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2007年11月の記事

2007年11月29日 (木)

科学は、いや科学者はその問いに答えられるか?

 遺伝子組換え食品に関わるコミュニケーションをテーマに開催されたとある講習会の参加者から寄せられたコメント

「将来何かが起こるかも、という素朴な質問に対して、回答しようという姿勢を示さないこと自体が、無視されているように感じられ、不信感を招く。」

 さて、この種の質問に誰が答えられるだろうか?言い換えれば、責任を持って答えられるのは誰だろうか?

 私はこの種の質問をされると困る。ひたすらに困る。

 何故か? それは、一つには、私がこの種の質問に責任を持って(あるいは職責において)回答できる人間ではないからだ。 職業上、自然科学に携わっている研究者や技術者は誰でも、おそらくこの種の”素朴な質問”に責任を持って答えることはできないだろう。  

 おそらく、科学者や技術者が真剣にこの質問に答えようとすると、端的に言えば、次のような回答になる。

「質問の仕方が間違っています。」

 非常に拒絶的で、冷淡で、傲慢で、人を馬鹿にした答えだ、と、思われるかもしれない。しかし、科学的であろうとすると、あるいは”専門家”としての職責に忠実であろうとするほどに、そういう姿勢で答えざるを得ないのだ。

 あたり前のことを言うが、自然科学は万能ではない。だからこそ、自然科学、とりわけ実験を行う自然科学の分野では、実験の前提条件を厳密に設定する。なぜならば、実験は自然現象の一部を切り取り、限定した条件の下で再現する(いわば自然現象を”なぞる”)ことで、自然界で起きている現象が「どのように」起きるかを再現することで、自然現象を説明しようとする。それが、自然科学で行われる実験というものの本質であると私は考えている。

 たとえば、マウスなどの動物を使った毒性試験を行う場合は次のようになる。ある飼育環境で、ある系統のマウスに、ある毒性物質X(概ね類似の物質からどのような毒性があるか類推できる)を、ある決まった量の範囲で、ある期間に投与するとする。その場合、実験の打ち切り時点までに、ある割合で特定の臓器に腫瘍ができたとする。

 これから言えることは、「ある毒性物質Xは、ある決まった量の範囲でマウスのある系統に投与すると、ある割合で特定の臓器に腫瘍ができる」という実験結果がその条件の下で得られた、ということのみ。そこから先は、実験を行った専門家の責任においておこなう、「マウスではこれこれの毒性があった。従ってこの物質は、おそらく他の哺乳動物にも同程度の毒性があるかもしれない。」という”推定”(あるいは考察)になる。

 自然科学においては無制限に巨大な実験を行うことはできない。お金も時間も限られている。例えば、樹木の寿命は数千年に及ぶが、その生涯を観察しおおせる研究者は居ない。際限もなくマウスの世代を重ねる実験もできない。だから、ある現象を解明するために行える実験は(研究分野によってスケールに違いはあるものの)、自然現象のごく一部を切り取って、よくコントロールされた条件の下で再現して見せることしかできない。そして科学者はそこから、推論を行って一般的なルール(法則性)を抽出しようとする。実験を行う自然科学の分野では概ねこのように研究 (新たな知識の発見)が行われている。

 翻って、遺伝子組換え食品を食べると、「将来何かが起こるかも」という”素朴な疑問”においては、問いを立てるに当たって、どのような前提が置かれているだろうか?

 考えてみると、”どのような遺伝子組換え食品” (入れている遺伝子も作物も多様です)を”どのくらいの期間”(一生?それとも数世代?)、”どのくらいの量”(毎食?それもほとんどの食材?)を食べた場合に、”どのような有害事象が想定されるのか”という前提条件が、全く設定されていない。

 つまり、この問いは”自然科学が答えられる質問の様式に従っていない”ことになる。 専門家として招かれた講習会でこのような質問をぶつけられたら、あなたならどうする?

 限られた持ち時間で、その質問はなぜ科学が答えられる性質のものでないのかを説くだろうか?でもそれは、”自然科学”という知の様式を扱う科学哲学の専門領域の話ではないのか?それをあなた(私)が、あたかも科学哲学の専門家であるかのように解説しても良いのだろうか?それとも、あなた(私)は科学者ではあるが科学哲学の専門家ではないので、その質問に答える資格がない、と言ったところで納得してもらえるだろうか?

