えるべきことで、何らかのリスクがあったから即、規制強化という考えには立つべきではありません。

(私は、ポリカーボネート製のほ乳瓶がどうのと言うことには関心はありません。しかし、ビスフェノールAに代わる代替物質がない産業分野に規制の影響が及ぶ場合には、リスク・ ベネフィットをよく考えないと無用な混乱を引き起こすのではないかと懸念しています。制度をいじって社会的な混乱が起きるケースがこのところ多くなっている気がするので。)


 最近、上野動物園のパンダ、 リンリンが死んだ際の報道で、「ヒトで言えば70歳」という喩えをしていたのですが、それって分かりやすい喩えなのだろうか? ヒトよりも通常は長命な生物の場合でも「ヒトで言えば○○歳」といえば「分かりやすく」なるのかなと疑問に思った。また最近、 スウェーデンで樹齢9550歳のトウヒが見つかったというニュースも聞いていたのですが、この場合はヒトで言えば何歳なのだろう。

 今回のニュースを聞いた際も、生物種間の相対成長をきちんと考慮しないと評価できない毒性もあるのだ、 と思った次第。 iPS細胞のがん化のリスクもレトロウイルスを使っている場合は、 マウスではがん化をコントロールできてもヒトでは長期的にはコントロールできないかも知れないな、とか。(ヒトの場合、 iPS細胞のゲノムに導入されたレトロウイルスのコピー数が少なければ、技術的には全部マッピングできるので、 ある程度予測はできると思うのですが。)

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2008年5月12日 (月)

ミャンマーのサイクロン被害の影響拡大を懸念

ミャンマーのサイクロン被害が甚大なようだ。高潮で家族や家を失った人も少なくないらしい。被害の全貌はまだ明らかになっていないが、 被災者は200万人以上、死者は10万人を超える可能性があると伝えられている。間違いなく、今世紀最大級の災害だ。

被災直後は直接の人的な被害に目が行きがちだが、今回被災したデルタ地帯はミャンマーの穀倉地帯でもある。そのあたりでは、 おそらく2-3期作の水田作が行なわれているはずだ。

今シーズンの作付け分の収穫は無理だとしても、軍事政権は当面の必要量は確保できるとしている。また、 地元では今季の収穫ができなければ都市部では数ヵ月後には米不足に陥るとの見方もある。

しかし、海から高潮を伴って吹き付けたサイクロンの本当の被害は、それには留まらない可能性がある。 耕地に海水の塩分が持ち込まれてしまった場合、長期にわたって塩害が起きるかもしれない。 海水を被ってから大量の雨で洗い流されるのならともかく、今はまだ乾季。5月末の雨季の始まりまで後、2週間ほどある。 人道支援が一段落してからでも良いが、可能であれば現地調査を行なうべきだ。

バイオ・エタノールブームの影響でか、米の国際価格はこの半年で2倍近い高値になっている。 外貨収入をほとんど持たないミャンマーが米を輸入する必要が出てきた場合、調達は非常に難しい。日本政府はこの未曾有の災害に際し、 通常のODAを削ってでもWFPに対する緊急支援と、数年分の支援を表明するべきだろう。

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2008年5月11日 (日)

神戸大学・遺伝子組換え大腸菌投棄の一件、続報

この記事は2008年のカルタヘナ法違反に関するエントリーです。2012年の事案についてはこちらから

神戸大学の遺伝子組換え生物の不法投棄の一件の続報。5/10の新聞各紙(神戸新聞、読売新聞、MSN産経ニュース、時事通信等) の報道によると、

     
  • 医学研究科の設けた外部有識者を交えた調査委員会(緊急問題調査委員会)報告がまとまったのでプレスリリース
  •  
  • 調査結果によると、久野教授の研究室では少なくとも平成14年(2002年)4月以降は、   不活化していない組換え大腸菌廃液などの投棄を行っていた
  •  
  • 他の研究室では、そのような事態は確認されなかった。
  •  
  • 教授の指導の範囲による投棄かどうかは未確認。
  •  
  • 5/10付けで全学の組換え実験凍結を解除。
  •  
  • 再発防止策を公表(読売新聞)
  •  
  • 再発防止のため、外部委員を交えて法令順守を調査する「神戸大バイオセーフティ統括管理委員会」   を既に設置したことなども明らかにした。(神戸新聞)

