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2007/08/30

よく理解しない者は、よく統治できない。

あまりに腹立たしい記事なので、やや旧聞だがコピペして残しておく (新聞記事はすぐに消えてしまうので)。

以下、朝日新聞の記事。

米大統領、戦前日本とアルカイダ同列視 歴史観に批判

2007年08月24日06時49分

 ブッシュ米大統領が22日に中西部ミズーリ州カンザスシティーで行った演説は、 自らのイラク政策を正当化するため、日本の戦後民主主義の成功体験を絶賛、フル活用する内容だったが、 半面で戦前の日本を国際テロ組織アルカイダになぞらえ、粗雑な歴史観を露呈した。 米軍撤退論が勢いを増す中でブッシュ氏の苦境を示すものでもある。

 冒頭は9・11テロかと思わせて、実は日本の真珠湾攻撃の話をする、という仕掛けだ。 戦前の日本をアルカイダと同列に置き、米国の勝利があって初めて日本が民主化した、という構成をとっている。 大正デモクラシーを経て普通選挙が実施されていた史実は完全に無視され、戦前の日本は民主主義ではなかった、という前提。 「日本人自身も民主化するとは思っていなかった」とまで語った。

 退役軍人の会合とあって、朝鮮戦争やベトナム戦争の意義にも言及。すべて一緒くたにして 「アジアでの勝利」は中東でも出来る、と訴えた。だが、米メディアは「日本や韓国は国民が同質的であり、イラクとは違う」 「歴史から間違った教訓を引き出している」などと批判を伝えている。

 民主党のヒラリー・クリントン上院議員は同日、イラクのマリキ首相の罷免を要求。 9月にはイラク駐留米軍のペトレイアス司令官の議会への報告があるが、抜本的な進展は見込まれておらず、 かえって一層の批判が予想されている。

 だが、ブッシュ氏が政策転換に踏み切る兆しはない。最近は、 第2次大戦末期に登場しながら不人気に終わったトルーマン大統領に「魅力を感じている」(関係者)という。 共産主義と戦う姿勢が後世、一定の評価を得たためとみられる。

 テロとの戦いにかけるブッシュ氏だが、 今回の演説は日本を含めた諸外国の歴史や文化への無理解をさらした。都合の悪い事実を捨象し、米国の「理想」と「善意」 を内向きにアピールするものとなっている。

     ◇

■米大統領演説の日本関連部分(要旨)

 ある晴れた朝、何千人もの米国人が奇襲で殺され、世界規模の戦争へと駆り立てられた。 その敵は自由を嫌い、米国や西欧諸国への怒りを心に抱き、大量殺人を生み出す自爆攻撃に走った。

 アルカイダや9・11テロではない。 パールハーバーを攻撃した1940年代の大日本帝国の軍隊の話だ。最終的に米国は勝者となった。 極東の戦争とテロとの戦いには多くの差異があるが、核心にはイデオロギーをめぐる争いがある。

 日本の軍国主義者、朝鮮やベトナムの共産主義者は、 人類のあり方への無慈悲な考えに突き動かされていた。イデオロギーを他者に強いるのを防ごうと立ちはだかった米国民を殺害した。

 第2次大戦に着手した時、極東の民主主義国は二つしかなかった。 オーストラリアとニュージーランドだ。日本の文化は民主主義とは両立しないと言われた。 日本人自身も民主化するとは思っていなかった。

 結局、日本の女性は参政権を得た。日本の防衛大臣は女性だ。 先月の参院選では女性の当選が過去最高になった。

 国家宗教の神道が狂信的すぎ、天皇に根ざしていることから、 民主化は成功しないという批判があった。だが、日本は宗教、文化的伝統を保ちつつ、世界最高の自由社会の一つとなった。 日本は米国の敵から、最も強力な同盟国に変わった。

 我々は中東でも同じことができる。イラクで我々と戦う暴力的なイスラム過激派は、 ナチスや大日本帝国や旧ソ連と同じように彼らの大義を確信している。彼らは同じ運命をたどることになる。

 民主主義の兵器庫にある最強の武器は、 創造主によって人間の心に書き込まれた自由を求める欲求だ。我々の理想に忠実であり続ける限り、 我々はイラクとアフガニスタンの過激主義者を打ち負かすだろう。

「粗雑な歴史観」とはよく言ったものだ。しかし、 戦時中の日本は有意の若者を特攻に送り出さなくてはならないほどに追い詰められ、道義を見失っていたという点では、 現在のアルカイダと相通ずるものはあるのかもしれない。

国家の指導者が国民の生命を軽視することは国民主権の考え方に照らせば間違っている。現代の日本の価値観ではそうだ。私も、 今日の価値観に照らして間違っていると思う。

しかし、戦前は天皇が主権者であり、国民は「臣民」であった。 憲法でもそうされていた。立憲君主制のすべての国で、君主制の原理に基づいて人命が尊重されない、とは思わないが、 戦前の日本において軍人は主人のために生命を投げ出すことが良しとされた思想的なバックボーンは君主制にあったのではないかと思う。 おそらくは、そのような価値観の下で国家の権力によって特攻が進められたのだろう。

では、現在のアルカイダはどうか?自爆テロを推進する思想的背景は何か?なぜ、 それが正しいとされて政治指導者が自爆テロを推し進めることができるのか?

あいにく、私には想像も付かない。イスラム文化圏について何か語るには、 知らな過ぎるのだ。

今、アメリカは、 その基本的な理解を欠いたまま力でイラクに圧政を敷いて民主主義国家を打ち立てようとしているように見える。戦後、 明らかになったアメリカの公文書などによれば、戦前のアメリカは、日本の文化や政治、歴史的背景をよく研究していたことがわかる。 日本研究を専門にしていた知識人も居たことだろう。

しかし、今日のアメリカはそれほど他国の文化、歴史、 政治体制に深い関心を持っているだろうか?既存の体制に代わって長期間にわたって国を支配するには、国民の目から見て「前の政権よりも良い」 ということが示されなくてはならない。それができない支配は長続きしない。

自爆テロの一点から戦前の日本とアルカイダを同一視するような理解力では、 良い統治者にはなれない。絶対に。

それは、自国の統治についても言えるのだ。

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