 答えは、いずれもNoだ。普通の市民は自然科学の問題と科学哲学の問題の区別が付かない。自然科学に関する問題であっても、実験結果とその延長である推定との区別も付かないだろう(新聞社の科学記事の書きぶりから考えると概ねそのようなものだし、行政官でも区別のできなかった人を何人か知っている)。

 だから、私はこの種の質問をされると困る。ひたすらに困るしかないのだ。ただ、何故困っているのかを説明し、質問を無視しているわけでも、質問している”あなた”の人格を軽んじている訳でも、はぐらかしている訳でもないが、科学的には答えることが不能である事を一生懸命説明する事はできる。それでも理解していただけないこともあるが、私の限られた経験から言えば、とりあえず一生懸命説明しようとする誠意だけは伝わる事が多い。

 だが、それで納得していただいたとしても、それはもはや「安全性の議論」ではないし、科学者と市民の対立 (大抵の場合はすれ違いであって対立ではない事が多いが)の解消でもないことは押さえておかなくてはならない。私は、科学者や技術者には、スポンサーとしての市民にわかりやすく説明する義務はあると思う。しかし、時にこんな要求をされるのだが、自然科学上の問題を義務教育を終えた水準の人にもれなく理解できるように説明することは、非常に難しい。

 その努力を惜しむものではないが、改良していない昔の作物の品種やら、300年前から変わっていない製法の餅菓子を喜んで受け入れる人々にきちんと伝わるように説明をする自信は、いまのところ無い。それは知識や知性の差異の問題ではなく、おそらく信仰の違いの問題なのだ。

 異論・反論承る。

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2007年11月23日 (金)

ヒトiPS細胞の衝撃

ヒトiPS細胞の実現によって、本格的な再生医療に向けた新たな時代が幕を開ける。

昨年8月、京大再生研の山中伸弥教授と高橋和利特任助手がマウスのiPS細胞の誘導に初めて成功したとCellに発表。体細胞を形質転換することで発生の初期化を行い未分化の状態を作り出す技術だ。

# 植物ならさ、”カルス化”に近い。

これまで、受精胚やクローン胚を作成・破壊しなければならないES細胞と比べて、生命の出発点とも言うべき「胚の破壊」を行なわないので、キリスト教社会においても倫理上の制約は少ないため、研究が進めやすいと考えられてきた。

今般、山中伸弥教授らは、同様の手法でヒトiPS細胞の誘導に成功したと11/20のCellに発表。 Wisconsin大学のグループも11/22のScience (On line)で同様の成果を発表。ただし、導入した遺伝子のセットは半分が違う。

山中グループ           Oct3/4、Sox2、c-Myc、Klf4 

University of Wisconsin-Madison  Oct4、Sox2、Nanog、 Lin28

初期化の際に動く遺伝子群にも数段のカスケードがあると仮定するならば、上流・下流の違いがあるのかもしれない。また、ある種の個人差もあるのかもしれない。そこはまだわからない。

今のところ、遺伝子導入にレンチウイルスを使っているので、作成されたiPS細胞の株ごとに組み込み位置を確認しておかないと、思わぬノックアウトやネガティブ・ドミナンスが起こらないとも限らないので要注意だ。レンチウイルスベクターを使用した遺伝子治療と同様のがん化も懸念されている。

技術的な課題としては、細胞株樹立の効率化と、がん化の抑制がある。がん化抑制のためにアデノウイルスベクターの利用も検討されている様だが、こちらもDNAウイルスであるのでその辺はどうなんだろう(核外で増殖する分には問題ないとは思うが)。センダイウイルスの方が良いかもしれない。

科学的な問題としては、両グループの採用した遺伝子セットの違いの原因、及ぼす作用の究明がある。こっちも重要なのだが、こっちのファンドを大きくすると技術開発のほうが遅れをとるかもしれない。

さて、アメリカはこれまでヒトES細胞を使用する研究予算案に対して大統領が署名を拒否してきた。選挙の基盤であるキリスト教会に対する配慮がその背景にあると考えられるのだが、今般のヒトiPS細胞誘導の成功はその躊躇の理由を一掃するものだ。ホワイトハウスも早速声明を発表し「科学の高尚な目標と人命の神聖さの双方を傷付けることなく、医学的問題を解決できる方法」と持ち上げた。ちなみに、ローマ法王庁も「現時点でわれわれはその研究を合法的とみなしており、それ以上の検証は行わない」とコメントしたらしい。

一方、日本も文科省が5年間で70億を投入と言う報道が読売新聞から出ている。多分、観測記事だろう。平成20年度概算要求はとっくに出ている。果たして、単年度で14億の予算を受けられるキャパが日本の研究機関にあるのか?実際に文部科学省のホームページから予算関係の文書の数字を拾ってみると、そうではなくて、再生医療実現化全般と言う意味で、第二期予算の20年度分が1,510百万円計上されている。この予算枠であれば、記事とはだいたい数字があう。

