2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

最近のトラックバック

どこからきたの?

  • なかのひと

Google Analytics

« 2006年7月2日 - 2006年7月8日 | トップページ | 2006年7月16日 - 2006年7月22日 »

2006年7月9日 - 2006年7月15日の記事

2006年7月14日 (金)

「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」について

 「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」 と題して文部科学省が2006年7月23日締め切で意見募集をしている。

 以下私の見解。

 報告書案によれば、不正行為とは、1.研究活動の本質および2.研究成果の発表において、「その本質ないしは本来の趣旨を歪め、 研究者コミュニティの正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為」と定義している。具体的には「得られたデータや結果の捏造、 改ざん、 及び他者の研究成果等の盗用に加え、同じ研究成果の重複発表、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップ」 等をあげている。 また、不正行為にならない例として 「科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果が結果的に誤りであったとしても、 それは不正行為にはならない」としている。

 これを見ると、”科学的に不適切な方法により得られた実験結果に歪んだ解釈を施して、 マスコミ等を通じて社会に流布することを目的として公表する行為”は次の点から「研究活動の不正行為」にはならないと考えられる。

  • 社会に広く誤解を与えることを狙った行為であっても「研究者コミュニティー」においては 「正常な科学的コミュニケーションを妨げる」ことにはならない。つまり、荒唐無稽な実験結果の解釈であっても、 まともな研究者は惑わされることは無いので、「正常な科学的コミュニケーションの妨げ」にはならない。
  • 同様に、実験の達成しようとする目的に照らして、不適切な実験設計・実験管理であったとしても、学会発表やWebでの公表、 記者発表のようにピア・レビューを経ていない”言いっぱなし”の研究結果の発表は研究活動の不正とはいえない。なぜならば、 「得られたデータや結果の捏造、改ざん、及び他者の研究成果等の盗用に加え、同じ研究成果の重複発表、 論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップ」のいずれにも該当しない。

 つまり、この報告書案に従えば、たとえ”社会に誤解を与えることを意図して”不適切な実験設計、不適切な実験管理を行い、ピア・ レビューを経ずにいい加減な発表を行っても、「研究活動の不正行為」とはいえないことになる。

 報告書の基本的な考え方には、科学における不正行為は「科学の本質にはんするものであり、人々の科学への信頼を揺るがし、 科学の発展を妨げ、冒涜するものであって許すことのできないもの」としている。この基本認識に鑑みれば、上記の” 科学的に不適切な方法により得られた実験結果に歪んだ解釈を施して、マスコミ等を通じて社会に流布することを目的として公表する行為” もまた、科学における不正行為の一つとして認識されるべきものである。

  以上。

 とはいえ、学会発表の段階では、実験のプラン、方法、管理についてはピア・ レビューされていないものが大半であろうし、発表者の”意図”で行為を禁止したり、裁いたりすることは普通はできないだろう。とはいえ、 公費を投入した研究からPusztaiやErmacovaのようなのが出てきて野放しにされるのだけは耐え難い。

 まぁ、公的研究資金でそんなろくでもない研究をする輩が居るとは思わないけれども。

 

2006年7月12日 (水)

研究者の神頼み

 今日も科研費の流用がニュースになった。 見出しは、”国立天文台教授が科研費で「神頼み」、お札購入に流用”

 以下に記事の一部を引用する。

 

しかし実際には教授はこの「謝金」を、会議の際の飲食代やタクシー代、研究メンバーの結婚式の際の祝電代などに使っていた。   また太陽観測衛星に積み込む望遠鏡での観測実験成功を祈るため、秩父神社(埼玉県秩父市)のお札を8000円で購入した。

 ・・・・絶句するほか無い。大体、科学者ともあろうものが神頼みだなんて。しかも、

 

教授がお札を買っていた秩父神社は、「星の神様」とされる「妙見様」という女神をまつっている。

 太陽観測衛星なのに、「星の神様」とは。太陽のことでお願いするならやっぱり天照大神でしょう。しかも、 この一件については、

 

小暮智一・京都大名誉教授(天文学)は「今回のケースは明らかに『研究目的』から外れており、   少額といっても許されるものではない。だが、研究者は長い時間をかけて一つの実験に没頭することが多く、   神頼みしたくなる気持ちは理解できる」と話している。

 「神頼みしたくなる気持ちは理解できる」・・・って、でも研究費で神頼みしてもご利益があるんでしょうか?

 さて、研究者の皆様、神頼みをするのなら自ら汗をかいて稼いだポケットマネーでいたしましょう。

# あれっ?論点がずれてる?

2006年7月10日 (月)

Irina Ermakova氏の行った実験について

 どうなのだ?この報道は。

<大阪>遺伝子組換え大豆 安全性に疑問の研究結果

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060706-00000010-abc-l27

(朝日放送) - 7月6日19時56分更新

 マスコミは科学の専門家ではない。しかし、専門家に事実か否かの照会くらいはできるだろう。 なぜニュースソースの確実性を検証しないのか?