とのこと。

プレスリリースの意図は、事実関係の調査が終了したことと再発防止策を策定したことの公表にあると思うのだが、 報道機関が切り取ったのは「6年前から不法な投棄が常態化していた」と言う点。再発防止策の策定を伝えたのは2紙のみ。 神戸大学には気の毒な報道ぶりだ(なので、今回は記事を引用しない)。

今後の展開としては、文部科学省に事実関係と再発防止策を報告、文部科学省で報告内容を検討(調査不十分な場合は再調査、 対応策の練り直し)、そして、相応の行政処分または刑事告発という段取りになるだろう。

ちなみにカルタヘナ法の施行は平成16年2月19日からなので、カルタヘナ法に関して違法行為と言えるのはそれ以降。 それ以前のガイドラインは「組換えDNA実験指針(平成十四年文部科学省告示第五号)」なので法的拘束力はない。

 


 

何ですね、再発防止策の眼目が”法令順守を調査する「神戸大バイオセーフティ統括管理委員会」”というのはどうなんでしょう。 事故調査を通じて原因を究明し、再発防止につなげるのは基本ですが、法令遵守を事後点検する委員会では、実効性に問題がありそうです。

それよりも、ルールを守らせるには、まず業務を担当する方々がルールを知らないといけません。 知らないものは守りようがありませんから。

(あ、地震だ)

実際、どのような再発防止策をとるのか興味深いところです。

というところで、神戸大学のホームページを見ると”お知らせ” が出ていました。極簡単な内容なので、概要版でしょう。これによると、再発防止策は、

 

(実施済み)

 
       
  • 拡散防止措置の現状確認
  •    
  • 教育訓練の実施(実験責任者、実験従事者)
  •  
 

(2)今後実施する再発防止策

 
       
  1. 新任教職員を対象とした研修会、部局長等を対象とした危機・コンプライアンスに対応した講習会、     遺伝子組換え実験従事者を対象とした安全講習会などを行い、安全・科学技術倫理等の徹底を図る。
  2.    
  3. 個別の研究室における安全指導が不適切に行われることがないよう、     複数の研究室が共同して安全教育を実施するシステムを確立する。
  4.    
  5. 遺伝子組換え実験施設の安全確保をさらに確実なものにするため、研究室内の遺伝子組換え実験に要する実験設備の点検評価、     実験廃棄物の正確な分別と適正な保管場所の確保を進める。
  6.  
 

  (3)全学バイオセーフティ統括管理委員会の設置と施策

 

遺伝子組換え実験、放射性同位元素等を使った実験、動物実験等バイオ実験に係わる安全性を統括管理する目的で、   3名の外部委員を加えた神戸大学バイオセーフティ統括管理委員会を4月16日に設置した。同委員会は研究担当理事が統括し、   その下に安全委員会、放射性同位元素等管理委員会及び動物実験委員会を参加させ、法令遵守の状況を専門的観点から調査・   検討し学長に報告するとともに、必要に応じ改善を求める。

とのこと。報道はされていませんが、教育訓練の重点化が再発防止策の骨子です。これなら理解できます (肝心の部分は報道されないのですね。困ったものです)。問題は、 きちんと教育訓練できる知識を持ったプロフェッショナルな人材の確保かもしれません。これは意外と難しい。

一方、「全学バイオセーフティ統括管理委員会」というのはどうなんでしょう。上部委員会を作っても、教職員に対して指導・ 命令する権限がないと、結局は研究担当理事に対する助言・勧告くらいしかできないのではないかと懸念されます。むしろ、 規制法のある実験について分からないことがあれば、すぐに相談できるワンストップサービス的な常設の窓口を作る方が物事は機動的に進みます。

