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2006年7月10日 (月)

Irina Ermakova氏の行った実験について

 どうなのだ?この報道は。

<大阪>遺伝子組換え大豆 安全性に疑問の研究結果

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060706-00000010-abc-l27

(朝日放送) - 7月6日19時56分更新

 マスコミは科学の専門家ではない。しかし、専門家に事実か否かの照会くらいはできるだろう。 なぜニュースソースの確実性を検証しないのか?

 この科学者(?)Irina Ermakova氏の行ったとされる実験をめぐる事実関係については、 農林水産省のホームページにも掲載されている。

http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/qanda.htm#ans5_7

 なお、実験の過程、結果については以下のURLにIrina Ermakova氏自身の報告があるのでごらん頂きたい。

Influence of Genetically Modified-SOYA on the Birth-Weight and Survival of Rat Pups: Preliminary Study

http://www.mindfully.org/GE/2005/Modified-Soya-Rats10oct05.htm

この予備的実験については以下のような反論もある。

「科学」の名に値しない遺伝子組み換え毒性試験(1)

「科学」の名に値しない遺伝子組み換え毒性試験(2)

http://www.kenji.ne.jp/2006/060709.html

 さて、最初の朝日放送は次のように報道を締めくくっている。

 

しかし厚生労働省は、遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、   安全性を確かめる実験すらほとんど行っていないのが現状です。今後、遺伝子組み換え食品の安全性について、   科学的な立証と食品の表示義務を求める動きが広がりそうです。

 食品の安全性についての行政上の権威は内閣府の食品安全委員会である。厚生労働大臣の諮問に対して食品のリスク評価を行い、 関係大臣に勧告する。また、リスクコミュニケーションも主体的に担当する部署でもある。一方、リスク管理については、 関係省庁が行う事となっている。

 ”遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、 安全性を確かめる実験すらほとんど行っていないのが現状です。”という現状認識は概ね正しい。より正確には、” 遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、 安全性を確かめる実験を行っていないのが現状です。”と言うべきではあるが(現行制度では、実験を行うのは申請者であって国ではない)。 食品に関して慢性毒性試験が行わることになっているものは、食品安全委員会のホームページによれば、食品添加物の一部、 農薬の一部など人の健康に危害を与える可能性が想定される物質等が特定されているものに限られている。この場合でも、先行する調査研究など、 論文で公表されているものがあればその内容を検討して評価する場合もあるが、基本的に、 具体的なリスクが想定される場合を除いてリスク評価が実施されないのは当然である。

 上記報道に対する私の見解は次のとおり。

 まず、この報道を行った社には「遺伝子組み換え食品の安全性について、科学的な立証と食品の表示義務を求める」 という目的がある。そのための要求を展開するための材料として、科学を後ろ盾としてIrina Ermakova氏の予備的な実験結果を利用するという方法をとった。しかし、実験結果が科学的検証に耐えるものではないことから、 当初の目的を達成するためには著しく不適切な結果となってしまっている。国民の不満を煽る効果はあるかもしれないが、 規制行政に対する圧力にはなりえない。

 Irina Ermakova氏の実験についてのコメントは次のとおり。

 ラウンドアップ・レディー大豆に、慢性毒性あるいは遺伝毒性があると想定するならば、 どのような物質によって毒性が発揮されるのかを仮定しないと、毒性を示す物質の1日摂取許容量を設定できないので、 物質をベースとした毒性試験の設計はできない。また、食品全体としての毒性試験を実施した例では、原子力委員会の食品照射専門部会で放射線照射食品の安全性評価を実施した例はあるので、 物質が特定できなくても必ずしも慢性毒性試験ができないと言うことにはならない。

 そのような意味では、この予備的実験は食品全体としての毒性試験を想定していると考えられる。だが、 予備的な試験の結果、”リスク”ではなく、この実験結果が示すほどの”大きな危険性”があると考えられるならば、 より詳細で大規模な実験を設計して実施するのが、科学者としてまともな判断である。Irina Ermakova氏は、 実証的な実験を追加することよりも、日本旅行を楽しむ方を選んだようだ。また、これまでの数年間でも相当量のラウンドアップ・ レディー大豆の油粕が家畜飼料に利用されているはずだが、家畜の産仔の死亡率が高まったという報告は聴いたことが無い。 たかだか数十頭のラットの実験結果よりも、知らせが無いことのほうが私ははるかに安心できる。

 いずれにしても、動物実験の結果を解釈する場合は原子力委員会の食品照射専門部会の議事録にもあるように、 動物実験は危険性がある場合にはそれを知る手助けにはなるものの、その結果を以て安全性を保障することは原理的にできないことは、承知しておかなくてはならない。

 Irina Ermakova氏の実験は、この議事録のタマネギの毒性に関する件を連想させる。そもそもの食品そのものに強い毒性がある場合の安全性の評価は非常に難しい。タマネギには溶血性の毒素が含まれており、イヌ・ ネコには非常に危険であることは古くから知られている。ダイズに含まれるレクチン・サポニンにも毒性があることは知られているが、だとしたらなぜ生のままのダイズを与えたのか私には全くの謎である。

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