もし、このことを指すのであれば、

「文部科学省は、京都大のグループが、あらゆる臓器・組織の細胞に変化する能力を持つ「ヒト人工多能性幹細胞 (iPS細胞)」の作製に世界で初めて成功したのを受け、 iPS細胞利用を中心に据えた再生医療の実用化研究に本格的に乗り出すことを決めた。」

という、読売新聞の記事は前提が間違っている。再生医療実現のためのプロジェクト研究は基礎研究段階から連綿と続いており、再生研の業績で急に実用化予算を組んだ訳ではない。それに、現段階では、先端医療としての実用化に入る前に解決しなくてはならない問題が山ほどあることも、プロの行政官たちは良く分かっている。

アメリカの反応?受精卵を破壊するというタブーがなくなったからには、多額の政府予算が投入され、今後爆発的な勢いでこの分野の研究が進められるだろう。日本のように再生医療を目指した研究ばかりではなく、コラーゲンを生成する細胞の自家移植でシワ取りアンチエイジングやら、脂肪組織の幹細胞の移植による美容整形、あるいは膵臓以外の臓器でインシュリンを産生させてI型糖尿病を治療する遺伝子組換え治療など、 QOLを普通以上に向上させたいお金持ち向けのニーズもまた沢山あるのだろうからそれを専門に手がけるベンチャーも生まれてくるに違いない。なにしろお金さえ出せばペットのクローンを作る会社まで現れる国なのだ。SFまがいの近未来はもうすぐかもしれない。

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2007年11月22日 (木)

本当に必要な人材の育成ならば金くらい出さなきゃ

私こと、謎の熱病で静養中だが、だいぶ良くなってきたので退屈しのぎにブログを更新することにした。

昨日、郵便受けに自衛隊生徒募集のチラシが入っていた。中卒から4年間お勤めすると3等陸(海、空)曹に任官、 入学時の初任給は15万円あまり、という条件だ。

ここで自衛隊の必要性を論じるつもりは無いが、自衛隊生徒は特別職国家公務員として給与が支給されるからには、 国にとって必要な人材に相違ない。

翻って、東大大学院の授業料免除は?というと、まだそこまでは行っていない。

# めぼしい人材は早めに助教にして囲ってしまう手はある。

本当に必要な人材の育成であれば、学生のうちから誰かが給料を出してくれても良さそうなもんだが、そんな話は聞いたことが無い (企業の奨学金以外は)。博士号取得後でも、研究予算の都合で格付けの低いPDで雇われる場合、高給の学振の研究員で雇われる場合、 任期つき研究員で雇われる場合、etc. 様々なコースがある。

しかし、悪くすると、すぐにでも高学歴フリーターに転落する。アカデミックポストにしがみ付く気が無い人であっても、 この国のシステムは新卒以外の人材登用にきわめて冷淡なので、企業に勤めるのもそれほど容易ではない。

東大の授業料免除はそこまで見通しているだろうか?それともブランド力があるからうちの卒業生は大丈夫と思っているのだろうか。 結論は数年先には出る。

さて、「社会に必要な人材」という人物像には複数の実体がありうるように思う。例えばスペアの効く歯車のように、 組織を動かす上でなくてはならない人材と、余人を以て代え難い人材と。

短期的スパンで考えるならば、毎年企業に入社するフレッシュマンは前者の意味で必要な人材であり、 長期的なスパンで社会に貢献するという意味では、 特異的な研究領域で最先端を突っ走る研究者は後者の意味で社会に必要な人材と言うことになるだろう。兵隊型と職人型とでも言おうか、 ライン型人材とスタッフ型人材と言おうか、そのような位置づけの違いはある。

大方の企業も役所も、後者のタイプの人材の活用が下手なように思う。 もっともスタッフ型の人材ばかりで組織を動かすのは大変だろうから、職人さんもいずれは慣れないラインに組み込まれて中間管理職になって、 余計な汗を流す姿をそこかしこで見ることになる。

# 自分の数年後の姿がそうなっているかと思うと、ぞっとする。

要は何が言いたかったかと言うと、ラインは定型的な仕事は得意だが創造的な仕事は苦手、スタッフはその逆の傾向があるので、 独創性を重んじた科学技術立国を目指すのであれば、 企業や政府の組織も博士を中途採用してスタッフ的な人材を上手く生かしていく方策を探らなければ、大学院だけが授業料を無料化しても、 本当の意味での専門家を育てることはできないと言うことだ。今の労働環境を考えると、 先読みのできる優秀な人材ほど常勤職員を目指して早く就職してしまうことになるだろう。それでは科学技術立国は覚束ない。

