研究費の不正支出ですか
ご近所の独法で研究費の不正支出に関して大量処分。
産業技術総合研究所:3489万円不正支出… 17人を処分
経済産業省所管の独立行政法人「産業技術総合研究所」(産総研)は18日、茨城県つくば市の「つくばセンター」 の研究員19人が01~07年度の7年間に内規で定められた手続きを経ず、研究費3489万円を支出していたと発表した。 このうち男性職員1人が同日、センター内で死亡しているのが見つかった。つくば中央署は自殺とみている。 産総研は18人のうち17人を同日付で出勤停止1カ月などの処分にした。残り1人は既に退職したという。
使われたのはナノテクノロジー研究部門など7部門に交付された内部の運営費と経産省などの研究委託費。 USBメモリーなどのコンピューター用品や実験器具を内規で定められた発注手続きをとらずに業者に納入させたり、 発注品と異なる物品を業者に納入させたりしていた。
昨年12月、関係者の告発を受け、調査を始めた。25人から聞き取り、19人が認めた。【原田啓之】
毎日新聞 2008年4月19日 1時16分(最終更新 4月19日 12時29分)
産総研のプレスリリースはこちら。
処分されるのは不名誉ですが、死んでしまってはおしまいです。ご家族もあるでしょうに。 不名誉でも生きているべきです。まだやり直せるのですから。
こういう事があると、同じような研究独法では予算執行が適正かどうか監査が厳しくなります。 その結果予算執行が滞ると、それが反って不適切な執行の原因になりかねないのですが。
これだけの大量処分があるからには、背後にそれなりの理由があるはずです。プレスリリースにある通り、 使い道が不適切と言うことではなく支出の際の手続きに不備があったというのであれば、何らかの構造的な問題も疑われます。例えば、
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委託元の予算編成がずれ込んで、委託研究費の配分決定が9月→しかし1月中には報告書を求められる。 無理は承知でなんとかせねば。→予算が来る前に、機械や備品を正規の手続きを踏まずに調達(←不正です)・・・とか。
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内規で定められた発注手続きをとると、必要なスペックの製品を買うためには仕様書を異様に細かく書かなくてはいけない。 →めんどくさいので業者に声をかけて直接調達(←不正です)。←支払いが滞って、 払わないと告発するぞと業者に脅され←告発されるくらいなら自分でゲロしちゃえと、内部告発風の自爆。
こんな感じでしょうか。
再発防止策として「調達請求者と検収者を分離し、調達請求者以外の者が検収を行う」とあります。これは、 結構大変なことです。研究用の物品や試薬は、内容の理解しにくい特殊なものも少なくありませんので、検収者は、 調達が適正に行われたかどうかを判断するために、調達物品やサービスに関する正確な知識が求められます。
これを実現するには、検収にあたる事務職員の能力を向上させる (といっても産総研の研究分野は異様に幅広いのでどうやって能力向上を図るかが問題)、あるいは、 発注者と研究分野の近い研究職員に発注内容と納入物品等の整合性をチェックさせる(立会を求められたらそりゃぁ面倒です) といったところでしょうか。でも、誰に頼めば専門分野が近いのか見当を付けるのも一苦労でしょう。
検収係になると、たとえば、伝票に”Tween20 25g”と書いてあって、納品されたのが” ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート 25g”だった場合、同じものかどうか判断できないといけない。また、制限酵素では” Hinf II”と”Hind III”が同じかどうか判断できないといけないし、あるいは、 わざわざFermentasのFastDigest制限酵素(5分で切れる!)を頼んだのにTOYOBOのを持ってこられてしまうと、 どう不都合なのか説明できないといけません。仕様をきっちり書けば済む話ではありますが。
私なんざ、よく使われるダイクロイックフィルタのバンドパスは見れば判別できますが、 いきなりホロカソードランプの型番と現物を見せられて、これ分かりますかっていわれても、自慢じゃないがちっとも区別が付きません。 ちょっと分野が違うと、もう何が何だかさっぱりですもん。
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