現場のトラブルを減らすには、「何をどうする」という具体に常に神経が行き届くことが大切です。 (不断のトラブルシュートという意味ではカイゼンと似てるかもしれません。)

 

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2008年5月10日 (土)

カモノハシ・ゲノム

今日のトピックはこれ。

(エンカルタより)

http://www.natureasia.com/japan/nature/updates/index.php?i=66196

Nature vol.453 (7192), (8 May 2008)

Cover Story: カモノハシのゲノム解読: 塩基配列の解析から得られる初期哺乳類の進化の手がかり

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2388402/2908952

カモノハシのゲノム解読、 ほ乳類誕生の経緯解明に期待

【5月8日 AFP】自然界に存在する多種多様な生物の中でも、 恐らく最も奇妙な生物といえるカモノハシのゲノム(全遺伝情報)解読結果が7日、発表された。
 さまざまな動物の特徴をあわせ持ったかのようなカモノハシだが、今回の研究結果によれば、遺伝子上は鳥、は虫類、泌乳(ひつにゅう) 動物などの寄せ集めだという。
 研究チームは数年かけて、カモノハシの1万8500個の遺伝子に含まれる22億塩基対のゲノムを解読した。その結果、 生物学者にとって「十分に満足のいく」結果が得られたとしている。
 英オックスフォード大学(Oxford University)のクリス・ポンティング(Chris Ponting)教授は「カモノハシは、ヒトなどのほ乳類がどのように誕生したかを解明する課程での『ミッシング・ リンク(失われた環)』だ」と説明。「ほ乳類が卵から生まれ、母乳を飲んで育っていた時代へわれわれを導くチケットなのだ」 と述べ、カモノハシのゲノム解読の重要性を強調した。

■卵を産みクチバシや水かきを持つ、ほ乳類

 カモノハシはオーストラリア東部からタスマニア(Tasmania) に生息する。厚い体毛に覆われた半水生の動物で、およそ1億7000万年前に、ヒトとの共通祖先から分かれたと考えられている。
 母乳を出すことからほ乳類に分類されるが、卵を産む卵生動物では虫類の性質も持ち合わせる。乳首がないため、 雌は授乳の際に腹部の皮膚から母乳を分泌する。また雄には後肢にはへびの牙のような蹴爪があり、ここからは毒が分泌される。
 一方、ラテン語の学名「Ornithorhynchus anatinus」が示すように、 足の水かきやアヒルのようなくちばしといった鳥類の性質も持つ。そのほか、 ヒトには2つしかない性別を決定する染色体がカモノハシには10個もあるという。
 カモノハシは目や耳、鼻の穴を閉じることができ、さらに水中ではくちばしの中にある器官を使って、 獲物の筋肉の収縮で発生する磁場を感知することもできるという。
 研究チームの1人、米ワシントン大学(University of Washington)のリチャード・ウィルソン(Richard Wilson)教授は「カモノハシのゲノムと他のほ乳類のゲノムを比較すれば、 進化の過程でも変わることなく保存されてきた遺伝子の研究が可能になるだろう」と話している。

 この研究で使用されたゲノムは、豪ニューサウスウェールズ(New South Wales)州の「グレニー(Glennie) 」と名付けられた雌のカモノハシのもので、www.ncbi.nih.gov/Genbankで閲覧することができる。 (c)AFP/Marlowe Hood

えー、”遺伝子上は鳥、は虫類、泌乳(ひつにゅう)動物などの寄せ集め”という見方は、 時系列で見たら全く逆ですね。実態はおそらく、”鳥、は虫類、泌乳動物”に分岐する前の”プロトタイプ” から直接派生してきたものの生き残りではないかと思う。なので、身無理矢理”名誉”ほ乳類にするのはカモノハシに失礼では?

