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2008年4月 3日 (木)

「諦める」にも勇気が要る

特定の中国産冷凍食品の餃子から、約20,000ppmのメタミドホスが検出された。県警の分析で明らかになったという。 ニュースはこちら。毎日新聞より。

中国製ギョーザ中毒:メタミドホス、基準値の6万倍検出--母子中毒、 未調理ギョーザ

 ◇千葉の母子中毒、未調理ギョーザから

 中国製冷凍ギョーザによる中毒事件で、千葉県警捜査1課は31日、 千葉市稲毛区の母子が食べて中毒症状を起こしたギョーザと同じ袋に入っていた未調理のギョーザから、 最高で基準値の6万4300倍の有機リン系殺虫剤「メタミドホス」を検出したと発表した。 5人が中毒症状を起こした同県市川市のギョーザの約6倍の濃度で、国内の成分分析では最高値。1課は「残留農薬のレベルではない」 とし、意図的な混入の可能性が更に高まったとみている。

 未調理3個と、母子が吐き出した1個を分析した結果分かった。 未調理ギョーザは皮1グラムから1490~1万7680ppm、具1グラムから410~1万9290ppm、 吐き出したギョーザは皮1グラムから1470ppm、具1グラムから1240ppmをそれぞれ検出した。 4個のうち3個で皮の方の濃度が高いことから、1課は成形から袋詰めの間に混入されたとみている。

 国が導入した原料野菜の残留メタミドホスの基準値は、ニラ0・3ppm、キャベツ1・0ppmで、 皮は4966~5万8933倍、具は1366~6万4300倍に相当する。ギョーザ1個(14グラム)当たり最大で263・ 62ミリグラムが混入していた計算で、女児は2個、母親は5個食べると致死量に達した可能性があるという。 母子は07年12月28日に「CO・OP手作り餃子(ギョーザ)」(07年10月20日製造)を食べ、女児が軽症、 母親がめまいなどを訴え、1日入院した。【斎藤有香】

 ◇昭和大学薬学部の吉田武美教授(毒物学)の話

 動物実験で半数が死ぬメタミドホスの「50%致死量」は体重1キロのラットで20ミリグラム弱。これを基準とすると、 体重50キロの場合1000ミリグラム、20キロの場合400ミリグラムが50%致死量になる。

毎日新聞 2008年4月1日 東京朝刊

エイプリルフールのジョークではないのが残念な限り。 日経FoodScienceでは松永和紀さんが何を間違ったか、「1億9290万ppm」と書いていらっしゃいます。 100万ppmで丁度100%になりますので、メタミドホス含有率1億9290万ppmの餃子ですと、 餃子成分の19,290%がメタミドホス・・・!?無理です。こちらの日付は4月2日なので、やはりジョークではないようです。

えー気を取り直して、今回の報道で欠けている要素の一つ。それはデータの整合性です。 餃子4個を分析したものの具と皮の濃度の対応が分かりません。

 

餃子 A B C D(食べさし)
410 19,290 ? 1,240
1,490 17,680 ? 1,470

 

と言う状況なのか、

 

餃子 A B C D(食べさし)
19,290 17,680より小 410 1,240
1,490 17,680 410より大 1,470

 

という状況なのか。あるいはその順列組合せ。まあ、どうだって良いんですけど千葉県警のホームページを見ても分かりませんでした。

また、この記事の基準値の6万4300倍という数字は19,290ppm/64,300=0.3ppmなので、 ニラの残留農薬基準をスタンダードにしているらしい。

残留農薬基準は食品ごとに決められており、 様々な食品を通じて摂取した場合にトータルで摂取される残留農薬がADIに達しないように設定されている。従って、 この基準値との比較でメタミドホスの影響をある程度推定する事が許されるのは、ニラがギョーザの構成成分の100%である場合に限られる。 構成成分の重量比からいえばキャベツの方が多いはずなので、書きぶりに悪意が感じられる。

高濃度を印象づけるためにこの数値引用したのだろうが、ちっとも分かりやすい記事になっていない。むしろ、 食品安全委員会で算定した4月4日までパブコメ中のARfDの0.003mg/kg体重/日や、 ラットの急性神経毒性の無毒性量0.3mg/kg体重/日との比較で考えた方が毒性の程度が分かりやすい。概ねこんな感じ。

ギョーザ1個が約14gなので、その2%がメタミドホスでできている場合、 ギョーザ1個を食べた場合に摂取されるメタミドホスは280mgになる。

体重60kgの人の場合、ARfDから算出される安全な1日摂取量は0.18mg。

従って、 ギョーザ1個で安全な摂取量の1556倍に相当するメタミドホスを摂取することになる。 この量はラットで毒性が表れる量を基準にした場合の約16倍に相当する。

毒性が表れないギリギリのラインの16倍の毒物を摂取した場合に中毒するのはまず間違いない。 数個を食べた場合には必ず何らかの症状が出るでしょう。しかし、マスコミ的には16倍ではインパクトが無いんでしょうね。 毒物の性質によって毒性が表れる量と、半数致死量の間が離れているものと、近いものがあるが、メタミドホスの場合は離れている方でしょう。

上記の新聞記事を読み直して気づいたのですが「メタミドホスの「50%致死量」 は体重1キロのラットで20ミリグラム弱。」・・・ラットの体重は、 Wisterラットの雄で450gくらい。大きなものでも800g位のはず。 体重1キロのラットは相当の大ネズミです。

多分、「メタミドホスの「50%致死量」はラットでは体重1kgあたり20ミリグラム弱。」 と専門家が言ったのを記者が勘違いしたのでしょう。たとえるにしても言い方ってものがあります。「体重250kgの人の場合、 5gのメタミドホスを摂取した場合、100人中50人が死亡します」と言われたら、どう思います?

残念ながらトータルではリスク情報が正しく伝わらないダメ記事です。

表題の”「諦める」にも勇気が要る”ですが、

結局、食品の原産国表示は毒物混入のリスクとは無関係。 意図的な毒物混入は原産国で発生頻度が異なると考えるべき根拠はないので、東京都が求めるように原産国を書いても安全性担保には役立たない。 また、食品メーカーは中国の食品工場に監視カメラを増設していると言う話も聞くけれども、 常時モニター画面を監視し続けて不審な動きがないかをチェックするのは、監視自体に相当のマンパワーを割かないと無理。 コンビニの防犯カメラが強盗の抑止に役立つかどうかを考えれば分かるように、毒物混入が分かった事後に犯人を絞り込むのに役立つ程度。 意図的な毒物混入を未然に防ぐ用は為さない。

食品原材料については残留農薬、重金属、ダイオキシンなどある程度ロットレベルでの安全確保はできるものの、 個別の汚染はどうやったってわからない。非破壊であらゆる毒物を検査する意外に避ける方法はないのだから。

また、加工後に腐る事もあるだろうから、食べ物に毒物が入っていない事を保障することはできないのだ。それは、 手作りにしてもおなじこと。いくら管理に気を配っても、できるだけの手を尽くしても、中毒のリスクは減りはしますがゼロにはならない。 中毒する時には中毒する他ないのです。

毒を喰らわば皿までと申します。さあ、腹をくくって美味しく頂きましょう。そして、勇気を持って諦めましょう。

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