枯れっぷり
まずは先週9月13日のひまわり畑の写真から。
見事に枯れ上がっている。科学では、”なぜ”という問いの立て方は意味が無いので、こう問いを立ててみよう。 「ひまわりはどうやって枯れるのか?」
下ばえの雑草は青々としている。また、隣の畑の遅まきのひまわりもまだ青々としている。つまり、単に寒いから枯れている訳ではない。 下の古い葉が枯れている個体でも、上の葉はまだ青い。ということは古い葉から枯れるらしい。
葉が枯れる、ということは、そこにある葉の細胞が死ぬということだ。では「どのようにして古い葉から枯れるのか」。 枯れるときには何が起こっているのか?
植物のライフサイクルが1年以内に完結するものを一年性植物、複数年にわたるものを多年性植物という。雨季、 乾季がはっきりしている気候帯で生存している植物は、何とかして暑く乾燥した乾季をしのがなくてはならない。また、 冬の寒さの厳しい地域で生存している植物は、光の少ない氷雪の季節を生き延びなくてはならない。
その時にとる生存戦略にも色々ある。多年性植物の場合は、乾季には葉を落として表面積を少なくして乾燥に耐えたり、 もっと乾燥した地域に適応した植物は、球体に近い形の肉厚の組織に水を溜め込み、針のような葉をまとうものもある。寒さに耐えるように、 冬には葉を落として凍結に耐えるもの、樹脂をたっぷり含んだ緑の葉を冬も蓄えて春先の日光を独り占めしてスタートダッシュをかけるもの。 あるいは、栄養繁殖して増やした球根で耐え忍ぶなど様々だ。
一年性植物の場合は、環境が厳しくなると個体は潔く死んでしまう。そのかわり、世代交代して厳しい環境に耐えられる種子の生産に、 植物体に蓄えた物質とエネルギーのすべてを注ぎ込む。種子を生産することは、新しい遺伝子型の組合せを作り出す一方で、 厳しい環境を耐え抜いて生命をつなぐパッケージを生産することでもある。
その際に、いかに短い時間で、効率よく植物体の持っている栄養分やエネルギーを種子に託すかが一年生植物の生存にとっては重要だ。 枯れてゆく植物体に無駄な養分を残さないこと。環境が悪化するよりも早く、安全なパッケージにエネルギーを充填しておくこと。 その効率とスピードが生存と繁栄の鍵を握る。
栽培イネでは、多年生の比較的強いジャポニカ型と、一年生の比較的強いインディカ型がある。またアフリカイネ(Oryza glaberrima)は一年生が極端に強い。一年生の性質が強いイネは、 古くなって光合成能力が落ちてきた葉の窒素分や炭水化物を輸送して、新しい葉の成長や種子の登熟にあてる。
ちなみに、コムギのNAC遺伝子は葉の老化と窒素分の転流、 種子貯蔵タンパク質、亜鉛、鉄の貯蔵にまで影響していることが知られている。またイネのNAC遺伝子はストレスで誘導がかかる。 まるで世代交代を促すように。
そして、ひまわりが枯れる際にも、植物体から窒素分と炭水化物を種子に送っている。・・・に違いない。生憎、 ひまわりでその種の仕事をした論文を読んだことが無いもので。その部分は推測でしかありません。スミマセン。
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