”卵を産む卵生動物では虫類の性質も持ち合わせる。”と言いますが、卵を産む脊椎動物は (卵胎生というバリエーションも含めると)、一部の有袋類と胎盤を形成できる一般的な哺乳動物以外全部なのでこの言い方は正しくない (ハリモグラも卵生だったっけ)。脊椎動物の祖先型の卵生という特徴を残しながら、 母乳を分泌する能力も獲得していると言う方が適切でしょう。

しかし、ニッチな研究だな。ファンドを提供した組織は偉い(次は、ハリモグラ・ゲノムか?)。

どなたか、鯨ゲノム研究やらないかな。ゲノムサイズは巨体に似合わず大きくはないと思いますが。

 

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2008年5月 8日 (木)

スイス”植物の尊厳”の問題がNature Newsに

4/16のエントリー

http://domon.air-nifty.com/dog_years_blues_/2008/04/post_7688.html

にも書いたのですが、4/23のNature Newsでも”植物の尊厳”に関するスイスの法律が問題視されている。

http://www.nature.com/news/2008/080423/full/452919a.html

交雑育種のために雄性不稔を導入すのは植物の繁殖の権利を損ない、尊厳を踏みにじるものだ、ということになるらしい。

私の価値観からすると、この法律は「狂って」いる。

そもそも、”尊厳”や”権利”と言う概念は人間の脳の所産だ。生命と言う状態を保っている物質の集合体には、”尊厳”や”権利” があってそうでないものには無いという線引きには同意できない。言いかえれば、生物である、というだけで無批判に尊厳を認めるべきではない。

”人権”と言う概念は、結局は恣意的な線引きでしかないが、 それは今日の世界でヒトにとって有用な概念であるから広く認められるようになったのだ(歴史的には、人権と言う概念に普遍性は無いと思う)。

その概念がヒトにとって有用である場合にのみ広く認められるようになるという構造的な問題をさておいて、”尊厳” と言う概念を広く多様な生物に適用するのは、生物の擬人化だ。

ヒトが特別な生物であるとするならば、それはあなたや私がヒトだからだ。それ以外に、この恣意的な区別に根拠など無い。 Homoという属名にはそういう意味が込められているのではないだろうか。

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2008年5月 7日 (水)

ヨーネ病についてのメモ

毎日新聞、小島さんの以下の記事に関心。

http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/kiji.jsp?frd=kiji&kiji=2127

参考

http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/fact/12.html

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsp3/index.html

以下、断片的メモ。


ヨーネ病の病原菌は、Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis

属名から言って抗酸菌。学名を見ると、結核菌と同じグループなので、 マクロファージに食べられても消化されないで細胞内の小胞体に住み着いてじわじわ増殖するのではないかと思ったら、やっぱりそうでした。

細胞内寄生するバクテリアには抗生物質はあまり効かないので、治療法もないとのこと。

検査法は、

  1. 直接鏡検:糞便の直接塗抹標本を抗酸菌染色し、集塊状の抗酸菌を検出する。
  2. 分離培養:糞便あるいは剖検時の腸管(回盲移行部等)、腸間膜リンパ節などをマイコバクチン添加ハロルド培地で培養する。 灰白色から象牙色のコロニー形成までに2~5ヵ月を必要とする。
  3. PCR法:糞便中等に存在するヨーネ菌に特異的なDNAを検出する。迅速診断法。
  4. 血清学的検査としてELISA法、補体結合反応が応用されている。
  5. ツベルクリン検査と同様な遅延型過敏反応を検出するヨーニン皮内反応が行われる。
  6. インターフェロン・ガンマ検査も試みられている。

技術的にはこのくらいある。法定の検査法はこちら。 これによると、確定診断には「細菌検査(分離培養)又は牛にあつては初回検査の三十日後(ヨーニン検査を実施していない場合は十四日後) にエライザ法による検査」とある。前者ではコロニー形成まで約2ヶ月必要。後者では早くても14日かかる。しかし、 一次検査でELISA陽性であればヨーニン反応を行うことで四十八時間から七十二時間までの間に確定診断できるとある。