 この科学者(?)Irina Ermakova氏の行ったとされる実験をめぐる事実関係については、 農林水産省のホームページにも掲載されている。

http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/qanda.htm#ans5_7

 なお、実験の過程、結果については以下のURLにIrina Ermakova氏自身の報告があるのでごらん頂きたい。

Influence of Genetically Modified-SOYA on the Birth-Weight and Survival of Rat Pups: Preliminary Study

http://www.mindfully.org/GE/2005/Modified-Soya-Rats10oct05.htm

この予備的実験については以下のような反論もある。

「科学」の名に値しない遺伝子組み換え毒性試験(1)

「科学」の名に値しない遺伝子組み換え毒性試験(2)

http://www.kenji.ne.jp/2006/060709.html

 さて、最初の朝日放送は次のように報道を締めくくっている。

 

しかし厚生労働省は、遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、   安全性を確かめる実験すらほとんど行っていないのが現状です。今後、遺伝子組み換え食品の安全性について、   科学的な立証と食品の表示義務を求める動きが広がりそうです。

 食品の安全性についての行政上の権威は内閣府の食品安全委員会である。厚生労働大臣の諮問に対して食品のリスク評価を行い、 関係大臣に勧告する。また、リスクコミュニケーションも主体的に担当する部署でもある。一方、リスク管理については、 関係省庁が行う事となっている。

 ”遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、 安全性を確かめる実験すらほとんど行っていないのが現状です。”という現状認識は概ね正しい。より正確には、” 遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、 安全性を確かめる実験を行っていないのが現状です。”と言うべきではあるが(現行制度では、実験を行うのは申請者であって国ではない)。 食品に関して慢性毒性試験が行わることになっているものは、食品安全委員会のホームページによれば、食品添加物の一部、 農薬の一部など人の健康に危害を与える可能性が想定される物質等が特定されているものに限られている。この場合でも、先行する調査研究など、 論文で公表されているものがあればその内容を検討して評価する場合もあるが、基本的に、 具体的なリスクが想定される場合を除いてリスク評価が実施されないのは当然である。

 上記報道に対する私の見解は次のとおり。

 まず、この報道を行った社には「遺伝子組み換え食品の安全性について、科学的な立証と食品の表示義務を求める」 という目的がある。そのための要求を展開するための材料として、科学を後ろ盾としてIrina Ermakova氏の予備的な実験結果を利用するという方法をとった。しかし、実験結果が科学的検証に耐えるものではないことから、 当初の目的を達成するためには著しく不適切な結果となってしまっている。国民の不満を煽る効果はあるかもしれないが、 規制行政に対する圧力にはなりえない。

 Irina Ermakova氏の実験についてのコメントは次のとおり。

 ラウンドアップ・レディー大豆に、慢性毒性あるいは遺伝毒性があると想定するならば、 どのような物質によって毒性が発揮されるのかを仮定しないと、毒性を示す物質の1日摂取許容量を設定できないので、 物質をベースとした毒性試験の設計はできない。また、食品全体としての毒性試験を実施した例では、原子力委員会の食品照射専門部会で放射線照射食品の安全性評価を実施した例はあるので、 物質が特定できなくても必ずしも慢性毒性試験ができないと言うことにはならない。

 そのような意味では、この予備的実験は食品全体としての毒性試験を想定していると考えられる。だが、 予備的な試験の結果、”リスク”ではなく、この実験結果が示すほどの”大きな危険性”があると考えられるならば、 より詳細で大規模な実験を設計して実施するのが、科学者としてまともな判断である。Irina Ermakova氏は、 実証的な実験を追加することよりも、日本旅行を楽しむ方を選んだようだ。また、これまでの数年間でも相当量のラウンドアップ・ レディー大豆の油粕が家畜飼料に利用されているはずだが、家畜の産仔の死亡率が高まったという報告は聴いたことが無い。 たかだか数十頭のラットの実験結果よりも、知らせが無いことのほうが私ははるかに安心できる。

 いずれにしても、動物実験の結果を解釈する場合は原子力委員会の食品照射専門部会の議事録にもあるように、 動物実験は危険性がある場合にはそれを知る手助けにはなるものの、その結果を以て安全性を保障することは原理的にできないことは、承知しておかなくてはならない。

 Irina Ermakova氏の実験は、この議事録のタマネギの毒性に関する件を連想させる。そもそもの食品そのものに強い毒性がある場合の安全性の評価は非常に難しい。タマネギには溶血性の毒素が含まれており、イヌ・ ネコには非常に危険であることは古くから知られている。ダイズに含まれるレクチン・サポニンにも毒性があることは知られているが、だとしたらなぜ生のままのダイズを与えたのか私には全くの謎である。

« 2006年7月2日 - 2006年7月8日 | トップページ | 2006年7月16日 - 2006年7月22日 »

twitter

  • Bernard_Domon

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
    日本ブログ村
無料ブログはココログ