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2004年10月31日 - 2004年11月6日の記事

2004年11月 4日 (木)

科学者の咆哮

「科学者は彷徨する存在である。」
 科学者は真理を求めて彷徨する。実験室や、フィールドや、オフィスにおいて。

 あまり、咆哮はしない。
 一頃、「叫ぶ詩人の会」というバンドがあったが、科学者は一般的には叫んだり、咆哮したりはしないものである。箪笥の角に足の小指をしたたか打ち付けた場合はどうかは別として。

 それは、科学者の表現の手段が、アーティストとは大きく異なっていることによる。アーティストは、様々な手段で”表現”する。歌い、躍り、楽器を演奏し、絵を描き、写真を撮り、彫刻を作成し、詩を作り、小説を書く。しかし、従来の科学者の表現のスタイルは、至って画一的で、概してつまらない。すなわち、まともな科学者の表現の手段は、論文を書いて発表するか、学会発表を行うか、本を書くくらいのものである。これは、おそらく、科学的な検証のシステム(ピア・レビュー、あるいは同僚評価)が、紙媒体を中心としてなりたっていることと、発表の場が出版業界の刊行する既存の商業誌に限られているためであると考えられる。

 近年、PLoS biologyというインターネット上のフリージャーナルが登場している。ピアレビューつきのジャーナルではあるが、版面権を出版社に譲渡することに反感を持つ研究者たちによって始められた。遺伝子操作によってマウスの持久力を飛躍的に高めることができたという論文"Regulation of Muscle Fiber Type and Running Endurance by PPARδ"も、このジャーナルに投稿されたものだ。この論文には、なんとマウスの持久力テストの様子が動画で収録されている。これは、紙媒体の雑誌では決して実現し得なかったことだろう。CD-ROMの付録つき雑誌という方法はあるが、クリック一発で見られるインターネットの手軽さには到底かなわない。PloS biologyはインターネットというメディアの可能性と柔軟性を追求し、その表現力を余すところなく発揮した好例であると言えるだろう。

 私も、論文で主成分分析の結果をカラーの3D散布図で表現したかったがコストの関係であきらめたことがある。もし、論文の3D散布図を読者がマウスでグリグリ回転させて色々な角度から自由に眺めることができたらどんなに楽しいだろう。しかも、論文の掲載に当たっては一切の追加料金なしで!
# ・・・そんなに楽しくもないか。

 私は、普段生物学系のジャーナルしか見ないので、他の研究分野では、論文の発表形態にこのような進化があるのかどうか知らない。しかし、どのような研究分野においてもインターネットを利用することで、発表形態の多様性が増すことは間違いないだろう。その一方で、それがDigital Divideの拡大につながらないことを願わずにはいられないが。

 このような科学論文の表現形態の多様化の一方で、紙媒体ならでは、というかインターネットが逆立ちしたくらいでは到底追いつかない、印刷物のメリットを最大限生かした表現方法もある。たとえば、理化学研究所の林崎良英プロジェクトディレクターと河合純チームリーダーによるDNA bookがそれである。DNAそのものを紙媒体に印刷して読者に届けるという試みである。物質を届けることはインターネットにはできないが、生物学系の研究者は時に情報よりも道具として物質(DNA)そのものを入手したい場合も多々あるので、これは非常に画期的である。もっとも、多種類のDNAをコンタミしないように一枚の紙に自動的に印刷するには、まだ工夫の余地がありそうではあるが。

 ところで、現在のところ科学者のおもな表現手段である論文は、投稿するとお金がかかる。研究者ならば誰でも承知していることだが、一般の方はご存じない向きも多いと思うので説明する。