一方、PCRは迅速だが、リアルタイムPCRでないと、反応後に電気泳動が要るので、現場で使うにはちょっと敷居が高い。・・・ とおもったら、栄研化学でLAMP法の検査キットを開発、島津で販売とか。こっちのほうが簡便である。 阻害物質の影響を受けにくいので再現性が高くなることが期待される。

http://www.shimadzu.co.jp/news/press/030226.html

で、その後、売ってるのだろうか。島津のホームページ内の検索では出てこない。どうなってしまったんだろう?

サンプル調製から結果が得られるまで数時間で判定できるので、スクリーニング検査には有効だろう。 キットの特性として擬陽性が出やすいと現場では使いにくいのだが、 スクリーニングで本当に陽性だった場合のみ出荷停止できれば牛乳を大量に無駄にする愚は冒さずに済むかも知れない。

日経バイオテクの記事では、

ヨーネ病の検査は主に2つある。1つは抗体検査で1日から3日で分かる。もう1つは牛のふんを採取して、 そのふんにいるヨーネ菌を培養する検査だ。菌の培養には時間がかかる。この菌培養検査の結果が分かるのは、なんと3カ月から4カ月後だ。 厚生労働省の見解に従うと、検査を始めた3カ月から4カ月後にさかのぼって、すべての牛乳が回収されることになる。

とあるが、もっと早くスクリーニングできれば問題は少ない。バクテリアの性質から言って、 非常に生育が遅いのは仕方ないので平板培養は現実的ではない。一方、法定の検査法によれば、ELISA+ヨーニン反応で確定診断を行う場合、 ELISAでのスクリーニングに2日、ヨーニン反応に3日としても5日のタイムラグで済む。この場合、 小島さんの見解は極端なケースの想定と言うことになる(これはわざとか?)。

 


 

 

ヨーネ病の場合も診断基準に従って診断した結果、初めて患畜と言うことができるはずだ。しかし、国会答弁では、 疑似患畜は食品衛生法で言う「疾病にかかった獣畜」だと取れる回答があった。

ヨーネ病等の疾病にかかった、又はその疑いのある牛の乳については、食品衛生法 (昭和二十二年法律第二百三十三号)第九条第一項において、これを食品として販売し、 又は食品として販売の用に供するために加工等をしてはならないこととされている。

そこで、念のために食品衛生法第9条を調べてみると、 「若しくはその疑いがあり」とあるので、家畜伝染病予防法で言う「患畜」+「疑似患畜」=食品衛生法でいう「疾病にかかった獣畜」 ということなのだろう。法律によって定義が違うのだ。

参議院で面白い議論があったのでリンクしておく。ELISAの擬陽性をどう考えるか、と言う問題だ。

http://www.kami-tomoko.jp/sitsumon/168/071012.htm

http://www.kami-tomoko.jp/sitsumon/168/071015.htm

http://www.kami-tomoko.jp/sitsumon/168/071220-2.htm

議員は確信的にELISAの診断キットに問題あり(擬陽性が非常に出やすい)という見解のようだ。 2chでも話題に上がっている。

http://www.heiwaboke.net/2ch/unkar02.php/science6.2ch.net/nougaku/1192441888

さて真偽や如何。

※ 現行キットはオリジナルの二段階法を簡便化して一段階にしている。 そのために特異性が落ちなければよいのですが・・・。

 


 

動衛研のホームページに依ればヨーネ病の感染は、

感染経路は経口感染が主であり、感染母牛から子牛への感染が伝播経路として重要である。 同居牛への水平感染や母牛が重度のヨーネ病に罹患している場合は、胎児への胎盤感染も起こる。

とある。子牛の時期に感染するのであれば搾乳前に複数回ELISAでチェックしておけば、 垂直感染は防げる可能性は高いし、擬陽性の場合のチェックもできるだろう。ただし、同じロットのキットで繰り返し判定するのでは、 キットと動物の両方が疑わしい場合はクロスチェックにならない。要は道具の使い方だ。