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2007年11月20日 (火)

発熱

18日日曜から発熱。38-39度の熱が続いている。ブログなんか書いてる場合じゃないのだが、覚え書きのため。

日曜の当番病院に行ったら、体温測定、尿検査後、イミュノクロマトでインフルエンザの抗原検査。15分後、 コントロールのバンドしか出なかったのでシロ。

その間に聴診で喘鳴、ラ音の確認、異常なし。咽頭を視診、異常なし。背中、腹部の触診で異常なし。むくみ、黄疸なし、 白目も黄ばんでません。

# リンパ節の触診はして無い。

ということで、インフルエンザでも一般的な風邪の所見でも無いと思うのですが、処方された薬は、抗生物質(クラビット錠)、解熱剤 (ポンタール250mgカプセル)、複合感冒薬(サラザック顆粒)、痰きり(小青龍湯エキス)・・・だから、風邪じゃないと思うんですけど、 どうなんでしょうこの処方って。

幻覚なし、見当識正常。若干の筋肉痛、刺すような頭痛あり。

ポンタールの副作用のせいか、19日午後3-4時くらいと20日早朝3-4時くらいに激しい悪寒、手足の冷感、うっ血あり。 ポンタールの副作用情報と一致する。この薬は腎疾患の患者への投与は要注意なので、尿検査の際にはタンパクは出てなかったのだろう。 副作用があまりに辛いので20日朝のポンタールを止めたら熱がぜんぜん下がらない。しょうがないので、 勝手ながらカプセルを開けて1/2量にしてのんだ。夜半また悪寒で目が覚めるようだと辛いな。

18日だけで体重が2kgも減った。血圧は117/87くらい。脈拍121(!)。そりゃ苦しいはずだ。 1時間ごとにポカリスエットを200cc摂取。1時間ごとに、ジップロックに入れたぬれタオルを自分で交換。嫁さんは寝てるし、 自分自身で寝ずの看病をしてるような有様。

私はこれまで39度近くの高熱が3日も続いたことは無いし、 ただの風邪にしては何かおかしい気がするので明日は熱が引かなかったら別の病院に行ってみよう。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます。 今日はあんまり元気じゃ無いけど。

 

2007年11月15日 (木)

トランス脂肪酸と遺伝子組換え大豆

昨日夜9時のNHKニュースで、非組み換えダイズの国際価格上昇の原因として、

  • バイオエタノールブームでダイズからトウモロコシに転作
  • アメリカ国内のトランス脂肪酸不使用ニーズに応えて、トランス脂肪酸を含まないタイプの遺伝子組換えダイズへの転換が進む

というのが挙げられていた。

アメリカの消費者が、合理的な判断に従って、 NON-GMという根拠のない安心感よりもトランス脂肪酸を含まない安全性を積極的に選択したのか、はたまた、「トランス脂肪酸にNO!」 という消費者の選択に対応して、 食用油メーカー主導でトランス脂肪酸を含まないタイプの遺伝子組換えダイズへの転換が進み消費者は何も考えていないのか、 そのあたりの原動力が何なのかは番組からはわからなかった。

一方で、日本でも今年あたりからモンサントがトランス脂肪酸を含まない遺伝子組換えダイズ(低リノレン酸の大豆(ビスティブ) )のプロモーションを行っている。育種戦略としては、

  • トランス脂肪酸低減は従来育種+遺伝子組換えによる除草剤耐性(第1世代)
  • 遺伝子組換えによるトランス脂肪酸低減Ver.1+遺伝子組換えによる除草剤耐性(第2世代)
  • 遺伝子組換えによるトランス脂肪酸低減Ver.2+遺伝子組換えによる除草剤耐性(第3世代)
  • 遺伝子組換えによるトランス脂肪酸低減Ver.2+オメガ脂肪酸+遺伝子組換えによる除草剤耐性(第4世代)

という、具合に、とりあえず市場のニーズには応える。でも、さらに徹底的に品質を改善して他社のダイズとの差別化を図る、 という段階的な改善を計画していたと思う。

平均的な日本人の食生活で、心疾患のリスクが高まるほどトランス脂肪酸を摂取することはないと言われており(1日摂取量が、 アメリカでは5.8g/day、日本では1.56g/day)、食品安全委員会や厚労省も特に対応が必要とは考えていない。一部に、 この対応を不十分だと指摘する声もあるが、私はそうは思わない。