 科学論文の掲載されている多くの商業誌は、雑誌そのものの売り上げと広告収入のほかに、論文の原著者からの掲載料で成り立っている。一般の週刊誌や文芸誌は、記事を書くとお金がもらえるのに、論文は”掲載していただく”ためにお金を払う。これはベテランのスター研究者であろうが、アマチュアに毛の生えた程度の研究者であろうが変わらない。ある意味、採算性という点では科学雑誌は同人誌並かそれ以下である。
 学会発表もまた、招待公演でもない限りは、大会参加費を払って発表する。大会参加費は発表をしなくても払わなくてはならない点は論文とは少々趣が違うが、講演会を維持して成果を発表する場を得るためにお金を払わなくてはならない点に変わりはない。

 つまり、科学者は表現者という点では、素人芸の域を出ていないのかもしれない。やりたいことしかやらない、興味の無い人は読まなくていい、どんな論文も積んでおけばそのうち何かの役には立つかもしれない、でも給料は下さい、という態度で研究して発表する職業的科学者(ただし道楽系研究者)ならば、それもまた無理からぬ話かもしれない。また、それとは逆に、マスコミに露出し大衆に迎合する疑似科学の本を書きまくり、少なからぬ収入を得ている、あるいは市民団体と癒着して特定団体にだけ都合の良い一面的な科学的知識を披露する似非科学者もいることはいる。日常的に、科学者と接触の無い一般の人々から見ると、この両者の違いは判りにくいかもしれない。

 しかし、両者の違いを簡単に見分ける方法がある。つまり、論文を書くのが職業的科学者、そうでないのが似非科学者である。

2004年11月 3日 (水)

アレルゲン・フリー・マウス・プロジェクト

 アメリカで飼い主に対するアレルゲンを持たない猫を遺伝子組換えで開発する民間のプロジェクトがあるという。
 この話を、動物実験をする研究者に話したところ、「あ、マウスでそれができたらいいなぁ!」という話になった。実験用マウスを扱う研究者にはマウス・アレルギーが多いのだそうだ。
 とはいえ、マウスのアレルゲンってアレルギー症状のある人によって違うんじゃないだろうか?症状のある人数人の血清を使って、マウス蛋白に対してウエスタンをやってみるとわかるかもしれませんが、どうなんだろう。

 ウエスタンで蛋白が特定できたら、2-Dで展開し、末端のペプチドの配列を決めて、ゲノムの領域を特定し、あとは定法に従ってKOマウスを作成。ここで、Cre-Loxシステムをうまく使うと、作成されたKOマウスは遺伝子組換え生物にはならないケースが、実はある。
 特定遺伝子をKOする際に導入する抗生物質耐性遺伝子の両側にLoxPを配置。Creを持つTgマウスと交配し、抗生物質耐性遺伝子の抜けた個体を選抜しSibbing crossで固定する。
 この手順だと、2つあるLoxPの一方が最後までゲノムに組み込まれるが、実は、LoxPと相同な配列がマウス・ゲノムにはもともとある。
 LoxPの”ataacttcgtatagcatacattatacgaagttat”をクエリーにしてマウス・ゲノムに対してBlastすると、AC131065.Mus musculus chromosome 18, clone RP23-21J21, complete sequence. にヒットする(一塩基違ってはいるが)。このシーケンスの決定に供試されたマウスがTgでないとすると、マウス本来のゲノムに、この配列があることになる。
 だれか確かめてくれないだろうか。かりに一塩基違っていたとしても、マウス・ゲノム由来の配列がCreのターゲットとして機能するのであれば、マウス・ゲノム由来の変異型LoxPをCreのターゲットとして導入するのも良いかもしれない。
 こうして作成された、組換え”のような”マウスは、もともと自身のゲノム内にある塩基配列を追加されただけなので、セルフクローニングに当たるため、遺伝子組換え生物にはならない。従って、特定飼育区画などの特別な拡散防止措置も必要ないので、普通の実験用マウス同様、その辺で飼える。

 ナショナルバイオリソース・プロジェクトに参加されている理研の皆様、ひとつ検討されてはいかがでしょうか。きっとヒットしますよ!

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