スクリーニングで陽性だったから即処分というのは疑問。

Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis とクローン病の関係について示唆する論文が出ているとのこと。要チェックだ。

http://www2.us.elsevierhealth.com/inst/serve?action=searchDB&searchDBfor=art&artType=abs&id=as0016508507014503&nav=abs

パン酵母由来のマンナンで試験してるのですが、 マンナン添加量が増えると白血球に取り込まれた大腸菌の生存率が上がるとの論文。ホントかな。こんにゃくってマンナンだったな。 もう少し核心を突いた輪文でないと、まだ信頼できない。

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2008年5月 5日 (月)

益子焼陶器市

ゴールデンウイーク恒例の益子焼陶器市に行って来た。つくば市に越してきてから4回目になるだろうか。この4年、 そば猪口を湯のみの代わりに使ってきたのだが、今年は湯のみ茶碗を買うことにした。

思えば、3年前にはお店で写真を撮ってblogに乗せていた。 しかし、改めて大麦柄の茶碗を探してみると、なかなか見つからないものだ。数店を巡ってやっとみつけたのが、これ。

麦茶碗

結局、買って帰って写真と比べてみると、3年前のものと一緒の柄だった。

麦の図柄にも大麦っぽいのと小麦っぽいのがあるが、私達夫婦の場合は大麦柄にこだわっています。私はもと大麦の育種家、 嫁さんは食用大麦の成分の研究をしていますので。

# しかし、この茶碗で飲むのは麦茶ではなく、主に緑茶でしょう。

三列に並んだ穎果の形には、大麦の小穂の特徴が現れており、すこしずんぐりした穂の形の図柄には、渦性という日本産の大麦に特異的な半矮性の表現型がよくあらわされている。 この辺が小麦とは違う。

この季節、益子町周辺の畑には、このような六条大麦が実り始めている。

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2008年5月 2日 (金)

遺伝子組換え実験教育訓練

今月、研究所内の講習会の講師を務めなくてはならない。今の職場に来て3年目になるが、 この講習会の講師は赴任した年以来なので3度目になる。

講習会のタイトルは「遺伝子組換え実験教育訓練」。

アイソトープの場合とは違って、「主任者」の資格試験がある訳ではない。教育訓練も、”基本的事項”の第二の2に、 配慮事項として定められているが強制力はない。もっとも、 初めての職場で遺伝子組換え実験を行う場合のルールを教えないという選択はあり得ない。ルールは知らなければ守りようがないのだから、 コンプライアンスの担保にはどうしても必要だ。

しかし、3年目で受講するメンバーもあまり変わらないとなると、教育訓練のテーマの選択が難しい。どうしたものか。

・・・と考えてみると、この1年間で色々、困った問題の相談が寄せられてきたので、 そのトラブルシュートと基本的な考え方を講義することにした。

  1. 困った問題その1: 植防を通らずに海外から組換え植物の種子が直送されてきた。どうする?
  2. 困った問題その2: コンピテントセルを買ったら、最初から遺伝子組換え生物だと書いてあった。実験計画にはまだ書いていない。 どうする?
  3. 困った問題その3: バキュロウイルス発現系でタンパクの調製を外注した。上清にバキュロウイルスが入っているかもしれない。 実験計画書にはまだ記載していない。どうする?
  4. 困った問題その4: Agrobacterium法で作成したPrimary transformantを譲渡したい。除菌はしているが、 Agrobacteriumが絶対に残存しないとは言い切れない。情報提供はどうする?

こうしてみると、対応が研究所内で共有されていない情報が結構あるものだ。

さて、どうしたらよいかわかりますか?

