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2008年4月11日 (金)

遺伝子組換え微生物を流しに捨ててはいけません。

下記の記事の内容が仮に事実であるとすれば、こういう事をしていると、 違法と言うだけでなく研究者や所属している組織の社会的な信用も失います。

 

遺伝子組み換え大腸菌、実験室の流しに捨てる…神戸大研究室

 

 神戸大医学研究科(神戸市中央区)の久野高義教授の研究室(分子薬理・薬理ゲノム学)が、   実験に使った遺伝子組み換え大腸菌や酵母を実験室の流しに捨てて処分し続けていたことが10日、複数の同研究室関係者の証言でわかった。  

 

 遺伝子を組み換えた生物は、遺伝子組み換え生物等規制法で、熱や薬品で死滅させて廃棄すると定められている。   同教授が文部科学省の調査に事実を隠ぺいしたとの証言もあり、同省は「早急に詳細な調査をする」という。

 

 関係者によると、久野教授らは、発がんのメカニズムなどの研究で、遺伝子を組み換えた大腸菌や酵母を使用。5年以上前から、   菌の入った培養液を処理せず実験室内の流しに捨てた。菌を育てた寒天状の培地も一般廃棄物としてごみ箱に捨てていた。

 

 加熱処理して菌を死滅させる機器は実験室に3台あるが、ほとんど使われていなかったという。医学研究科によると、   捨てられたとされる菌の危険度は低いというが、排水は一般の下水道に直結しており、人の体内に入る可能性も否定できない。

 

 文科省は、不適切な処理を伝える匿名の通報を受けて3日に、研究室を立ち入り調査。神戸大側は翌日、   組み換え大腸菌の培養器を廊下に置いていた違法行為があったと発表したが、処理については「すべて適正と確認した。周囲の汚染はない」   と説明していた。

 

 久野教授は「手を抜くスタッフがいた可能性は否定できず責任は私にあるが、違法な処理や隠ぺいを指示したことはない」   と話している。

 
    (2008年4月11日03時10分  読売新聞)  

 さて、こういう事態になると、まず生きた組換え体を廃棄した事実(いつ、何を、どこに、どれだけ) があるかどうかということの事実関係を確認しなければなりません。次に、その事実があったとして、 廃棄された組換え大腸菌や組換え酵母が人体や環境に対してどのような影響があるかを検証しなければいけません。

 いずれも、文部科学省からの聞き取りに対して、事業者としての神戸大学の責任で行うことになります。 学内の遺伝子組換えに関する安全委員会や総務部門等がその担当になるでしょう。 実験で頻繁に作る組換え微生物の廃棄については記録を残していない事も多いでしょうから、追跡は大変だと思います。

 もし関係者が事実関係を認めれば、流しのトラップの水を取ってきて、 選択培地にストリークしてプラスミドを取って調べる、というところまでする必要はないと思います。もし、下水にまで漏出していれば、 これは環境省マターでもありますので事態の収拾は長期化するかもしれません。

 人体に対する影響については、通常の組換え実験に使われる酵母Saccharomyces cerevisiae (出芽酵母)あるいはSchizosaccharomyces pombe(分裂酵母) であれば、病原性もありませんので感染の心配はありません。また、大抵は栄養素要求性を持った変異体を使うので、 特殊な培地でなければ生育できない事が多く、自然環境下では生きていけないようにしてあります。

 一方、大腸菌については、通常遺伝子組換え実験用にはK-12株由来、B株由来、 W株由来 (これはちょっと微妙なポジション)のものが使われていますが、いずれも人には感染しないことが確かめられています。 環境中での生存率もかなり低い(・・・とはいえ、 0ではない)ので、生き残っているものも絶対に居ないとは言えません。が、 普通は環境中に居る様々な常在菌と拮抗しあうので、生態系に影響を与えるほど大繁殖することはできません。

 問題となっている菌株が、上記のものであれば深刻な事態にはならないはずですので、そうであることを祈ります。

 こういう事態になったのは、果たしてスタッフの手抜きというだけで済む問題だろうか?「手抜き」というのは、 違法だという認識があって、それにもかかわらず、ばれなければ違法行為をしても良いと考えているということになるのだ。 廊下にインキュベーターを出していた一件は、「だって狭かったんだもん」と言うことなのだろうが、こっちの方は 「だってめんどくさかったんだもん」とでも言うのだろうか。困ったラボだ。

 文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室には相当の負荷がかかっていることでしょう。毎週、 神戸に日帰り出張という有様かもしれません。職員の皆さんも過労で体をこわさないように気をつけて下さい。国家公務員の約1.2% は鬱や統合失調症などの精神疾患で長期休養を取っているそうですので。

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