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2006年7月の記事

2006年7月27日 (木)

つくば市「H18遺伝子組換え作物の栽培に係る対応方針(案)の実施結果について」が公表される。

 7月26日付けで、つくば市から、4月17日-5月15日に実施された「遺伝子組換え作物の栽培に係る対応方針(案)」(以下、 方針という)についての意見募集結果が公表された。
 賛否両論はいつものことながら、意見91件(25名)を26項目に要約して、それらに対して市の考え方を示している。

  • 賛成意見のためコメントなし:4項目
  • 「方針に沿って指導」あるいは「方針による指導で対応」に類する回答:8項目
  • その他個々の回答:14項目

 ここで言う、市の「指導」が行政手続法における「行政指導」のことであれば、その意味は「行政機関(同法2条5号) がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、 助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう」と定義されている。
 であれば、以下に示す行政手続法第4章(第32条から36条まで)の、行政指導の任意性、内容や責任者の明示、 基準の明確化などの基準に従うことが要請される。

第32条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、 いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。
 行政指導に携わる者は、 その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
第33条 申請の取下げ又は内容の変更を求める行政指導にあっては、 行政指導に携わる者は、 申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。
第34条 許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、 当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、 当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。
第35条 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、 当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
 行政指導が口頭でされた場合において、 その相手方から前項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、 行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
 前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
1.相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
2.既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、 磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、 電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。) によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの
第36条 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、 行政機関は、あらかじめ、事業に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
と、いうことで第35条によると指導の内容が明示されなくてはならないのだが、つくば市の方針は指導の内容を明示していると言えるだろうか? 残念ながら、方針は指導方針でしかなく、具体的な指導内容については触れていない。例えば、 一般ほ場で遺伝子組換え作物を栽培する場合の指導方針については以下のように記載されている。
(3)一般ほ場で行う栽培

① 実験指針に準じた対応をとること。
② 遺伝子組換え作物の栽培により生じた又は予想される諸問題に対し,即時対応措置をとること。
③ 一般農作物との交雑や混入防止の措置を徹底して行うこと。
④ 実験栽培開始の3箇月前までに計画の概要について,1箇月前までに詳細な計画について, この方針の5に掲げる事項を明記した栽培計画書を市に提出すること。
⑤ あらかじめ,農業団体及び近隣の耕作者や住民の十分な理解を得ること。
⑥ ほ場に栽培概要を記した看板を設置すること。
 つくば市は、この⑤について事業者に対してどのような指導を行うのか私にはさっぱり予想できない。事業者に 「農業団体及び近隣の耕作者や住民の十分な理解を得ること。」と書いた文書を手交するのだろうか?
 指導の際には方針に沿って具体的な指導を行うと言うことであれば、行政手続法違反とまではいえないものの、言ってみれば” 後だしジャンケン”のようなもので、あらかじめ指導に対して備えておくことはできない。事業者の側から見れば、 準備に時間のかかる作業については非常に対応しにくい内容と言わざるを得ない。

2006年7月21日 (金)

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2006年7月14日 (金)

「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」について

 「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」 と題して文部科学省が2006年7月23日締め切で意見募集をしている。

 以下私の見解。

 報告書案によれば、不正行為とは、1.研究活動の本質および2.研究成果の発表において、「その本質ないしは本来の趣旨を歪め、 研究者コミュニティの正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為」と定義している。具体的には「得られたデータや結果の捏造、 改ざん、 及び他者の研究成果等の盗用に加え、同じ研究成果の重複発表、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップ」 等をあげている。 また、不正行為にならない例として 「科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果が結果的に誤りであったとしても、 それは不正行為にはならない」としている。

 これを見ると、”科学的に不適切な方法により得られた実験結果に歪んだ解釈を施して、 マスコミ等を通じて社会に流布することを目的として公表する行為”は次の点から「研究活動の不正行為」にはならないと考えられる。