なぜならば、食品安全委員会のとりまとめたこの資料のp.6によると、 平均的なマーガリン100g中のトランス脂肪酸の量が7gなので、 アメリカ人のトランス脂肪酸の日摂取量はマーガリンで言えば80g相当にあたる。市販のパック入りマーガリンは140-150g程度なので、 アメリカ人並みのトランス脂肪酸を全量をマーガリンで摂取しようとすると2日で1パック食べる計算になる。 こんな極端な食生活を送っている人は、私の周辺には、まずいないと思う。

・・・というか、アメリカ人の食生活って一体どうなってるんだろう?パンにマーガリンを塗るんじゃなくて、 すしネタ状のマーガリンにパンを乗せて食べてるのでは無かろうか。また、それだけ大量に脂肪をとり続けていると、 仮にトランス脂肪酸がゼロでも確実に太る。正直な感想を言えば、アメリカ人が気にするべきは、トランス脂肪酸の割合ではなく、 脂肪の総摂取量だと思う。心疾患のリスク”だけ”下げても問題はほとんど何も解決しない。

ちなみに、マーガリンは植物油脂の不飽和脂肪酸をを水素化して作る。 その際に、トランス脂肪酸が生成されるので、マーガリンはトランス脂肪酸がかなり多い食品であると考えられる。実際、 食品安全委員会の資料でもそうなっている。

マーガリン工業会でもトランス脂肪酸に関するコメントを公表しているが、 要は食べ過ぎなければ問題ない、という至極当然の指摘をしている。

・・・ ということで、皆さんも健康のために毎日マーガリンを半パックも食べるような食生活は送らないように気をつけましょう。

なお、上の方に書いたモンサントの第4世代ビスティブに含まれるオメガ脂肪酸というのは、DHAやEPAのこと。 青魚の魚油に多く含まれているので、イワシ、サバ、サンマなどをよく食べている日本人は、 わざわざダイズから取らなくても別に不自由はしないと考えられる。

でも、「オメガ脂肪酸リッチなお豆腐!普通のお豆腐に比べてDHAは256倍含まれています!」 と書いた豆腐が、「遺伝子組換えダイズは使用しておりません」とい豆腐と並べて売られていたら、 オメガ脂肪酸リッチの方を買うかもしれない。その頃にはアメリカでの遺伝子組換えダイズの作付けが間違いなく90%以上だろうから、 品質に違いがなければそっちの方が安いだろうし。

 

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2007年11月 9日 (金)

cisgenesis と intragenesis

Cisgenesis, intragenesisというのは、あまり聞いたことがない用語だと思う。

オランダ、 ワーゲニンゲン大学のSchoutenらがtransgenicに対立する概念としてcisgenicと言う考え方を提唱している。

特に遺伝子組換え作物に関わる分野で使われ始めているようだが、意味は、従来から使われた来たself cloning (セルフクローニング), natural occurence(ナチュラルオカレンス)とほぼ同義。大雑把に言えば 「自然状態で遺伝子を交換するある生物種から他の生物種へのin vitroの技術による遺伝子導入(技術)のうち、プロモーター、 イントロン、ターミネータも本来の組合せであるもの。なおかつ外来遺伝子は含まない。」というところ。いわば、”植物の遺伝子治療”だ。

この技術で作成された植物は"Cisgenic plants"と呼ぶようだ。

提唱者は、プロモーターからターミネーターまで一体として自然な状態を維持しており、しかも種の壁をrespectするものなので、 その意味において遺伝子組換え技術とは根本的に異なるものであるから、Cisgenic plantsは、 実験や栽培において現行の遺伝子組換え生物に対する法規制の枠の外に置かれるべきであると主張している。

さて、この定義に従ったところで、実体論としてそれが実現可能かどうかは議論があるだろう。どうしたら選抜可能か? アグロバクテリウム由来のT-DNAはどう考える?etc.一連の技術革新が必要だろう。

一方で、そうまでして技術を開発し、国際・国内規制を改変したとして、はたして一般消費者はCisgenic plantsをGMOではないと認識するだろうか?たとえば、極端なことを言えば、Cisgenic plantsは栽培の条件さえ整えば、 Organicの認定を受けられるだろうか?

