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2004年11月16日 (火)

LASIK

11/14,屈折異常の矯正手術を受けた。
# あぁ、あんた屈折してて異状だもんねー、そりゃ矯正されてよかったねー、というコメントは即時却下である。
要は外科手術で近視を治療することだ。術式はIntra-LASIK(LASER Assisted in-Situ Keratomileusis )という、今のところ最新式の術式で、角膜の切開にもレーザーを使用して非接触で行うため、感染症のリスク、塵埃などが術野に紛れ込むリスクが小さくでき、角膜の切断面の形状が正しい位置で癒合しやすいため視力の回復が安定しているという特徴がある・・・ようだ。そらから、眼科医はあまり言わないことだが、角膜切開という非常にデリケートな部分を機械で完全に自動化しているので、あまり器用でない先生の執刀でも個人差が出にくい、ということはあるかもしれない(ま、医者からそんなことを言われたら不安になりますわな、普通は)。
#詳しくはIntra-LASIKなどのキーワードでGoogleで調べてね。

私は、必ずしも流行り物好きというわけではないし、車やパソコンの趣味などは保守的ですらある(とはいえ、自家用車にはカーナビが付けているし、パソコンはデスクトップマシンは家庭内無線LANでADSL接続しているし、ノートPCはVodafoneの3Gカードでインターネット接続している)。40代手前で、記憶力に自信がなくなったのでPDAを持って歩いているし、通勤途中はMP3で音楽を聴いていることもある。
持ち物の趣味からいえば、「最先端のちょっと後ろ」のポジションが好きだ。仕事は今のところ国家公務員でライフサイエンスの最先端に関わる仕事をしている。が、2年後には何をやっているかはわからない。多分、あまりに保守的な仕事にはもう戻れないだろう。

それはともかく、私が近視矯正の外科手術に興味を持ったのは、18年ほど前になる。私の実家が北海道の稚内にあって、当時、旧ソ連と日本の友好を深めるための団体「日ソ友好協会」の支部が稚内市にもあった。そのPR誌である「今日のソ連邦」に、ソ連の最新科学技術として、RK(Radial Keratomileusis)の紹介が載っていた(インターネットでも検索できた)。当時、ソ連でRKの執刀を行っていたフィヨドロフ教授が来日した際にニュースになったものだ。当時のそれは、ダイアモンド・メスで角膜に放射状の切れ目を入れて厚みを調節するもので、技術的にも難しく、最終的な視力の予測が困難で、あまり普及しなかった。その後、角膜表面を削る術式は、PRK、スーパーPRKとして進化している。LASIKという術式は、それとはルーツが違う気がする。試しに、LASIKをキーワードにPubMedで調べてみると、この10年で1906件のエントリーがある。患者にとって良い話ばかりではないのは勿論であるが、それはさておき、研究途上で新しい知見が集積されつつある技術である一方で、もはやポピュラーな技術の一つであるとも考えられる。PubMedは古い文献の検索には向かないので、文献の孫引きをしないと、オリジンにはたどり着けそうにないが、試しににやってみると無料で見られるReviewはない。仕方ないので、Googleで"LASIK+歴史"で検索すると、錦糸眼科のホームページに簡単な歴史が載っていた。やはりRKとは起源が異なるようだが、最初の技術(Keratomileusis)から起算すると40年ほどの歴史があるようだ。

LASIKに限らず近視矯正手術につき物なのは、長時間経過した後の予後の問題である。数十年後に視力が減退しないかとか、障害が出ないかとか、失明するんじゃないか、という疑問には科学的には誰も答え得ない。ただ時間だけが解決する。視力の回復程度や患者(?)の治療に対する満足度についても、統計はあるので一般的な傾向はわかる。それらは、治療した人の93%が満足している、とか90%以上が1.0以上の視力を回復している、という。しかし、これらのベネフィットに対して負うリスクを個人がどうう受け取るかは別の問題である。

