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2008年1月 4日 (金)

”eBayでDNA合成装置が買える? 「オープンソース遺伝子工学」の時代”という妙な記事

まずは07年12月19日付けWired Visionの記事を読んでいただきたい。

表題通り”eBayでDNA合成装置が買える”と言う記事で、

「この種の装置は、ブタノール[燃料などに使えるアルコール]を生産する大腸菌の菌株の構築など、有用なことに使えるが、 当然のことながら、それだけでなくもっと悪質な目的にも利用できる。そのため合成生物学の研究者たちは、 DNA合成装置が悪意をもって使用されることを懸念している。」

という危惧をあらわしている。

さて、日本でDNA合成装置を安く買いたければ、中古の分析機器屋さんへ行けばよい。個人だからと言って買えない理由はない。 特にDNA合成装置を規制する法律もないことだし。

しかし、今時、分子生物学方面の仕事を専業にしている研究者は、自分でDNA合成装置を使ってDNAの合成をしたりはしない。 合成DNAを買いたければDNA合成を受託している会社は国内外にいくらもあるので、 そこにメールで塩基配列を送ると、中2日くらいで合成DNAが送られてくる。価格は、合成する量とDNA鎖の長さにもよるが、 1塩基あたり20円程度だ(もっと安い会社もあるだろう)。支払いはクレジットカードでできる会社もあったと思う。この10年ほどは、 そう言う状況にある。

実は、DNA合成装置を買ってしまうと、その維持管理に手間と時間がかかるだけでなく、 DNA合成を委託した場合には当然のサービスである品質チェックや定量も自分でやらなくてはならない。 合成DNAの数が多いとこれは大変な労力になる。また、使い切らないうちにダメになってしまう試薬の始末や、 合成後のアンモニア分解など面倒を山ほど背負い込む事になる。だから、よくよくの理由がなければ、 普通はDNA合成装置を買おうとは思わないのだ。

つまり、 合成DNAを入手したければ10年も前から相応の金額を支払えば誰でも入手できる世の中だということは分子生物学系の研究者なら誰でも知っている。 だから、今更DNA合成装置がインターネットのオークションに出たからといって「DNA合成装置が悪意をもって使用されることを」 だけを懸念する研究者が居るとは思えないのだ。これは、一種のたちの悪い冗談で私がついて行けていないだけなのだろうか?

なお、この記事を書いたAlexis Madrigal氏は、訂正記事で蛍光光度計(luminometer) とDNA合成装置の区別がつかなかった事を告白している。しかも酷いことに、Wired Vision日本語版の翻訳では、 luminometerを”照度計”と翻訳している。orz

一方、Wired Visionのこの記事では、Reason誌の記事を引用している。こちらの方は、 DNAウイルスとRNAウイルスの区別がついていないようなところはあるが、もうすこしましだ。

そう。こちらの記事の通り、DNAデータベース上の病原微生物のゲノム情報と通販の合成DNA、高価な試薬、 実験設備そして核酸操作や動物細胞培養の技術があれば、病原性ウイルスの再構築は不可能では無くなってきている。 それには相応のコストはかかるが、技術的な障壁は無くなりつつあると言う点では、バイオテロの潜在的なリスクが無いとは言えない状況だ。

しかし、”DNA合成装置がバイオテロの引き金になるかも”という短絡的な発想はいただけない。問題は、 DNA合成装置が入手しやすい事にあるのではなく、合成DNAと病原性微生物の再構築ができる技術が広く普及している事にあるのだから。 そして、強力な爆薬や核爆弾を作るのとは違って、病原性微生物の再構築は、法律の規制対象ではない普通に市販されている試薬や細胞を使って、 普通の大学や研究所の実験室でできる(一部のケースをのぞいて法律の規制は受ける)・・・もっとも、 自分が感染しないようにきちんと管理できる専門家か、よっぽどの命知らずに限られてはいるが。

# なお、いかなる国の法律も、テロリストが法を守る事を前提として書かれてはいない。

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