  • 社会に広く誤解を与えることを狙った行為であっても「研究者コミュニティー」においては 「正常な科学的コミュニケーションを妨げる」ことにはならない。つまり、荒唐無稽な実験結果の解釈であっても、 まともな研究者は惑わされることは無いので、「正常な科学的コミュニケーションの妨げ」にはならない。
  • 同様に、実験の達成しようとする目的に照らして、不適切な実験設計・実験管理であったとしても、学会発表やWebでの公表、 記者発表のようにピア・レビューを経ていない”言いっぱなし”の研究結果の発表は研究活動の不正とはいえない。なぜならば、 「得られたデータや結果の捏造、改ざん、及び他者の研究成果等の盗用に加え、同じ研究成果の重複発表、 論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップ」のいずれにも該当しない。

 つまり、この報告書案に従えば、たとえ”社会に誤解を与えることを意図して”不適切な実験設計、不適切な実験管理を行い、ピア・ レビューを経ずにいい加減な発表を行っても、「研究活動の不正行為」とはいえないことになる。

 報告書の基本的な考え方には、科学における不正行為は「科学の本質にはんするものであり、人々の科学への信頼を揺るがし、 科学の発展を妨げ、冒涜するものであって許すことのできないもの」としている。この基本認識に鑑みれば、上記の” 科学的に不適切な方法により得られた実験結果に歪んだ解釈を施して、マスコミ等を通じて社会に流布することを目的として公表する行為” もまた、科学における不正行為の一つとして認識されるべきものである。

  以上。

 とはいえ、学会発表の段階では、実験のプラン、方法、管理についてはピア・ レビューされていないものが大半であろうし、発表者の”意図”で行為を禁止したり、裁いたりすることは普通はできないだろう。とはいえ、 公費を投入した研究からPusztaiやErmacovaのようなのが出てきて野放しにされるのだけは耐え難い。

 まぁ、公的研究資金でそんなろくでもない研究をする輩が居るとは思わないけれども。

 

2006年7月12日 (水)

研究者の神頼み

 今日も科研費の流用がニュースになった。 見出しは、”国立天文台教授が科研費で「神頼み」、お札購入に流用”

 以下に記事の一部を引用する。

 

しかし実際には教授はこの「謝金」を、会議の際の飲食代やタクシー代、研究メンバーの結婚式の際の祝電代などに使っていた。   また太陽観測衛星に積み込む望遠鏡での観測実験成功を祈るため、秩父神社(埼玉県秩父市)のお札を8000円で購入した。

 ・・・・絶句するほか無い。大体、科学者ともあろうものが神頼みだなんて。しかも、

 

教授がお札を買っていた秩父神社は、「星の神様」とされる「妙見様」という女神をまつっている。

 太陽観測衛星なのに、「星の神様」とは。太陽のことでお願いするならやっぱり天照大神でしょう。しかも、 この一件については、

 

小暮智一・京都大名誉教授(天文学)は「今回のケースは明らかに『研究目的』から外れており、   少額といっても許されるものではない。だが、研究者は長い時間をかけて一つの実験に没頭することが多く、   神頼みしたくなる気持ちは理解できる」と話している。

 「神頼みしたくなる気持ちは理解できる」・・・って、でも研究費で神頼みしてもご利益があるんでしょうか?

 さて、研究者の皆様、神頼みをするのなら自ら汗をかいて稼いだポケットマネーでいたしましょう。

# あれっ?論点がずれてる?

2006年7月10日 (月)

Irina Ermakova氏の行った実験について

 どうなのだ?この報道は。

<大阪>遺伝子組換え大豆 安全性に疑問の研究結果

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060706-00000010-abc-l27

(朝日放送) - 7月6日19時56分更新

 マスコミは科学の専門家ではない。しかし、専門家に事実か否かの照会くらいはできるだろう。 なぜニュースソースの確実性を検証しないのか?

 この科学者(?)Irina Ermakova氏の行ったとされる実験をめぐる事実関係については、 農林水産省のホームページにも掲載されている。

http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka/qanda.htm#ans5_7

 なお、実験の過程、結果については以下のURLにIrina Ermakova氏自身の報告があるのでごらん頂きたい。

Influence of Genetically Modified-SOYA on the Birth-Weight and Survival of Rat Pups: Preliminary Study

http://www.mindfully.org/GE/2005/Modified-Soya-Rats10oct05.htm

この予備的実験については以下のような反論もある。

「科学」の名に値しない遺伝子組み換え毒性試験(1)

「科学」の名に値しない遺伝子組み換え毒性試験(2)

http://www.kenji.ne.jp/2006/060709.html

 さて、最初の朝日放送は次のように報道を締めくくっている。

 