Cisgenic plantsの製造プロセスは、客観的に見ても遺伝子組換え技術そのものになるであろうし、 そうなるとハイテクで作られた食品は”何となく気持ちが悪い”と漠然と感じている消費者を理詰めで説得できるとは思えない。また、 種苗マーケットから大企業や政府、 科学者の影響を排斥したいと考えているOrganic指向のロハスな人々に対するインパクトも望めないだろう。

となると、cisgenesisで作った作物は、栽培と食品表示についての政府の規制は従来の作物並みだが、 可能な変異の拡大幅は従来育種のそれを超えられず、消費者の側からはGMOに見える、というものになるだろう。そうなると、 技術革新と規制緩和のためのロビー活動にエネルギーを注いだ割には、あまり報われない可哀想なものになるのではないか?

・・・ということで、私は、そんなに無理矢理に外来遺伝子を排除する技術を開発しなくても、 現行技術でよりよいGM作物を作った方が良いではないですか、と思ってしまう。

なお、私はCisgenic plantsは製造過程は遺伝子組換え技術に依存しているものなので、最終的にProduct baseの評価を行った結果、十分な科学的根拠があれば、Cisgenic plantsをGMOから除外することに積極的に賛成。しかし、 現行の技術では作成にアグロバクテリウムを使えばT-DNAが残る公算は高いし、ベクターごと(場合によってはベクターだけ) ゲノムに挿入される事もあり、transgenic plantsもできてしまうので、実験段階から規制の埒外という訳にはいかないだろう。

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2007年11月 7日 (水)

レタスなりの利点

組換えレタスのエントリーを”引用”していただいたので、ちょっとだけ続編。

# どちらかと言うと、観察対象として”引用”するのでなく、トラックバックしていただいた方が、地味に嬉しかったりする。

さて、Dr. Daniellらの採用したレタスは、水耕栽培など施設栽培だと3週間程度で収穫できるという。組換えバクテリアにはかなわないが、サイクルが早いのがメリット。また、光もイネほどは要らない。

一方、イネだと施設栽培でも良くて年3作期。1サイクル3-4ヶ月(90-120日)はかかる。作期 x 単位面積あたりの組換えタンパク収量ではイネの方がレタスよりも多いが、少量でも良ければ20日程度で収穫できるレタスにもそれなりの利点はある。バクテリアにはかなわないが、ほぼオンデマンドで生産できる利点は大きい。

また、タンパク収率を考えると、イネのように炭水化物をためない方が良い事もある。フリーズドライでカプセルに入れれば非加熱で食べられる。デンプンが含まれている種子の場合は、どうしても加熱してデンプンを糊化しておかないと、生デンプン自体で消化不良をおこす。

私はレタスについては全くの素人なのだが、採種のことを考えると、レタスは虫媒花だが虫なしで自殖できるのか?抽台するには低温刺激が要るのではないか?など、ライフサイクルを施設栽培で完結させるには不利な性質もあるように思う。

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2007年11月 5日 (月)

「GMレタスは糖尿病患者を救うか? -インスリンのマウス経口投与実験」と言う記事

11/5の日経バイオテクノロジーのネタから。

ライターは宗谷 敏さん。題材は、University of Central FloridaのDr. Henry Danielの研究。

彼らの仕事は、医療用(あるいは健康機能性)を指向した遺伝子組換え作物の開発と言う意味で、 私たちのチームと分野を同じくしているので関心はある。

さて、11/2にアメリカで夕方のニュースでテレビ放送されたことで、 この仕事が注目されることになったらしい。が、もともと大学のプレスリーリースは6/30なので、 忘れた頃に掘り出してニュースにしてみたら世間の反響が大きくてビックリ、というところだろうか。Plant Biotechnology Jounalの論文の発表はこちら。 これも5/9にオンラインで公表されている。

ニュースのあらましは次の通り。

インスリン依存性1型糖尿病のマウスの経口投与治療実験にGMレタスで成功。 糖尿病マウスにヒトインスリンを蓄積する組換えレタスを与えたところ自己免疫障害が治癒し、 マウスは正常にインスリンを分泌するようになった。

教授はこのGMレタスには糖尿病予防効果はなく、より安価な治療に役立つのみだと言っている。研究結果はPlant Biotechnology誌に掲載されただけで、医学系ジャーナルには発表されていない。

医療関係者のうち糖尿病の専門医はこの事態を次のように見ている。 米国ピッツバーグ小児病院で糖尿病研究を30年間続けてきたMassimo Trucco博士が記事中で、 Daniel教授の研究のいく分か、糖尿病患者に対する治療効果は信じられるものだと回答している。

しかし、Trucco博士や多くの医学者はDaniel教授が採用したカプセルによる経口投与法を疑問視している。 どのような形のインスリンであっても、消化されてしまうため胃から血液へは移動できないのではないかという問題である。