答えは教育訓練で。所外の方は、そのうちプレゼン資料を公開するつもりですので、どこかで答えを見ることができるかもしれません。

 

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2008年5月 1日 (木)

その輪は葉緑体ゲノムではなくて・・・

研究室にて。

植物用バイナリーベクターの複製開始点を文献で調べていて、Ri plasmidの全シーケンスを決めた論文を見つけた

PCのモニターでプラスミドのマップのFigureを見ていたら、後ろから来たTセンター長(リンク先はサイエンスポータル)
がちらっと見て、

T: 「なんだか見たことある図だなー」

と言って帰りかけた。

いや、そんなことはないだろう。Tさんは、Riプラスミドになじみのある研究者ではない。多分、 "あれ"と勘違いしているに違いないと思い、私は

D: 「葉緑体ゲノムじゃないですよ」

と言った。

T: 「インバーテッドリピートみたいなのもあるし、そうかと思った。」

二三歩帰りかけて

T: 「・・・よく分かったね」

 


 

・・・やっぱり、"あれ"と勘違いしていたのだった。っていうか、色分けされた輪を見て、 何を連想したかが分かってしまう自分が悲しい。そういう世代なのだよね。一頃は名古屋大学、杉浦研で作成した葉緑体ゲノムのマップがあちこちに貼られていたものだ。

ちょっと振り返ってみよう。

20年ほど前まで、日本の植物科学の研究者の間では、ゲノムシーケンスと言えば葉緑体かミトコンドリアと相場が決まっていた。 ながーいシーケンスゲルとRIで、ちまちまと、シーケンスをしていたものだ。ゲル板にアルミ放熱板を密着させて扇風機で冷却したりして、 700bpも読めたらもう大喜び。鉛筆を片手に、X線フィルムに写し出された”縦線のないあみだくじ” のようなGATGのシグナルの梯子段を、一つ一つ目で確認しながらマス目を書いた記録紙に写し取り、 パソコンに向かっては呪文のようにぶつぶつ言いながら4つのアルファベットが割り当てられたキーを押して入力するのがよくあるスタイルだった。

# 当時私は組織培養屋さんだったので、シーケンスはしていなかった。USBのSequenaseなんて使ったことはない。 就職してから、ビオチンラベルプライマーを使った化学発光系とdelta Tth polymeraseを使ってサイクルシーケンスをしたのが最初だった。

で、オルガネラゲノムの全遺伝子が分かって、結局、何が分かったのか?

そこから植物の進化に関する多くの知識が得られてきた事実はある。でも、 オルガネラの遺伝子だけで説明が付く生命現象なんてそれほど無いのだよね。今以て、オルガネラ遺伝子は核遺伝子ほど操作しやすくない。 生命現象というドラマに関わる役者(遺伝子)が全部明らかになっても、その演じる役割にはまだまだ分からないことが多い。 ドラマのストーリーを解説するという機能解析への道はまだ遠い。

# 逆を言えば、植物科学の研究者は、まだ食いっぱぐれないということでもある。

しかし、私は福岡伸一さんほど物事を悲観的に見ている訳ではない。いくつかの本で彼が言っていることは、 言い回しこそ紳士的ではあるが、結局、「ノックアウトなんかしてもどうせ何もワカンネーよ。」というだけのことだ。 それは研究者としては不誠実な態度だ。

野生型とノックアウトの違いが、顕微鏡で分からないならプロテオームがある。それでダメなら、マイクロアレイもMPSSもある。 なんならメタボロームもある。他の手だてを探して、何が起こっているのかを明らかにするのは研究者にしかできない仕事だ。

ノックアウトで遺伝子の機能を止めても、あるいは遺伝子を過剰発現させても、表現型が変わらないというのなら、 他の経路が動いて表現型を変えないようにしているはずだ。そこまでして生物が維持しなければならない表現型は、 きっと生きていく上で重要な役割を持っているに違いない。その生命現象は(あるいは、その研究テーマは)生き物にとって重要なものなのだと、 生き物自身がメッセージを発信しているのだ。そのことを喜んで、かつ謙虚に耳を傾けようではないか。 ふてくされて斜に構えている場合ではない。

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