多くの日本人は、ゼロ・リスクを判断の基準にする。つまり、メガネをかけ続けている限り、視力は安定しているし何のリスクも無い。その代わり、ベネフィットも得られない。近視矯正手術には、さまざまなリスクがある。現実のリスクとしては視力が回復しないか回復しても予想の水準以下の場合がある。あるいは、予測されるリスクとしては数十年後の何らかの未知の障害が出る場合。近視矯正手術を受ける人は、個人の問題としてこれらに対処しなくてはならない。

私の場合、強度近視で乱視が入っている。メガネのプラスチック・レンズ寿命は3年程度(ガラスは重いので論外)。あと、30年(10回)メガネを新調し続けるとして、そのうち3回は近視+乱視用、7回は乱視入りの遠近両用レンズであるとすると、通常のレンズ両眼で3万、遠近両用乱視入り、で4万として、35万円(3x3+7x4)である。その間フレームは4回買い換えるとして4万くらい。計40万円くらいはかかる公算である。ゼロ・リスクでもこのくらいの出費はある。
一方、LASIKで近視と乱視の矯正がほぼできて、数年は老眼鏡が要らない場合、老眼鏡のコストは中近距離用レンズは3万円で7回買うと21万円、フレームは3回買い換えて3万円とすると、24万円の出費となる。差額は16万円。

私の場合、LASIKの手術のコストは27万円とすると、純粋な出費は27-16=11万円。それに視力が回復しない場合と、予後がよくないリスクが純粋なコストである。予後については、現役の研究者として視力を維持しなくてはいけない期間はおそらく10年足らずだろうから、20年後に視力が低下していてもさして苦にはならないだろう。しかも、私はこの30年間ずーとメガネをかけて暮らしてきたので、メガネが手放せなくなったとしてもそれが特段のリスクにはならない。いずれ老眼にはなるだろうからその分も特段のリスクではない。むしろ老眼鏡が安く上がるならば歓迎である。

そう考えると、私にとって近視矯正手術は長らく非常に現実的な選択であった。ただ、地方に住んでいるとなかなか治療が受けられないし、通院も大変である。もう10年早く治療できたならと思うこともある。今回、手術に踏み切ったのは通院可能なところに、LASIKを行える眼科があったのも大きな理由である。この15年地域を転々としてきた私には、それは難しい選択であった。

LASIKは自由診療なので、今後価格競争が進むと20万円以下になるかもしれないが、安いだけの病院を選ぶのはそれなりの危険を伴うことだろう。コストの問題については、アメリカのLASIK関連のサイトを見ると良いだろう。平均で$1,710/一眼?($1=\106ならば\181,260)なので、両眼なら36万円くらい。しかも、IntraLASERを使用すると片眼あたり$250-$500(\26,500-\53,000)のコストアップなので、今や日本のLASIKは決してそれほど高価ではない。

