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2008年3月21日 (金)

ダイズの7S,11Sグロブリンの血清脂質プロファイルに対する効果は限定的?

NIH public accessになっている論文。個人的にはショッキングだったのでメモしておく。

 


 

Adams, M.R. et al. Replacement of dietary soy protein isolate with concentrates of soy 7S or 11S globulin has minimal or no effects on plasma lipoprotein profiles and biomarkers of coronary risk in monkeys. Atherosclerosis. 2008, 196: 76-80.

[超訳メモ]

ダイズの7Sあるいは11Sグロブリンを抽出し、飼料のカゼインなどのタンパク質と置換して、サルに食べさせ、 血清中のコレステロール、トリアシルグリセロールの濃度を測定した。また、冠リスクのバイオマーカー(soluble E-selectin, VCAM-1, MCP-1, TGF-β-1,  PAI-1) との関連を調査した。

ダイズ粗蛋白抽出物では、総コレステロールとVLDL + LDL コレステロールは有意に改善し、HDLも増加した。しかし、 7Sと11S抽出物では大した効果はなかった。7S抽出物では、総コレステロールが7%増加(主にVLDL + LDLコレステロールの増加によると見られる)した。バイオマーカーについては、どの蛋白でも改善は見られなかった。

要するにサルでは、飼料のタンパク質を単離した7S,11S蛋白へ置換しても、血清リポ蛋白のプロファイルを改善しないし、 冠リスクのバイオマーカーも改善しない。

 


 

作業仮説としては、培養細胞やマウスで血清リポ蛋白のプロファイルを改善する要因になってきたものは、 比較的少数の特定のタンパク質と考えており、粗蛋白で見られた効果が、精製分画ではよりシャープに現れると期待しての実験だったのだろう。 結果は、全く意外。齧歯類で確認されたような精製タンパク質の効果は、サルでは認められなかったということ。 n=32の試験で標準誤差もよくコントロールされている様に見えるので、データの精度は高そう。

なお、ダイズ7S分画は主にβ-コングリシニン、11S分画はグリシニンからなる。11Sの方は豆腐の主成分なので、 食品のタンパク質としては日本人にはなじみ深い。

うーん。この実験結果は、かなり痛いですね。これまで、 どの蛋白がコレステロール低減や脂質改善に効果があるかを培養細胞やマウスで詰めてきた研究が多々あって、 いよいよヒトに近い霊長類でモデル実験をしたところが、コレですから。がっかりした研究者は結構多いのでは無いかと思います。 この実験結果を信じるのであれば、 コレステロールのコントロールと冠リスクに関するバイオマーカーの改善にはどの分画が良いかと言う議論は白紙に戻ったことになるわけですから。

血清リポ蛋白のプロファイル改善のような特別な効果を期待しなければ、ダイズ由来食品は蛋白源としては肉よりもずっとまし。 そもそもダイズにはコレステロールが含まれていない。でも中性脂肪が気になるのであれば、 豆腐やあぶらげにも結構な量の脂質が含まれているので、加工食品として総合的に考えるのであればケースバイケースの判断が必要。結局、 特定のダイズ蛋白が心疾患等の予防によいというヘルスクレームの根拠が無くなるかもしれなということ。

一方、この実験ではアテローム性動脈硬化に対する評価はされていないので、高血圧に対する効果については情報がない。また、 生理活性を表す実体は、タンパク質が部分分解されたペプチドだと考えられているので、 投与されたタンパク質が非常に効率よく消化されてしまって、生理活性を表すのに十分な量のペプチドが残存しなかった場合にも、in vitroの実験結果と一致しない事も起こりうる。タンパク質の消化性をコントロールして、 機能性ペプチドの状態で吸収できるようになれば、また状況は変わるのだろうが、 今度は食品アレルギーを起こす可能性が高くなるのでそちらも気をつけなくてはならない。

ところで、全く消化しないものは食べ物にならないが、植物由来の食品には加工程度によってあまり消化性の良くないものもある。 ダイズそのものは、裸のタンパク質とは違って細胞壁に囲われた細胞でできている。細胞壁自体はヒトの消化酵素に耐性があり、 胃や小腸では消化されないため、組織という細胞の固まりの状態は腸管まである程度維持されると考えられる。たとえば、枝豆や水煮ダイズは、 裸のタンパク質である豆腐やあぶらげよりも消化されにくいだろう。 納豆は粒の形状が残っているが納豆菌のプロテアーゼでタンパク質は相当程度程度分解されているが、ポリグルタミンの粘液(糸の成分) でコートされているので、ゆっくりと消化が進む(そのため遅発性アナフィラキシーが起こることがある)。従って、 抽出されたタンパク質の生理機能性と食品のそれは、消化性が異なることもあるので一致しないことも十分にあり得る。

この論文の動物実験では、抽出済みのタンパク質を加えた混餌飼料なので、 ダイズ粉末を使用した場合とも消化吸収の状況が異なると考えられる。食品という複雑なものを科学の領域で扱えるまでに単純化・ 抽象化することは、なかなか難問だ。

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