しかし厚生労働省は、遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、   安全性を確かめる実験すらほとんど行っていないのが現状です。今後、遺伝子組み換え食品の安全性について、   科学的な立証と食品の表示義務を求める動きが広がりそうです。

 食品の安全性についての行政上の権威は内閣府の食品安全委員会である。厚生労働大臣の諮問に対して食品のリスク評価を行い、 関係大臣に勧告する。また、リスクコミュニケーションも主体的に担当する部署でもある。一方、リスク管理については、 関係省庁が行う事となっている。

 ”遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、 安全性を確かめる実験すらほとんど行っていないのが現状です。”という現状認識は概ね正しい。より正確には、” 遺伝子組み換え食品の安全性について、「慢性毒性等に関する試験は実施する必要がない」として、 安全性を確かめる実験を行っていないのが現状です。”と言うべきではあるが(現行制度では、実験を行うのは申請者であって国ではない)。 食品に関して慢性毒性試験が行わることになっているものは、食品安全委員会のホームページによれば、食品添加物の一部、 農薬の一部など人の健康に危害を与える可能性が想定される物質等が特定されているものに限られている。この場合でも、先行する調査研究など、 論文で公表されているものがあればその内容を検討して評価する場合もあるが、基本的に、 具体的なリスクが想定される場合を除いてリスク評価が実施されないのは当然である。

 上記報道に対する私の見解は次のとおり。

 まず、この報道を行った社には「遺伝子組み換え食品の安全性について、科学的な立証と食品の表示義務を求める」 という目的がある。そのための要求を展開するための材料として、科学を後ろ盾としてIrina Ermakova氏の予備的な実験結果を利用するという方法をとった。しかし、実験結果が科学的検証に耐えるものではないことから、 当初の目的を達成するためには著しく不適切な結果となってしまっている。国民の不満を煽る効果はあるかもしれないが、 規制行政に対する圧力にはなりえない。

 Irina Ermakova氏の実験についてのコメントは次のとおり。

 ラウンドアップ・レディー大豆に、慢性毒性あるいは遺伝毒性があると想定するならば、 どのような物質によって毒性が発揮されるのかを仮定しないと、毒性を示す物質の1日摂取許容量を設定できないので、 物質をベースとした毒性試験の設計はできない。また、食品全体としての毒性試験を実施した例では、原子力委員会の食品照射専門部会で放射線照射食品の安全性評価を実施した例はあるので、 物質が特定できなくても必ずしも慢性毒性試験ができないと言うことにはならない。

 そのような意味では、この予備的実験は食品全体としての毒性試験を想定していると考えられる。だが、 予備的な試験の結果、”リスク”ではなく、この実験結果が示すほどの”大きな危険性”があると考えられるならば、 より詳細で大規模な実験を設計して実施するのが、科学者としてまともな判断である。Irina Ermakova氏は、 実証的な実験を追加することよりも、日本旅行を楽しむ方を選んだようだ。また、これまでの数年間でも相当量のラウンドアップ・ レディー大豆の油粕が家畜飼料に利用されているはずだが、家畜の産仔の死亡率が高まったという報告は聴いたことが無い。 たかだか数十頭のラットの実験結果よりも、知らせが無いことのほうが私ははるかに安心できる。

 いずれにしても、動物実験の結果を解釈する場合は原子力委員会の食品照射専門部会の議事録にもあるように、 動物実験は危険性がある場合にはそれを知る手助けにはなるものの、その結果を以て安全性を保障することは原理的にできないことは、承知しておかなくてはならない。

 Irina Ermakova氏の実験は、この議事録のタマネギの毒性に関する件を連想させる。そもそもの食品そのものに強い毒性がある場合の安全性の評価は非常に難しい。タマネギには溶血性の毒素が含まれており、イヌ・ ネコには非常に危険であることは古くから知られている。ダイズに含まれるレクチン・サポニンにも毒性があることは知られているが、だとしたらなぜ生のままのダイズを与えたのか私には全くの謎である。

2006年7月 6日 (木)

