Synthetic Mycoplasma genitalium JCVI-1.0の"すかし"
大げさな記事が出たものだなぁ。
先日、細菌ゲノムの全合成というエントリーにDr. C. Venterらの研究所の仕事について書いたが、Wired Visionにその合成ゲノム中の”透かし”についての記事が出ていた。Dr. Venterの情報の又聞きを次のように書いてある。
同研究所の所長J. Craig Venter氏はこの「透かし」について、次のように説明したと『New York Times』紙のAndy Pollack記者は伝えている。
「Venter氏によると、これらの透かしには暗号化されたメッセージが含まれているという。 探偵になってメッセージを解読するには、透かしの暗号化されたアミノ酸配列を特定しなければならない」
そして、Wired Visionは、
Wired Scienceの電話依頼に応じて、NCBIのDavid Wheeler氏とTao Tao氏が、 Venter氏の研究所から提出された遺伝子配列を調べてくれ、一見何の変哲もないように見える配列に隠された透かしを見つけた。 そしてわれわれはそれを解読した。
史上初の細菌の合成ゲノムに埋め込まれることで歴史に残ることになった、5つのメッセージの解読結果をここに初公開する。
と誇らしげに書いている。
ちなみに、Synthetic Mycoplasma genitalium JCVI-1.0の塩基配列は1/24付でNCBIのデータベースで公開されている。 このデータは最初から誰でも見ることができる。塩基配列情報にはどんな遺伝子がコードされているかを要約したFeature tableが付いている。そこを見ると、ご丁寧にも、
84823..84879/note="watermark; Translation in frame 1: CRAIGVENTER"169040..169108/note="watermark; Translation in frame 1: VENTERINSTITVTE"
等(あと3つあるが、)とわざわざ”watermark”(透かし)と書いた注釈が入っている。ページ内検索で” watermark” をキーワードにして探せば誰にでも見つけられる。
Wired Visionの記事は、この作業を大仰に「解読」と言っており、しかも1/28に公表した記事 (日本語版は1/29)では「ワイアードが初公開:合成ゲノムに隠された暗号を解読」という見出しを打っている。
私は、ゲノム情報そのものは1/24に公開されていたものだからWiredが初めて公表するものではないし、 Feature tableにわざわざ 「透かしです」と書いてあるものを見つけて読むのも「解読」とは言わないと思うのだが (暗号化もされてないことだし)、 世間ではどうなんだろうか。
人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント