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2007年9月 7日 (金)

MON863の安全性に関する食品安全委員会の見解 - pre 1

表題のネタは、食品安全委員会の議事録を読んでから、あと1回で終わりのつもりたっだのですが、今日(9/5)バイオテクノロジー・ジャパンのFood Scienceに松永和紀さんの記事(本編は有料です)が載ったので、急遽コメントすることにした。

黒影さんなど何人かのブロガーがフォローアップしている、モンサントの遺伝子組換えトウモロコシMON863の安全性に関するマスコミ各社とグリーンピースの”悪質な” キャンペーンに関する話題です。

食品安全委員会としての見解は、議事概要によれば専門調査会の意見を採用したのでこちら。議論の経緯は議事録が出るまでわからないので、今回はパス。

で、松永さんの記事についてのコメント。記事では食品安全委員会の結論を妥当としている。また、共同通信の記事で火付けに回った一方で、今回の特に懸念はないとする食品安全委員会の見解をフォローしていない新聞各紙を「新聞というメディアはとうとう、これほど無責任なことを平気でやるようになってしまったのだ。」と一刀両断している。

個人的には、「良くぞ言ってくれました」と評価したい。

だが、一ヶ所だけ扱いに気をつけた方がよい記載がある。以下に引用させていただくが、

どうもSeraliniの研究は、実験で使われた数百匹のラットの個体差を考慮にいれなかったところに致命的な問題があるようだ。 実験で使われるラットは、実験用に確立された遺伝的に均質なもの。だが、それでも個体差がある。さらに、環境的な要因も出てくる。 ラットは繊細で、食安委専門調査会で「特にケージで育っている間に、強いラットのそばにいる弱いラットは、 とかく虐げられるというような現象が現実にある」というような話が紹介されている。私も以前、「部屋のドアの近くにいるラットは、 神経質になって体重減少などの影響が出やすいから要注意」などという話を聞いたことがある。

この、「食安委専門調査会で「特にケージで育っている間に、強いラットのそばにいる弱いラットは、とかく虐げられるというような現象が現実にある」というような話が紹介されている。」というところ。

現象としてはそのような事象は確かにあるのだろう。しかし、専門調査会の議事録を注意深く読むと、この発言は毒性試験の専門家のものではなく、統計専門家の吉村先生がラットの個体差を説明する際の「たとえ話」として照会したものに過ぎないように読める。

虐げられたラットは、摂餌量も十分では無いかもしれないし、行動に異常があるかもしれない。また、その結果、体重も軽いかもしれない。一般にはそう言って間違いない。しかし、実際に毒性試験を行う場合は、個体間の競合を避けて、体重の増加と一頭一頭の摂餌量の相関も確認しなくてはならないので、一つのケージの中には一匹の動物しか入れない。だから、実験中の動物の体重の個体差が毒性試験期間中の動物の競合によるものだという事は考えられない。

また、試験開始前に動物の行動観察をして異常がないかを確認するし、試験開始時点では体重のばらつきがあまり大きくならないように揃える。だから、試験開始時点で虐げられて行動や体重に異常のある動物が紛れ込むこともありそうにない。

したがって、「特にケージで育っている間に、強いラットのそばにいる弱いラットは、とかく虐げられるというような現象が現実にある」という出来事自体は実験動物の飼育中に、現実によくあることとしても、毒性試験の際の個体の生育の差を説明するたとえとしてはあまり適切ではない。しかも、紹介した方は動物実験の専門家ではないと思うのだが、「専門調査会で紹介された」という箔を付けて紹介すると、あたかも毒性試験の際の個体差が競合によるものであることが専門家から事実として紹介されたかのように誤解されてしまう。

いらない誤解を招かない為には、誰の発言か、どのような文脈でされた発言か、という点にはよく注意するべきだろう。(自戒の念を込めて!)

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