われわれは等しく伝統の何たるかを知らない。

 日本の歴史上、縄文時代は概ね10,000年間、 弥生時代は概ね1,000年間。弥生時代は紀元前8世紀ごろから概ね3世紀までとされているので、それから今日の21世紀までの約2,700年がわが国の稲作の歴史のすべてである。 20,000年あまりの世界の農耕の歴史と引き比べても、わが国の稲作の歴史は斯くも短い。

 このわずかな時間に、稲を栽培してきた人々は水利の良い平野は勿論、山間部にまで水田を拓いた。また、この数十年間に限って言えば、世界中で作付けされる稲の北限である北緯44度近辺まで稲の栽培が可能になった。

 その間に、水田開拓のために森林は伐採され、用水の確保のために河川は改修されて葦原や渕は消えた。また、寒冷地に適応させるため積極的な交配育種が行なわれ、自然界には決して見れら無いほどの耐冷性を獲得した稲が育成されてきた。

 2,000年の間手作業で行なわれてきた農耕はやがて牛馬耕に取って代わられ、この数十年間に農作業はすっかり機械化された。また、化学肥料や農薬の普及は稲作の生産性を著しく向上させてきた。豊富な食料の供給は戦後の復興を下支えし、機械化によって生み出された余剰労働力は都市の経済成長の原動力となった。それでもなお、昭和30年代まで普通に米の飯を食べることができる人々は、ごく限られていた。

 「瑞穂の国」という言葉は美しいが、そこに宿っているイメージは幻想に過ぎない。われわれが伝統という言葉を使うとき、多くの場合、思い浮かべるのはせいぜいが高々数百年前のことなのだ。

 誰も、10,000年間の伝統を尊び縄文時代の狩猟と採取の時代に帰れとは言わない。機械化農業で作った米には魂が篭らないから農作業は手作業で行なうべきだとは言わない。が、なぜか化学肥料や農薬はいけないと言う人はいる。 化学肥料と農薬が今日の生産性を支えているにもかかわらず。

 これらの新しい技術のどれがいけないのか、私にはさっぱり分からない。大抵の場合、新しい技術は古い技術よりも優れていることが多い。そして、古い技術よりも本当に優れている場合には、その技術は伝統を乗り越えて普及することができる。勿論、普及せずに数多の技術が産み出されては消えていくことから、最新の技術が常に最良の技術とは限らない。

 遺伝子組換え技術は、今ようやくその普及の糸口に就いたばかりである。従来の品種よりも明らかに優れているならば普及し、従来の品種に代えるほどのメリットがなければ普及せずに消えていく。生産者、あるいは消費者の誰にとって優れた品種であるかという議論はあるにしても、遺伝子組換え技術で作り出された品種が今後普及するか否かは、余人がいかな議論をしようとも、その決着には時間のみが答え得る。

 だが、これは知っておいて欲しい。開発者は決してふざけてはいないのだ。日々、作業や実験に勤め、祈るような気持ちで結果を待つ。上手くいったといっては喜び、失敗したといっては臍をかむ。衆人環視の中で田植えをし、日照が少ないといっては組換えイネの生育を心配する。時には、炎天下の泥田で腰を痛めながら作業をし、生物多様性影響評価のため水田に殺虫剤が撒けないので、カメムシの繁殖に気を揉むこともある。

2006年7月 5日 (水)

植物病原性微生物の宿主域

 植物の病原体として知られる真菌や細菌の中には、植物以外の宿主に寄生するものがある。

 たとえばFusarium solaniは、ピーマン・ シシトウガラシ立枯症やニンジンの乾腐病の原因菌とされているが、臨床例としてヒトへの感染と患者の死亡が報告されている。 もっとも、この報告は白血病の治療のため化学療法によって免疫系の抑制された患者に限ったものであり、 免疫系が正常に機能しているヒトについては特に大きなリスクは無いものと考えられる。

 Fusarium属の真菌は作物の病害の原因菌としては非常に広く蔓延しており、 効果的な抗生物質は発見されていない(真菌に抗生物質があまり効かないこと自体は、よく知られた現象ではあるが)。

 また、植物の根頭がん腫病の原因細菌であるAgrobacterium tumefaciensは、 幅広い種の植物に感染することが知られており、遺伝子組換え植物を作成する際にも各地の研究室では普通に用いられている。近年、 実験室の環境下ではA. tumefaciensがヒト培養細胞にも感染し、 しかも外来遺伝子を導入することが報告された。 ヒトの個体と違って、培養細胞レベルでは免疫系による防御が無いため、さまざまな細菌による感染が成立すると考えられるが、A. tumefaciensに限って言えば、ヒトの個体にも感染して病気を引き起こすことが近年報告されている。