さて私自身の視力回復までの過程を書こう。まだ、術後2日目で回復途上ではあるが、これがなかなかよく見える。
11/14(日) 本当は手術翌日の検診があるので、土曜日が理想的だったのだが、次善の策で日曜日の午後4時に手術を予約した。午後3時から手術前の再検眼、午後4時から手術、その後1時間ほど静養して再度検診と視力検査というコースである。
手術そのものは、Intra-LASERによる角膜切開の際に、ガラス板を強く押し付けるのが辛かった(強く眼球を圧迫すると一時的に視力がなくなりますが、それを片目で55秒間続けます)。切開に必要な時間は切開する角膜部分の直径にほぼ比例するのですが、私はかなり大目玉なので少々時間がかかったようだ。その後は、向かいの手術室に移動して(自分で歩きます)、 LASER照射装置の下に横たわって角膜のフラップを持ち上げられ、片目22秒ほどLASER照射を受けた(正確ではないかも知れませんが、助手の方がカウントダウンしていたのでわかりました)。開瞼器なる器具で瞼を固定されるので、瞬きする心配はなかった。LASERを照射している間は、ちょっとばかり髪の毛を焼くようなにおいがした(角質を気化させてるのだから当たり前ですが)。
#角膜って、システインが多かったのかl などと思いました。
その後よく洗浄して、フラップを器具でぺたぺた押して元の場所に戻しておしまい。あとは休養室で30分ほど休養して、再度検診。瞼の開閉がなんだか渋いなと思ったら、角膜が乾燥気味だったとか。私の場合、大目玉なので乾燥しやすいとのことで、保護用のコンタクトレンズを入れた。それから、再度視力検査をして、もう一度検診。視力検査では、裸眼視力1.0で手術当日としては、よく見えている方だとのこと。ただ、本人としては、視野に薄く白いもやがかかったようで、点状の光源の回りにはハローが見えるし、コントラストは低いしで、それほどの視力が出ているという実感はなかった。飲み薬、点眼薬、眼帯、保護用眼鏡一式を受け取って帰宅の途についた。
帰りは、外はすっかり暗くなっていた。地下鉄-バスを乗り継いで一路つくば市へ(つくば在住なもので)。バスの車窓から見た街灯はハローをまとっており、話には聞いていたがこれが続くと夜間の車の運転はあきらめた方がよさそうだと思ったものだ。クリニックからの帰途ずっとそうだったのだが、激しいドライアイで車内では40分おきくらいに抗菌剤入りの点眼薬を使っていた。1時間おきに点眼のことという指示だったが、目の乾きには代えられない。
つくば市に着いて帰宅途上の路上でも、街灯のハローがまぶしい一方で暗がりは見えず、車のヘッドライトのハローでウインカーは見えず、少々危なかしい感じをうけながら帰ってきた。帰宅時間は8時過ぎ。妻が夕飯をこしらえていてくれたのは助かった。
あとは、内服薬を飲んで、点眼薬を点して、顔をウエットティッシュで拭いて、眼帯をして就寝。翌朝が楽しみ。

11/15(月) 手術後1日目。朝起きるなり、ものがはっきり見える。視力1.2位の感じ。めがね着用で視力1.5あったので、それには及ばないものの、そこそこよく見える。コントラストも前日よりは改善している。とはいえ、ドライアイは結構強烈で、朝、クリニックに向かう途上でも1時間に一回くらいは保湿用の点眼薬を点していた。クリニックに到着して待つことしばし。検診、コンタクトレンズをはずしてもらって検眼したら視力は1.2。先生曰く「もっとよく見えるようになりますよ」とのこと。前日の像のにじみはコンタクトレンズの効果によるものもあったのかもしれない。
午後から、出勤。通常業務に当たる。手元の近調節がまだ上手くいかず、近くがみづらい。パソコンを使うのは結構大変。8時過ぎに勤務終了。10時過ぎに帰宅。その間結構ドライアイに苦しむ。前日よりはましだが、やはり1時間に1回の点眼は必須。

11/16(火) 手術後2日目。前日よりもさらにはっきり見える。コントラストはほぼメガネ着用と変わらない。しかし、ものの色合いがメガネのときよりも鮮やかに見える。私のメガネのレンズは色の再現性があまり良くなかった模様だ。しかし、少々色収差が出ている感じもする。ものの輪郭のエッジの部分に若干色の滲みがある。そのうち収まるか、慣れるかどっちかだろう。今のところ屈折矯正手術の課題は”視力”であって、この種の”見え味”のような光学特性の違いはおそらく今後の課題なのだろう。色収差はランドルト環では測定できないしね。視力そのものはおそらく1.5くらいまで回復しているような感触だ。今日は手元にも難なくピントが合うので、近調節にも慣れてきた感じだ。ドライアイもほぼ解消したものの、大事をとって点眼は各種類をローテーションして二時間に一回程度行った(複数種を点眼するときは5分以上間隔をあけるように書いてあったが、3種類あると点眼に10分かかるので、ローテーションするほうが簡単)。
7時過ぎに勤務終了。夕食をとって、帰宅は9時過ぎ。帰宅時に、遠くの信号を見ていたら、本来一つの光点が4つに見えた。若干乱視が残っているか、新たに加わった可能性がある。ハローについては、日々減少している。今日のところは、夜道では少々汚れたメガネをかけているときと変わらない程度のハローで、おそらく夜間の車の運転には差し支えないだろう。

あすは、どのくらい良くみえるだろうか?こんな楽しみはかつて無かった!

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