Daniel教授は、今年8月、フリーズドライしたGMタバコをマウスに経口投与する実験に成功しており、 植物細胞壁がインスリンを守り、胃を通過して無事に腸管にまで届くと説明している。インスリンは腸から吸収されるというのだ。 医薬品としては、当然ながらこの確率・信頼性が先ず問われるところだろう。

さて、幾分ちぐはぐな所のある記事だ。私は、アメリカのテレビ放送の構成によって引き起こされた問題だと思っている。 おかしな点は以下の通り。

  1. 「このGMレタスには糖尿病予防効果はなく、より安価な治療に役立つのみだと言っている。」
  2. 「Daniel教授が採用したカプセルによる経口投与法を疑問視している。どのような形のインスリンであっても、 消化されてしまうため胃から血液へは移動できないのではないかという問題」
  3. 「インスリンは腸から吸収されるというのだ。」

ニュース冒頭で、”1型糖尿病であって、自己免疫障害だ”としていているのだから、このニュースの編集者は、 この1型糖尿病は自己免疫疾患の一種であることと、治療のメカニズムが免疫寛容によるものである事を理解しているのではないかと推定される。

一方で、おかしな点その1.、教授は「このGMレタスには糖尿病予防効果はなく、より安価な治療に役立つのみだと言っている」。 しかし、このレタスに自己免疫疾患の治療薬としての作用があるのであれば、インスリンに対する特異的T細胞を抑制するので、 おそらく予防効果もあるはずだが?

次、おかしな点その2.。そもそも、どんなペプチドも胃から血液には移動しないはずだ。オリジナルの論文を読めば明らかなように、 免疫寛容を意図したインスリンの投与では、注射薬のように完全な状態のインスリンが血液に入る必要はない。 腸管で樹状細胞に取り込まれれば良いのだし、仮に分解しない状態で樹状細胞に取り込まれても、免疫寛容を引き起こす為には、 細胞内で分解されなくてはならないので、活性にあるインスリンとしては機能しない。

しかも、オリジナルの論文を読めば明らかなように、レタスの細胞内に蓄積されるのは、インスリンそのものではなく、 その前駆物質であるプロインスリンだ。これは分泌細胞内で分解を受けて活性型になる以前の物質で、注射してもインスリンとしては作用しない。 コメントした糖尿病の専門医は十分な情報を与えられずにコメントをとられたのだろう。気の毒に。

そして、その3.たしかに腸から吸収されるのだが、その2.でも書いたように、その物質はインスリンではない。この書きぶりは、 注射薬のインスリン同様、インスリンを腸から吸収させることを期待しているようだ。しかし、ちょっと考えればわかると思うが、 インスリンは投与量を間違えると、ショック症状を起こし、悪くすると死に至る。ドーズの調節が非常に重要だ。 植物体内で作らせたタンパク質は細胞壁で保護されるとはいえ、なりゆきで消化液に適当に分解されながら腸管から吸収される。従って、 腸管からの吸収量の厳密なコントロールは不可能だ。このデリバリーシステムは、 量のコントロールのシビアな注射薬と同じメカニズムで作用させるインスリンの投与には向いていない。

おかしな報道をされたが、研究の内容の方は若干、"んー、どうかな"と言う点はあるものの(マウスに免疫寛容を起こさせるのに、 使ったのはヒトのプロインスリンだよね。大丈夫かい?)、概ねまっとうだ。

ただ、私たちのグループでは、元々タンパク質を貯蔵する組織である種子に外来のタンパク質を貯蔵させているが、彼らは、 レタスという葉物を材料にしている。葉物で細胞あたりのタンパク質の蓄積量を高くするには、液胞で分解されないように、 それなりのトリックが必要だ。そのための葉緑体形質転換なのだが、パーティクルガンを使った遺伝子導入は、 ベクターのバックボーンも入ってしまうだろうから、できるだけ余計なものは含まないという医薬品の考え方にはそぐわない。また、葉物の場合、 個体内での個葉の成熟の度合いが様々なので、タンパク質の蓄積量のコントロールも難しいだろう。いずれ、 彼らも医薬品としての品質管理の問題に直面する事になるだろうが、レタスを選んだことで、潜在的なリスクを抱えてしまっている。 本当に大変なのはこれからですよ・・・CTB(コレラ毒素Bサブユニット)も使っちゃってるし。いずれ、 彼らはUSDAやFDAと戦うことになるかもしれない。

 

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2007年11月 4日 (日)

