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2008年3月14日 (金)

葉緑体形質転換のちょっと微妙なところ

日本国内で遺伝子組換え生物を作成する場合、カルタヘナ法の規制がかかる。研究開発段階の遺伝子組換え生物の使用等(たとえば実験) の場合は、文部科学省の研究開発二種省令に従って拡散防止措置を執らなければならない。

遺伝子組換え植物を栽培する場合、大抵は最初はP1Pレベルの拡散防止措置を執って栽培するが、 やがて組換え体の評価が進んで個体数も増え、栽培室が手狭になってくると、特定網室レベルの拡散防止措置を執る場合がある。

特定網室で普通に栽培できる(つまり大臣確認をしないで)遺伝子組換え植物の条件は、研究開発二種省令では、 第五条第四号に次のように定められている。

ホ 次の(1)から(4) までに掲げる要件のいずれにも該当する遺伝子組換え生物等 別表第五に掲げる特定網室の拡散防止措置とすること。


(1) 供与核酸が同定済核酸であり、かつ、哺乳動物等に対する病原性及び伝達性に関係しないことが科学的知見に照らし推定されること。
(2) 供与核酸が宿主の染色体の核酸に組み込まれており、かつ、転移因子を含まないこと。
(3) 花粉、胞子及び種子(以下「花粉等」という。) の飛散性並びに交雑性が宿主と比較して増大しないことが科学的知見に照らし推定されること。

(4) 微生物である遺伝子組換え生物等を保有していない植物であること。

大抵の組換え植物は問題なくクリアできるが、ちょっと引っかかるのが(2)。葉緑体形質転換の場合は、 導入した供与核酸は葉緑体ゲノムに取り込まれるのだが、葉緑体のcpDNAを「染色体」と言っちゃって良いのだろうか?

(2)の文章の意図は、 「供与核酸がエピゾームとして挙動したりトランスポゾンそのもののように転移して組換え生物の特性がどんどん変化するものは、 リスク評価済みとは言えないよね」というところだろうから、仮にcpDNAを「染色体」と言えなかったとしても、 リスク管理上は葉緑体形質転換植物を特に強く規制する必要はない。

なぜならば、葉緑体は一般に母性遺伝することから、そこに外来遺伝子を導入した遺伝子組換え植物では、 雄性配偶子である花粉を媒介した外来遺伝子の拡散を防ぐことが期待されており、 医薬品成分などフードチェーンに入ってほしくない物質を組換え作物で生産させる際のキーテクノロジーの一つとなることが期待されている。 リスク管理という点では花粉を媒介して外来遺伝子が拡散する可能性が非常に低いことから、 特定網室での栽培を規制するべき理由はないことになる。

だが、cpDNAを含む葉緑体内の構造を日本語で葉緑体の「染色体」と呼ぶかと言えば、普通は言わない。 良くって、核様体(chloroplast nucleoid)。英語表現では"Chloroplasd chromosome"と言わなくはないが、PubMedで見ても、この10年くらいはあまり使われていない表現だ (私が学生の頃は、まだそういう論文を見たことがあった)。従って、杓子定規に文言を解釈すると、葉緑体形質転換植物は(2) の条件を満たせないかもしれない。

なので、葉緑体形質転換体を特定網室で栽培しようと考えている研究者の皆様には、 その前に文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理安全対策室に、cpDNAを「染色体」 と言って良いかどうか照会することをお勧めします。

もし、規制当局から「染色体」と呼べないと解釈された場合には、 栽培の前に大臣確認申請をしてきちんと手続きをしておく必要があります(怠ると、ひょっとすると科研費をカットされちゃうかも知れませんね) 。

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