 いずれも稀な症例であり、 Agrobacterium自体が特に危険な病原性微生物であると示唆するものではなく、 特に実験室株の病原性を示唆するものではない。もっとも、 Agrobacteriumの実験室株についてヒトへの病原性を検証した例は恐らく存在しないだろう。 (そういう意味では、文部科学省の二種告示の認定宿主ベクター系の要件の書き方は、現状では病原性のある宿主をも含む可能性を排除できない。 )

 なお、Agrobacteriumの宿主域については、次のレビューがある。

 これは、Agrobacteriumが植物以外の幅広い宿主の形質転換に使用できるという総説で、酵母、 糸状菌からヒト培養細胞まで、Agrobacteriumで形質転換が行われた論文を列挙している。また、 植物よりも分子生物学的に精密な解析を行うことが期待できる酵母などを宿主とすることで、 Agrobacteriumによる形質転換の機構解明に役立つとしている点は非常に面白い。

 また、形質転換が困難な菌類のFunctional Genomicsの有効な方法としてAgrobacteriumの利用が適しているという総説も発表されている。

 

 

 と言うわけで、土壌微生物として知られている真菌や細菌は意外と宿主域が広いのだと言うことを記憶にとどめておこう。

2006年7月 4日 (火)

研究費不正受給?

 Google Newsで「研究費不正受給」を検索すると、このところ早稲田大学の松本和子教授のニュースが山ほどヒットする。

 だが、この問題の捉え方は、どこかおかしくないだろうか?国から配分された研究費を予算申請の研究期間内に使用しきらずに、 個人の投資信託で運用していたと言うことに問題があるのは論を待たない。研究予算の使い方としては至って不適切である。・・・ではあるが、 問題の本質は「不正受給」では無いと私は思う。

 問題のあった競争的資金はJSTの配分する科学技術振興調整費である(が、 配分された時点ではまだ文部科学省の直轄事業だったかもしれない)。ともかく、競争的資金は研究者の提出した研究計画を国が審査して、 予算を配分することが妥当と認められる場合に研究資金を提供する仕組みだ。従って、最初から研究者の申請内容と研究計画そのものに、 資金の提供元である国を欺く意図が込められているものであれば、「不正受給」になるが、 経費の執行を意図的に計画通り行わなかったこと自体は、「不正使用」ではあるが申請プロセス自体に不正行為が無いのであれば、「不正受給」 とは言えない。

 今回の事件が、もしも不正受給であるならば、国は松本教授を詐欺罪で告発するべきである。また、今回の件に絡んで、 財務省は今年度の科学技術振興調整費で新規に採択された申請に対する予算の算定基礎の洗い直しを指示したらしい。 おかげで106億円の研究費の執行が滞っているが、この指示は果たして本当に意味があるのか? 研究途上で得られた新しい知見に基づいて研究計画を途中で変更することは良くあることだ。スポンサーに対してきちんと理由を説明して、 正規の事務手続きを執れば、大抵のことは何とかなる(何とかならないとしたら、役所の事務担当者が上司に説明する能力が無いか、 説明する気が無いだけの話だ)。最初から数年先を見通した精密な予算要求は原理的に不可能だ。先のことが全て正確に予想できるのであれば、 その事業はもはや研究ではない。判らないことに挑むから研究なのだ。だから、大づかみの資金計画を申請することはできても、 研究初年度の時点で役所から「この人件費は本当に必要か?」とか「この設備費は適正か?」などと詰められても、 研究者がほとんど答えられないはずである。

 ・・・ 文科省のまともな担当官は、そんなことは先刻承知の上で財務省の再調査の要求に応えているのだろうが、 全くもってご苦労なことである。

 ことの本質が「不正受給」でなく「不正使用」であるなら、対応策は「事前チェックの強化」ではなく「事後評価と監査」のはずだ。 今後、予算要求時点で機関としての評価・監査体制まで採択基準に勘案するシステムにするというのでなければ、 付け焼刃で事前チェックを強化したところで何にもならないだろう。

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