”なかのひと”の年齢推計

先週の水曜日から風邪(?)でダウンしてしまった。・・・とはいえ、頭がぼーっとしているだけで、 おそらく外見上は異常がなかっただろうと思う。

だるい、のどが痛い、耳下腺がはれる、右わき腹のリンパ節も腫れる、セキが出る、緑色の濃い痰が出る、 若干の悪寒と関節痛があるetc.と言う症状。熱は無いので、インフルエンザでは無いだろう。

こういう場合は、病院に行っても、大抵のどの奥を見て「咽頭炎ですね。抗生物質を出しておきましょう。」といって、 効き目のおとなしいマクロライド系抗生物質をを処方してもらっておしまいである。のどが痛くて腫れているんだから、 医者に言われなくったって咽頭炎だと言うことくらいは私にも分かる。結局、薬を飲んで寝てるしかない、 ということになるので病院には行っていない。

緑色の痰が出てると、緑膿菌の二次感染(緑膿菌は日和見感染菌なので、最初からこいつらが主犯ということはまず無いだろう。 私はそれほど高齢でも無いし、そんなに体力が弱っていないので・・・。なので、 時期的に見ても最初はライノウイルスか何かそんなもんの感染でしょう)が疑われる。そこで、マクロライド系抗生物質なんでしょうかね。 Googleで"緑膿菌 マクロライド系"で調べると面白いことが分かる。

"マクロライド系抗生物質が緑膿菌自体には抗菌作用を持たないにも係わらず臨床効果が認められていました。 それはマクロライドを構成する糖鎖配列により、バイオフィルムを破壊、消失するためであることが解明されました。"

・・・とか。原理はさておき、臨床的には効くものは効く、ということもあるんですね。また、

"この系の薬剤は抗菌作用に加えて、 IL-8抑制→好中球抑制、ICAM-1抑制→ウイルス、好酸球も抑制、MUC5抑制→ムチン合成抑制→痰の分解、上皮細胞や腺細胞の Clイオン輸送を抑制→鼻水抑制、モチリンレセプターに結合→モチリンアゴニスト→消化管蠕動運動促進作用、バイオフィルム形成抑制 (緑膿菌)→抗炎症作用など様々な作用を持つ。 "

・・・とか。これは抗生物質なんですが、それ自体、抗炎症作用もあるし、痰も切れるという風邪には重宝な薬ですね。ああ、 医者に行っときゃ良かったかな。とはいえ、だるいのと、関節痛だけとりあえず何とかしたいので、アスピリンを飲んでごまかすことにした。

定番の「バファリン」ではなく「バッサニン」・・・声に出して読んでみるとよく似た響きのジェネリックが買ってある。成分はどうせ、 アセチルサリチル酸とpH緩衝剤なので、安い方を愛用している。あとは良く寝るだけ。 あんまり効かない上に高い総合感冒薬よりははるかにまし。

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さて、風邪談義はおいておいて、表題の件。

このブログでも、Webページにアクセスしたサイトの解析をする「なかのひと」というツールを使っている。 アクセスした方の所属組織のマッピングをするのと、アクセスした人の年齢階層、性別を推計する機能がついている。使ってみたが、 あいにくサンプル数が少ないとかで、性別分布は出力されなかった(おそらく、 アクセスのあったサイトが理系の職場に偏っているので男性の割合が非常に高いのではないかと想像するが)。推計年齢の分布は以下の通り。

なかのひと

50歳と20歳にピークのあるニ頂分布。

このブログは、あまりためになることが書いていないにもかかわらず、キーワードに惹かれてか、官公庁や大学・ 研究所からのアクセスが圧倒的に多い。しかも、理系の人の多い職場から平日にアクセスされている割合が非常に高い(なにせ、 週末になると平日の1/2-1/3程度のアクセスしかない)。なので、この年齢構成は、学生さんと教授という感じに見えなくも無い。この” なかのひと”のサービスを使っている他のユーザーの声によると、推計アルゴリズムは分からないにもかかわらず、 けっこう的中しているらしいので、このブログの実際の読者層もこんな感じなのかもしれないが、研究者のアウトリーチと言う意味では、 もっと若い年代の人々に読んでいただける様にしたほうが良いのかな。少なくとも、ニ頂分布のピークの高さが逆転する位の方がうれしい。

しかし、50歳が読者層のピークのブログって一体どんな内容なんだ→自分、と突っ込みを入れたくなってしまう。

今後の展開としては、あらたな読者層を開拓すべくこれまでに無いキーワードを並べてみようかな。

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